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XR Kaigi 2022で登壇しました。『学術交流分野での「創域的」メタバース活用事例と今後の可能性』

こんにちは。TAMの角谷です。
こちらはTAMTO METAVERSE LABの記事です!

先日12/14~16に開催されたXR Kaigi 2022で、東京理科大学 滝本教授、VRC理系集会 Kurolyさんと一緒にオンライン登壇をしました。簡単に内容をご紹介していきたいと思います。

XR Kaigiとは

XR Kaigiは、VR/AR/メタバースがテーマの国内最大級カンファレンスとのことです。オンラインではセッションが見れたり、オフラインでは様々な展示ブースで体験ができたりします。

今年もXR業界の有名人が集まるイベントとなっていて、基調講演ではVRアーティストのせきぐちあいみさんが登場されたり、ヴェネチア国際映画祭で最優秀短編賞を受賞した作品「Typeman」監督の伊東ケイスケさん、フルトラ機材のHaritora-XのShiftall岩佐 琢磨さん・・・と挙げだすと止まらなくなるくらいたくさんの方が登場されました。

https://www.xrkaigi.com/pages/speakers

その中で1セッションを担当させて頂きました。

XR Kaigiのキービジュアル

登壇内容のご紹介

『学術交流分野での「創域的」メタバース活用事例と今後の可能性』という発表テーマで、今年7月8日にVRChat内で開かれた東京理科大学主催のメタバースイベントを通じて感じられたメタバースの可能性について3人から発表しました。

①TAM角谷から 東京理科大学主催 メタバースイベント 開催の工夫点
②滝本教授から  研究教育におけるXR 「現実と仮想の融合」とは?
③Kurolyさんから メタバースで肩書を超越した学際交流をしよう!
④パネルディスカッション

①TAM角谷 東京理科大学主催 メタバースイベント 開催の工夫点

まずはイベントの開催を支援したTAMの角谷から。
数あるプラットフォームの中からなぜVRChatでイベントを実施したか、その理由について説明。また、VRChatユーザーではない「一般の人」も対象とした場合のハードルや、その対策方法を、実際にイベントを行った経験をもとに発表していきました。

VRChatを選定した理由
VRChatの簡単な紹介
VRChatはユーザー数が多い一方、使ってもらうまでにいくつかのハードルがある
対策① VR機材をどうするか
対策② アカウント作成~操作を覚えるまでをどうするか
対策③ 20人以上の一般参加者を同時にメタバースに入ってもらうための運営方法

イベント後のアンケート結果では、「コミュニケーションのしやすさ」「三次元の空間性」などは想像以上だったという回答が多い一方、酔いの対策については今後の課題となりました。

最終的には、イベントのYouTubeライブ配信は同時接続が1000人を超えたり、参加者アンケートからも高い満足度を得られたことから今後の可能性を感じられる結果となった、という形で締めくくりました。


②滝本教授から  研究教育におけるXR 「現実と仮想の融合」とは?

次に、東京理科大学理工学部情報科学科 滝本教授から、イベントの報告と得られた知見について発表。

先日開催したイベントは、研究教育においてVR環境を利用するにあたって必要になる現実と仮想空間の連携をコンセプトに企画したとのお話。

イベント内の各コンテンツは、現実からVR空間にデータを持ち込んで実施するという内容であったことを改めて説明。
・学長のリアルアバター
・研究成果の3Dモデル(魚の骨)
・現実の地震実験施設の様子のライブ配信
・火災実験の3D動画
など

研究教育の分野で、VR空間を通じてデータを連携する場合の課題についても説明。例えば、研究教育の場面で、VR空間で共有することが難しいものとして、以下のようなものがあります。
・大学には様々な研究機材
・企業には大型プラント
・研究所には機密性の高い情報

これをクリアするための方法として、滝本教授の研究室では、現実と仮想空間をシームレスにつながる仕組みも研究しているとのこと。

現実世界と、VR世界がシームレスにつながって出たり入ったりする仕組み
デモ動画もご紹介いただきました

交流イベントを開催して、現実と同様のコミュニケーションができる可能性を感じた一方で、物理的な物を通したコミュニケーションが必要な場面における課題感もあり、今後研究をしていきたいというまとめで締めくくりました。

③Kurolyさんから メタバースで肩書を超越した学際交流をしよう!

次に、イベントでスタッフや講演を行ったVRC理系集会主催のKurolyさんからの発表です。

最初にVRC理系集会のご紹介。メタバースを活用した学術交流の場を作る目的で活動を始めたとのこと。その背景として、令和2年に文部科学省が行ったアンケートからコロナ禍の問題として「知的交換の停滞」が挙げられていることなども引用されていました。

続いて、VRChatで学術交流をするメリットについて、わかりやすく解説していただきました。
①会場の制約からの解放
②専門分野の掲示
③アバターでのコミュニケーション
④距離的制約からの解放

メリット①~④

メリット①会場の制約からの解放。インスタンスを増やすことで会場が無限に増える。
メリット②専門分野の掲示。自分のアバターに専門分野のラベルを付与できる。
メリット③アバターを介すことでフラットなコミュニケーションができる。
メリット④世界中から、1つのバーチャル空間に集まることができる。

さらに、VRChat上では学術交流が活発に行われていることを、VRC理系集会開催時の参加者行動データをもとに解説。(参加者の同意のもと取得されているとのこと。VRChat上での行動データの取得、データ分析というのはあまり見たことがなく、これは個人的に非常に可能性のある技術だと感じました。まるでWebサイトのアクセスデータ解析のようです。)

来場者の参加時間や、会場内での位置情報を取得し、異分野間での人で交流が行われていることを紹介されました。その会話内容も、多様な分野で専門性が高い会話が行われていることがわかったとのことです。

全く異なる分野の方々が、交流していることをクラスターで分析

最後に、メタバースを利用することで対話機会が創出できる可能性を説明。
「DXやSociety5.0の文脈においてメタバースで学会等の学術交流を開催するという選択肢がある」というまとめで締めくくっていただきました。

④パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、角谷からお二人に以下のような質問を投げかけました。
・東京理科大学主催の「創域」メタバースイベントの感想
・お互いの発表に対する感想
・アバターを通じたコミュニケーションで難しいと感じること
・学術でのメタバース活用は、今後どうなっていくか

滝本教授からは、イベントを開催してみて「新しいプレゼンテーションのやり方に期待が持てる」「Zoomなんかよりずっとそばにいる感覚を得た」といった感想を持たれたとのことです。

またKurolyさんは「はじめてVRChatに入る人は、アバターで交流することに萎縮する人もいたりするかと思っていたけど、普通にコミュニケーションができていたのがメタバースを普及する上で、参考になった。」という感想を持たれたそうです。

VRChatは「コミュニケーション」の観点が特にすぐれているという点から、いま現在活用する場合には、そのメリットを生かしていくことが大事そうであるというお話や、さらに可能性を広げていくためにも今後新たに開発されていく技術にも期待していきたい、というお話でパネルディスカッションは締めくくられました。