PWA(Progressive Web Apps)がOculus Storeに配信できるようになる件をレポート
こんにちは。TAMの角谷(Twitter@hitoshisum)です。
10月29日のConnect 2021で、Oculus Store(今後呼び名どうなるのかな)にPWAが配信できるようになるという発表がありました。
その発表のこと以上の情報はとくにないのですが、この記事では「Oculus StoreにPWAが配信できるようになるとどういいのか」「申請の方法」などをまとめてみましたのでぜひご一読ください。
※Oculusは今後ブランドとしてMetaに変わっていくそうですが、この記事ではややこしいので「Oculus」として書きます。
↓元情報
https://developer.oculus.com/pwa/
Oculus Quest 2はVRヘッドセットの革命児
Oculus Quest 2は2020年10月に発売され、2021年第1四半期で累計460万台販売されたそうです。そして、この11月には1000万台に乗ったか?という噂もでています。(ちなみに日本での販売台数は調べてもわかりませんでした。)
VRのヘッドセットの中では発売してすぐに圧倒的シェアをとった形になりました。
(出展:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000106.000033140.html)
過去に発売されたほかのヘッドセットに比べてOculus Quest 2は37,180円(税別)と圧倒的に安い価格でありながらも、比較的高解像度の部類に入り、さらにPCを必要としないスタンドアロン型で手軽にゲームやアプリを楽しめるようになっています。コンシューマー向けの入門機としては現状はOculus Quest 2一択の状態で、この価格帯で戦えるレベルのヘッドセットは2022年も出てきそうな雰囲気ではなさそうです。
アクセンチュアでは、Oculus Quest 2と思わしきVRヘッドセットを6万台導入したことでも話題になっていました。
※余談ですが、参考までにPwCの調査レポート(2019年)も紹介します。
2030年までにVRとARが経済にもたらす付加価値や産業に与えるメリットをまとめた調査レポート「Seeing is believing[English]」によると、VRとARは世界のGDPを1兆5,000億ドル押し上げる可能性があるそうです。
前置きが長くなりましたが、そんなOculus Quest 2のアプリを配信しているストアが「Oculus Store」です。圧倒的シェアをもっているデバイス上で、PWAが展開できるようになる、というのはなかなか面白いと思います。
ちなみにOculus Storeは、PC、SP、ヘッドセットのそれぞれからアクセスでき、そこで選んでアプリをヘッドセットに入れられるようになっています。
Oculus Storeのアプリ数
Oculus Storeには公式の審査をうけたアプリが、2021年7月時点で300弱ほどあります。Oculus Storeの審査はとてもきびしく「これまでよりも厳格で、我々としても過去に類を見ないレベルの品質管理」(参考記事)がなされているようです。※2019年の記事を参照したので現状異なっていたらすみません。
そこでApp Labという、比較すると簡易な審査でアプリを配信する方法が2021年2月に導入されました。このApp Labを経由したアプリは8月時点で500を超えていたようです。
2021年2月時点で、1億円以上売り上げたアプリが60本以上あるそうです。(参考記事)
(出典:https://www.roadtovr.com/oculus-quest-app-lab-100-apps-best-rated-most-popular/)
PWAの場合も、公式の審査、またはAppLabを通じた申請をする形となるようです。
10月29日のConnect 2021とあわせて掲載された公式のブログ記事ではOculus StoreでPWAを配信する件について、以下のように書かれていました。(Chromeの翻訳機能で翻訳)
ユーザーが期待するのと同じ高レベルの品質を確保するために、ネイティブアプリと同じ方法でQuestストアのPWAを引き続きキュレートします。今後数か月以内に、すべての開発者がAppLabを介してPWAを配布できるようになることをお知らせします。PWAをいつどのようにAppLabに送信できるかについては、間もなく詳しく説明します。
のちほどAppLabの申請方法をご紹介したいと思います。
ちなみに、この記事を書いている2021年12月7日時点では、Oculus StoreでダウンロードできるPWAのステータスは以下のとおりです。
- すでに使える:Facebook, Instagram, Smartsheet, Spike
- もうすぐ:Dropbox, Monday.com, MURAL, My5(UK), Pluto TV, Slack
Oculus上のPWAにできること
(イメージ出典:https://developer.oculus.com/pwa/)
Meta社としてはこのような形で、3D空間の中に2Dアプリを並べて使うような使用イメージをしているようです。Tech Crunchの記事を見ていると、Oculus StoreがPWAを配信できるようにしたのは、どうやら様々なサービスがOculus Storeでアプリを配信できるにするのが狙いのようです。
Oculus Storeでは、ひと握りのアプリメーカーがVRのネイティブサポートを行っているが、専用のバーチャルリアリティアプリの維持はさまざまな面において複雑で、NetflixやHuluといった企業のアプリが更新されることは非常に稀なことだ。今後、PWAに頼ることで、開発者の負担が大幅に軽減され、Oculusがこれまでアプリメーカーに提供してきたよりも広く採用されることが期待される。
Connect 2021では、このようにHMDをみにつけて、2Dアプリで仕事をする世界感を描いているようなので、そこにPWAがマッチしたのかと思われます。(動画はこちら)
PWAで実装できる機能として以下が紹介されていました。
・Oculus Storeで配信できる
・インストール通知 ※coming soon
・Oculusのホーム画面にあるアプリ一覧にならぶ
・マルチタスキングで使える
・プッシュ通知 ※coming soon
・その他できること
- full screen対応→360度映像にすぐアクセス
- microphone, webRTCにも対応
インストール通知や、プッシュ通知については「coming soon」というステータスでした。
Oculus Quest 2でリアルと同じくらい仕事はできそうか?
実際自分でもFacebookとInstagramのPWAをインストールしてみました。
こんな感じです。
では、Meta社が考える、2Dアプリで仕事する世界感がいまどれぐらい達成できているかというと、僕の中では「もう少しだ!がんばれ!」という感じです。僕に言われる筋合いないですが・・・。
▼現時点の感想
・操作が基本コントローラーなのは仕事では使いづらい
・対応している物理キーボード・マウスは仮想空間に持ち込める(Logitech K830)が、自分はもってない
・Horizon Workspaceのほうは一部のMacbookは持ち込めるが、自分はWindowsだ
・自分の指で操作するハンドトラッキング機能はスマホレベルには達してない(が、仮想空間の物体を指で操作するのは感覚的に結構面白いです。映画みたい)
・マルチタスキング、3画面の制約は以外と大きい気がする
・HMDつけて仕事するには、まだデバイスが重いしちょっとしんどい
ということで、現時点では先行者メリットをどう考えるかという感じかと思います。
Oculus StoreへのPWA配信方法
先ほども書いたとおり、Oculus StoreへのPWA配信方法は、いまのところ以下の2つになるようです。
1. 公式の審査申請
2. App Labで申請
1.公式の審査プロセス
・テクニカルレビュー(VRCガイドラインに準拠しているかチェック)
・コンテンツレビュー(アプリの作り込み、洗練度、有用性、娯楽性)
・パブリッシングレビュー(日程、価格などリリースに関する詳細)
などのレビューを通していく必要があるようです。価格に関する助言まで入るということなのでOculus Storeのアプリ選定の思い入れの強さが感じられますね。公式の審査に関しては僕もほとんどわからないので、以下参考になりそうな記事をピックアップしました。
参考)https://developer.oculus.com/blog/app-submission-review-process-guide/?locale=ja_JP
2.AppLabの申請プロセス
審査自体はありますが、こちらは簡単に申請ができます。
・開発者登録 https://developer.oculus.com/
・apkファイル用意
・Oculus for Developerサイトからapkファイルや画像、その他情報登録
・申請ボタンで送信
AppLabで申請したアプリはOculus Questのストア一覧には乗りませんが、タイトルを入力することで検索ができるので、手軽に配信したい場合にはAppLabで申請するという形になりそうです。
申請も手続き自体は特に難しいことはなく、何時間かあればできるレベルでした。ただし審査期間は長く、7週間かかった話もあるようです。僕が個人で11/10に申請したアプリも12/17現在、音沙汰はありません。ガイドラインに従っていないとリジェクトされることもあるようなので注意が必要です。(一方でUnityでCubeをおいただけのアプリが審査通過することもあるようです。ガイドラインさえクリアしていれば内容は問われないという話もあります)
AppLabでPWAをストア申請する方法
かなり長い記事になってしまいましたが、最後にAppLabのアプリ申請方法を書いて終わろうと思います。
1. 開発者登録
2. manifestファイルをつくる
3. ovr-platform-util.exeファイルダウンロード
4. apkファイルをつくる(ovr-platform-util create-pwa)
5. Oculus Developer Hub/Chrome DevToolsで検証
6. Oculus for Developerにアップ(ovr-platform-util upload-quest-build )
7. Oculus for Developer管理画面から各種登録
1.開発者登録
Oculus for Developerのサイトにて、開発者登録をします。
https://developer.oculus.com/?locale=ja_JP
2.manifestファイルをつくる
PWAを作られたことがある方にとってはおなじみのものですね。動画で紹介されていたものは、独自の設定などもあるようでしたが、基本はウェブのPWAと同じような形でした。
3.ovr-platform-util.exeファイルダウンロード
こちらでダウンロードできます。
https://developer.oculus.com/resources/publish-reference-platform-command-line-utility/
4.apkファイルをつくる(ovr-platform-util create-pwa)
コマンドプロンプトで、ovr-platform-util.exeを実行することでapkファイルを作ることができるようです。
5.Oculus Developer Hubを使ってQuest2に読み込み、Chrome DevToolsで検証
作成したapkファイルをOculus Developer HubをつかってOculus Quest 2に読み込み、DevToolsをつかって検証ができるようです。
Oculus Developer Hubの使い方はこちらがわかりやすいです。
6.Oculus for Developerにアップ(ovr-platform-util upload-quest-build )
検証が終わったらapkファイルをOculus for Developerにコマンドプロンプトをつかってアップします。先ほどのovr-platform-util.exeをつかいます。詳細はこちらの記事にあります。
https://framesynthesis.jp/tech/unity/oculusquest/
7.Oculus for Developer管理画面から各種登録
Oculus for Developerにログインするとアプリマネージャが開きます。
ここから各種アプリの情報を入力し、AppLabの申請を行います。
画像の用意等もそこそこ多いです。
・ビルドファイルの選択(6でアップしたもの)
・紹介文
・スペック(ゲームモードの選択)
・追加情報(プライバシーポリシーへのURLなども必要になります)
・ロゴ、アイコン、アイキャッチ画像等のアセット登録
・IARC証明書取得(リンクから進めば5分程度で作成できます)
・価格設定
ここまでできたら、送信して待ちます。
以下は、PWAではないですが、僕が個人で作成したOculus用アプリを申請したときの画面です。
まとめ
・Oculus StoreでPWAが配信できるようになるのは夢があっていい。
・App LabでPWA配信できるようになるのは「数カ月以内に」らしいので、続報がでたら、またこちらでレポート出来たらいいなと思っています。
・PWAをApp LabでOculus Storeに載せるのは難しくなさそう。
・ただし、審査期間は長そう&落ちることもありそうなので、そこが注意。