泉の向こう側
【詩】
その静けさは深い森の奥の泉ににている
そう誰かの死に触れるたび静けさは増す
底まで見透せるほどに澄んだ無色の水が
波打たずまるで絵画のよう静止している
そんな静けさに死が額となりふち取って
そう死の完成度はみな等しく一様に高い
そんな光景に心はかろうじて焦点を定め
すべてを味わい尽くすかのよう連写する
死について知りたければ死人を見ること
本のなかには死のほんとうなんてないと
昔好きだった詩人がいう泉の向こう側で
生きながらにしていかにその深淵覗くか
結局そんなことはなんの役にも立たずに
それでもいつかは迎える死の影に怯えず
完成に近づく心持ちで日々過ごせるよう
そう泉の向こう側、目を細め眺めている
tamito
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