瓦屋根

【詩】

 

雨に木の匂いが混ざっている

どこかに材木屋でもあっただろうかと

傘をあげて左右を見る

切りたての木の匂いは独特だから

何かほかのものと間違うことはない

材木屋でなければ建てかけの家屋だろうか

あった

いまどき珍しい朱色の瓦をのせた一軒家だ

むきだしの柱が屋根の重みを支えている

そう言えば僕の生まれた家も朱色の瓦屋根だった

若き父が建てかけの家のまわりを点検するように

歩く姿が ふと浮かぶ

霧のように細かな雨につつまれて

 

tamito

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