時速270キロで過ぎ去るいまの連続のなかで
【詩】
九月の冷たい雨が窓ガラスをつたい
数万の家並みがコンマ1秒で飛んでゆく
かつての場所がいま新たな場所として
僕を迎える可能性について考えている
50パーセントの定義はとても複雑で
例えわずか1パーセントでもそれを
超えることはほんとうにできるのだろうか
時速270キロで過ぎ去るいまの連続のなかで
僕の愚かな左脳が確信を持てずにいる
どんな言葉にさえしがみついてしまいそうで
流れ去る言葉の洪水、窓のそと手を伸ばす
握りしめた言葉を引き寄せそっと開くと
その意味に少しだけ安堵し、そして諦めを覚える
僕の右脳は掠れた風景を眺めている
あらゆる街のあらゆる時代に息づいた
あらゆる人との同化を試みている
それが僕だよ、と五歳の僕が言う
隣では十七歳の僕が手のなかの言葉をまだ見つめている
水辺の街、浜名湖が気づけば車窓を流れる
tamito
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