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貧しいけど貧しくなかった、あの頃に戻りたい

私の育ってきた家庭は『普通の家庭よりは確実に貧しいけどネタにできるほどのエピソードもないしイジりづらい微妙なレベルの貧乏』だった。

ほしいものが全く買えなかったわけではなかった(そこは両親に感謝しかない)けれど、基本的に『おこづかい』と呼ばれるものはたしか一度ももらったことがない。

"普通"の家庭の皆さんは毎月お金をもらってそれをやりくりするらしいけど、私は新年会や誕生日などで親族から貰ったお年玉やお小遣いだけで一年頑張っていた。
母方の祖父の一族は兄弟が多くみんな比較的裕福だったし、しかも孫世代の一番乗りが私だったもんだから、それはそれはたくさんポチ袋をもらったもので……それがなかったら、本当にネタにしないとやってられない貧乏な学生だっただろう。

高校を卒業するまで、バイトは冬休みの年賀状仕分けしかしたことがなかった。それだって本当に微々たる稼ぎで。つまりそれまでずっと、自由に使えるお金なんてほぼなかったのだ。

しかもそこに親の過保護や、当時の私の心配性・人見知り・知らないところに行くことへの過剰なストレスなども相まって、お笑いライブなんてものは本当に遠い存在だったし独りで行くなんてあり得なかった。

今となっては考えられない。心配性と親の過保護は変わらないけど、今では知らない人も場所もどんどんクリアしている。単純におばさんになったから厚かましくなっただけなんだろうけど。

学生だったころ、私が好きな芸人(当時はアメザリさんにどハマリしていた)を楽しむために出来たことといえば、テレビを見ること、そしてネットでのコンテンツを見ることくらいだった。
(DVDを買ったりできたのは大学生くらいからだった。)

今思えば平井さんがネットを積極的に使う人で本当にありがたかった。そのおかげで、まだYouTubeやニコニコ動画なんかも無かったり未発達だった時代でも、PCやケータイで色々な動画や文章を楽しめたのだから。

それからネットでファンが書いたライブレポも読み漁った。羨ましいなあと思いながら、文字の情報だけでその光景を一生懸命思い浮かべていた。
いまライブレポや画像を残そうと頑張っているのは、そういった経験からきている。あのときのファンの皆さんには感謝しかない。先輩に受けた恩は後輩に返せとよく聞くし、私も誰かの役に立てたらといつも思っている。

お金も行動力もなかった頃、私を満たしてくれていたのはテレビやネット、そして先輩たちのくれた"想像上のお笑いライブ"だった。

あのときの私はそれで充分だった。
あとはゲームして、学校の友達と内容のないくだらない話をして、それだけで幸せな毎日だった。
失恋したり部活で失敗したり、当時は当時で悩み事も無かったわけではなかったけど、今思えば十分幸せだったと思える。

大学になったあたりからバイトでようやく自分のお金が使えるようになったので、無限大ホールやら松竹角座やら、そのときハマっている人のライブに毎月一度は行くようになった。

一度暗黒期(?)に入ったものの、ワタナベ沼にハマり出してからは更に勢いを増していた。
ライブ中心に活動している人を推しはじめてから、もう月に一度どころか週1とか、去年の下半期からなんて週3なんてのも当たり前のようになってきていた。

そして今年の春。

『3月から4月めちゃくちゃ行きたいライブあるじゃん!!どれ行くか迷うな〜!!』

なんてウキウキしながら思ってた矢先に、この今の騒動で。

日が経てば経つほど状況は深刻になってきて、今やもう、あと何ヵ月ライブができないのか見通しが立たない。夏までにおさまるのかもわからない。

つらい。本当に辛い。

最初は『推しの健康のためにも仕方ないし、命が一番大切だもんな』とオトナとして言えていたけど。
あとどれくらい今の生活が続くのか、いや更にもっと窮屈な生活が続くのかわからない。
そんな"お先真っ暗"なこの状況を見てオトナぶっていられなくなってきてしまっている。

だましだまし堪えていたのがブツッとなって気持ちがズンと落ちてしまった。
もうダメだ、て。

例えが悪いのは承知の上で言うと、お笑いライブは薬物のようなもので、一度味わうとあの高揚感や幸福感を忘れられなくなる。
しばらく行かないとモヤモヤしてくるし、友達との約束よりデートの誘いよりもライブを優先してしまうこともあった。もう依存症なんだと思う。

犯罪に繋がらないしお手頃な値段でキメれるし誰からも咎められないから、お笑いライブってのはたちが悪い。(※褒めてる)

依存症の"治療"のため、最近になって思い出そうとしているのは、お笑いライブに行ってなくても毎日を過ごせていた頃の自分のこと。

あのときの私の感覚に戻れたなら。

お金も行動力も、少ないけどあの時よりはある。
でもそれらをいったん忘れて、"あるものだけで幸せに過ごせる"マインドを、どうやったらもう一度取り戻せるのか。ずっと考えている。

貧しかったけど、貧しくなかったころの私。

今は推しが毎日のようにSNSで情報を発信しているし、動画もたくさんあげてくれる。なんならこちらの発言に反応してくれる。
それだけでも充分ありがたい話だ。

地方に住む人は月に一度ライブに行くことすら難しい。だからテレビやネットの世界がすべて。
それに比べて関東に住む私は。

私はぜいたくになり過ぎていたんだな。

あのときのマインドを思い出して、ひとつひとつのコンテンツを丁寧に噛み締めて楽しむ。
今できることはそれくらいしか思いつかない。

ほんとどうしようもないくらい、今は絶望から離れられないのだけど。
なんのための芸人という存在なのだ。笑わせる人のことで悲しむなんて本末転倒じゃないか
という話だものね。がんばろう。

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