うとうとと
【詩】
仕事帰り
各駅停車でうとうとと
気づけば窓の外は白く吹雪いて
帰りたい場所へと列車は近づく
そこにはmailもexcelもなくて
こたつに冷えた足つっこんで
みかんでも食べながら古びたテレビジョン
二階からバタバタと誰か駆け降りて
にぎやかなひととき
ゆるやかに刻む柱時計の秒針
少し熱があるようだと生姜湯飲んで
心までほどけて力が抜けて
明日は海に行こうよと
幼い顔した友達が電話をよこす
おまえのヘタな運転でドライブなど
行きたかないよとうれしげに
懐かしい部屋の匂い
しんと静まる真夜中すぎに
春はもうすぐやってくると
近所の猫が恋を語る
もう会えない人ひさしぶりに会う人
やけに年老いた鏡のなか
みんな一緒だよみんな一緒だと
各駅停車でうとうとと
tamito
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