「宗教の起源」ロビン・ダンバー :共同体の危機から宗教へ
「宗教の起源」の著者ロビン・ダンバー氏は、霊長類学者から進化心理学者となった経歴を持つ。
著作は進化論の視点から考古学に心理学、神経科学までを動員した宗教の歴史だ。
宗教の起源の話であるが、今から1万2000年前から始まる人類の歴史が興味深い。
村のくらしは始まった
「先史時代の祖先たちの暮らしは牧歌的で、たまの狩猟で気ばらしをしていたーそんな風に想像しがちだが、それは真実からほど遠い」という。
実際は、世界中で部族間の紛争が起き、皆殺しにされたり奴隷にされたりしていた痕跡が、いくつも発見されている。
そして、分散型の狩猟採集生活から、農業を主体とした集落生活に移行していったが、その急速な変化の理由は、侵略者から防衛だったという。
つまり襲撃から身を守ることはずっと昔からきわめて切実な問題であり、集落での生活が最大の防衛だったのだ。
共同体の危機
ただ問題もあって、集団生活をするとストレスがたまり、共同体内部でのいさかいが原因で、数百人規模の村で暮らす農耕民は、狩猟採集民よりはるかに高い殺人発生率になったという。
小さな共同体では、争いに介入して解決する警察力が存在しないため、衝突が起きるとおさまりがつかなくなる。
そうなると意見は急速に二極化し、どちらが正しくてどちらがまちがっているかの話ではなくなり、個人や家族の忠誠心の問題となる。
自分と血縁が近い側、もしくは近親者が支持している側の味方にまたたく間につく。
けんかが過熱して負傷や死亡の危険が出てくると、村人たちもどちらかの側につかざるを得ず、共同体のまとまりは失われるのは避けられない。
血縁関係などが中心の規模の小さな共同体では問題は起きないが、他の人々が共同体に加わってくると、共同体を束ねる規範がないと争いが起きると収拾がつかなくなる。
ここに、祭りや婚礼などを共同で行い、さらに規範として儀式とか宗教が出てくる。
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