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雨の代わりに
僕は癖毛だ。
一見ストレートっぽいマッシュだが、それは見掛け倒しだ。
外側の毛はストレートに近いのだが、なぜか内側の毛がかなり癖毛でチリチリなのだ。
何の自慢でもないけれど、髪の毛のプロである美容師さんに「こんな生え方ってあるんですね…」と言われたこともあるほどだ。
ちなみにその時の僕は「ははは…あるみたいですねー」と棒読みで言うしかなかった。情けない…
そんな僕の毛は、この時期は特に大変だ。
どうやら僕の癖毛達は湿気が大好きで、湿気が多くなると嬉しそうに暴れ出す。
マッシュのシルエットも、よーく見れば輪郭がボヤけてしまうほどボワボワだ。
本当に困ったものだ。
湿気で癖毛が暴れ出すのも困るけど、やっぱり雨そのものが困ってしまう。
雨が降る日は、傘をさしても絶対にどこかが濡れる。
傘ほど進化しない道具って、他にないのではないかとすら思ってしまう。
インターネットやスマホ、VR、色々なものが目まぐるしく進化する現代でも、傘は持ち主一人を雨から完全には守ることができない。
もしかしたらこの先もずっと進化しないかもしれない。
なんてグータラなやつだ。
いっそのこと、傘の進化は諦めて、雨の方を変えてしまおう。
雨が降るから濡れるし傘に頼らないといけないのだ。
例えば、「雨」ではなく「飴」を降らそう。
これなら、濡れないから傘の必要もないし、湿気に悩まされることもない。
よし、明日からは「飴」を降らしてもらおう。
でも、本当に「飴」が降ったら、レモン味が食べたいのにハッカ味しか降ってこなくて泣いてしまう子がいたり、虫歯患者が増えて歯医者がパンクしてしまうかもしれない…
そもそも硬いから、降ってきて当たると相当痛い。
どうやら「飴」を降らすのは危ないようだ。
じゃあ、「飴」の代わりに柔らかい「マシュマロ」を降らすのはどうだろうか。
あれだと柔らかいから、降ってきても「飴」と違って痛くない。
これは名案だ。
でも、本当に「マシュマロ」が降ったら、ピンク色が食べたいのに、白色しか降ってこなくて泣いてしまう子がいたり、焼きマシュマロをするためにみんなが火を使い出して、至る所で火事が起きるかもしれない…
そもそも甘いから、やっぱりこれも虫歯になって、歯医者がパンクしてしまう。
どうやら「マシュマロ」を降らすのも危ないようだ。
となると「雨」って案外良いかもしれない。
色違い味違いで悲しい気持ちにならないし、当たっても痛くない。焼かないから火事にはならないし、甘くないから虫歯にもならない。
濡れたって乾かせば良いだけだ、暴れる癖毛は坊主にすれば解決だ。
雨の代わりを探したけれど、雨も案外、良いかもしれない。
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