道はどこまでも続いている

【詩】

 

時を操れる人が豊かな人生を歩む

その能力のヒエラルキーの最下層で彼女は

時に追われたりもて余して日々を過ごす

糧を得るための労働やそれに伴うストレス

ときには地下鉄のホームに立ち無機質な2本の軌道を見つめる

雨の多い夏が心の行方をまどわし

ようやく晴れ渡った秋にとまどっている

すり減った魂をそれでも大切に胸に抱え

空を見あげて可能な限り大きく息をする

昨夜の映画に心ゆさぶられ

ああやはり物語を欲している自分に気づく

北の都で過ごす日々を思い

西の都で過ごす日々を思う

自らに課した日常にとらわれて

右手をあげるにも困難だったと思いが至る

もっと自由であってもいいんじゃないかと歌う人の

不自由さを飛び越えるような

何ものにも縛られない本来の魂の希求

それが救いの道なのか崩壊の道なのか

それは行動してみなければわからない

「わからないならば動いてみればいい」

もうひとりの彼女がふいに言葉を発する

そうなんだ、動いてみればいい

簡単なことだと頑なな心に言い聞かせ

彼女は一歩、左足を踏み出してみる

道はどこまでも続いている

 

tamito

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