さまざまな秋がゆるやかにこの街をゆく

【詩】


さわやかな秋の空気に混じる

ひやりとした胸をすく感覚

それに名がないから僕らは

いつまでも釈然とせず抱える気持ち

空が高ければ高いほどに

心のなか深く積もらせてゆく

かわり映えのない街並みが

それでも少しずつ色を変え

立ち止まり何かを見あげている僕らに

変わりなさいと声をかける

見あげていても見あげていなくても

陽は昇り陽は沈み今日は昨日になる

せめても季節のない街に生まれたなら

君らももっと君ららしくいられただろうに

さまざまな秋がゆるやかにこの街をゆく


tamito

作品一覧

#詩

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?