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異常ぼっちVRChatter ~Mousou Diary~ 1st dream

異常ぼっちVRChatter ~Mousou Diary~ とは

・私が完全1人でVRChat巡りをして体験した景色をベースにした妄想日記
・文章中の出来事は妄想です
・文章中の登場人物は妄想です
・途中登場する画像はVRChat内で撮ったものなので妄想じゃないです
・画像のすぐ下に書いてあるワールド情報も妄想じゃないです

というわけで以下すべて妄想です。くらえ

Mousou Daiary

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(Kowloon night by オーゼンOzen https://www.vrcw.net/world/detail/wrld_f7681724-20cc-433b-9f46-edeeae498c89 )

「おにーさまっ」
 ばふっと、軽めの音がした後、くたびれた布団が剥ぎ取られる。油が足りてないのか、ギシギシ痛む頭を振って、私を眠りから覚ました姫の方を見る。
「おはよ。起きた?」
 白旗を振るように、覇気のない左手を振ってこたえる。
「おはよ。にこにこ」
「おはお。にこにこの擬音は口で言うもんじゃないよ」
 彼女は太陽のような(わざとらしい)笑みでこちらを照らしてくるが、外は薄暗いし、色温度的にやや寒い。ついでに、オブジェクト的にも冷たそう。建物と建物の間を吹く風の音がよりいっそう、冷たい雰囲気を引き立たせる。
 窓は格子がはめられているだけで、窓ガラスがないので、外の空気がいやおうなしに、部屋に注入される。若干ケミカルな匂い。室外機から出た空気が再び部屋に循環してる感じがして、気持ちが悪い。おまけに、外のネオンの明かりがぼやついてるし、消し忘れたテレビは薄っすらとノイズを拡散している。
 そんな感じに、寝起きのダウナーな気だるさに体を浸していると、両頬をつかまれて、ぐっと、頭が方向転換する。
「こっち見て」
 ダウナーに浸る私をいやおうなしに、冷めさせる。彼女の両目の赤はそんな色だ。
「行くわよ」
 短く一言だけ言って、部屋の外へ行く彼女。追いかける私。錆びた階段を登って屋上の方へ向かう。端の方がところどころ、ボロボロになっていて、いつか崩れるんじゃないかとヒヤヒヤする。室内の階段ですらこれなんだから、外付けの階段を使うなんて考えるだけで恐ろしい。

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 小さな背中を追いかけて、屋上に出る。のっぺりとした空と、生暖かい風が私を迎える。彼女が屋上の端の方へ歩いていく。手すりのない屋上の縁ぎりぎりを彼女は歩く。サラサラと風に揺れる金髪は、この街に似合わない。
 彼女につられて、私も屋上の縁の方へ。下を見下ろしてみる。建物と建物の間には誰もいない。だけど建物に灯る明かりからは、忙しない営みが伝わってくる。
 そんな風に、下を覗き込んでいるときだった。ひときわ強い風が吹いて、私の体が宙を舞う。

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(Q's Library Alice_Q
 https://twitter.com/A_kyu_Q/status/1451608157839519744 )

 気がつくと図書館の中にいた。壁側が2階建ての本棚。中央付近は、円形に背の低い本棚が並ぶ。さらにその真ん中、小さな机の上に一冊の本が置かれている。そして、その小さな丸い机の縁に、金髪の彼女が座っている。
「よっ」
 彼女は本を持っていない方の手をこちらに向ける。
「ここは?」
「図書館よ」
「それは見たら分かる」
「ねぇねぇ。これ見て」
 私が彼女の本の中身が見れるくらいの近くにまで来ると、彼女は本の中のあるページを開く。渾天儀の絵が書かれたページだった。
 その瞬間、不思議なことが起こった。

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 私の頭上に渾天儀のようなリングが浮かび上がる。それぞれのリングが自由に回転していて、つまり、どことも物理的に繋がっていなかった。魔法の力で浮かび上がったリングを見上げると、同時に天窓から星の明かりが目に飛び込んだ。驚きと、神秘に思考が数瞬、停止する。
「きれいね」
 彼女の声が聞こえると同時に、思考がリスタートする。改めて見ると、図書館の中央が拓けていたのはこのためだったんだと、腑に落ちる。
 もう少し見惚れていてもよかったのだが、私の何倍も早く、彼女の興味は次の標的を探し始めていた。気づいたときには、二階部分に彼女がいるのが見えた。そしてまた次の瞬間には、彼女の姿が一階の角のスペースへと入っていくのが見えた。
 このままボーッとしていると置いていかれるので、しかたなく渾天儀の本を閉じて、彼女を探しはじめる。ついでに、本棚に何が入っているのかざっと見ながら。
「おーい。どこにいったのー。出ておいでー」
 などと、言いながら、本棚から本棚へ視線をスライドさせる。納められている本はどれも英語だったり、海外の本らしい。パット見似たような本がずらっと並んでいて、違いが分からない。でも、装丁がしっかりしている本を見るとそれだけで、価値があるような気がしてしまう
 一通り近くを見終えたら、次は図書館の四隅へ向かう。入り口の方から上手く隠れる位置に、机と椅子が置いてある読書スペースが設けられていた。本棚を見たいときは本棚に集中できて、本を読む人も、なるべく他の利用者の目に触れないようになっているのか。
 図書館一階の三隅は読書スペースなり、ピアノなりが置かれていて、最後の四隅目には地下への階段が設けらていた。あと階段の手すりにかわいい、うさぎの置物が置かれていた。
 たぶん彼女はこの先かな。
 下に降りると、また本棚がいくつか置かれてた。念入りに本棚と本棚の間をくまなく探していると、さらに奥に続く道を見つける。
「あっ。いた」
「遅かったわね」
「いや、こんなとこ、しらみつぶしに探さないと見つかんないよ」
「でさ、ここにある本なんだけど……」
 そう言って彼女は、近くの机の上にあった本を開いてみせる。
 本の中には、青空と草原、それから、白い線?
「これがどうしたの」
 と言い終える前に、本日二度目の場面転換。本から溢れ出る光が広がって暗転。ワープ酔いはございませんので、ご心配なく。

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(SkyPrison by E3
 https://vrchat.com/home/world/wrld_a96bfa20-b179-42ad-9c53-1624d01cab52 )

 眩しい。太陽が眩しい、さっきまで暗いとこにいたから余計に。彼女の金髪が日光を反射して二度眩しい。
 目の前には、いい感じの青空と背の低い草原。シロツメグサ的な小さなお花たち。そして、それらを蹴散らして遊ぶ彼女。細切れになった草と、白い花びらが散る。くるくると回って、ぱたりと倒れ。すぐまた起き上がって、移動して。
 脇にある木の下に腰をおろして、彼女を見つめる。木漏れ日が暖かくて気持ちいい。それでいて、そよ風が涼しげに頬をなでる。おまけに空気もおいしい。
 ごきげんになって、服が汚れるのも気にせずに寝転がる。背中を草がチクチクと刺す。木の葉の隙間から空を見上げると、空に白い帯が何本も通っているのが見えた。なんだろう。
「ねぇ。あの白いのって」
「鳥かごみたいね」
「じゃあ、ここは鳥かごの中?」
 彼女が、草原の端の方、地面の果ての方へ歩き出す。
 慌てて立ち上がって追いかける。
 彼女の向かう方向に、白い帯があるのが見えた。
「こんな大きな鳥かごじゃ。誰も捕まえられないわよね」
「どれだけ大きい鳥を捕まえるつもりなんだろうな」
「それに、外に出なくってももう空の上なのよね。こんなに拓けてたら、羽ばたけなくってもいいって思っちゃいそう」
 彼女が見下ろす先に地面はない。崖の下は雲で覆われている。ここから落ちればひとたまりもないだろう。この下には底すらないかもしれない。そんな底知れない高さの崖であっても、彼女は一切恐れることはない。落ちないと思っているのか、落ちても大丈夫なのか。
「でも、さ。いくら空が見えてて絶景だったとしても、鳥かごの中ってのは自由がない気もするなぁ」
「自由なんてそんなものでしょ。大小あれど、みんななにかしら鳥かごの中にいるのよ。ねぇ」
 日光が彼女の髪に反射する。ふわりと振り返った彼女の赤い目がこちらを見据える。髪がゆっくりと広がりはじめ、彼女の上体は徐々に傾いていく。彼女の口元は薄くほほえみ。目はまっすぐと、ブレることなくこちらを射抜き続ける。
 背景がホワイトアウトした気がした。暖かかった日差しが、冷たいものに感じられた。時間が遅く、静かに。
 私が動き始めるまでに、そんなに時間はかからなかったはず……
 空へと投げ出される彼女に手を伸ばさない。私は両手を広げ、彼女を抱くように、彼女とともに落ちるように、前へと飛び出した。
「羽がないのに、檻の外へ羽ばたくってのは、落ちるってことなのよ」
「でも今は君といっしょだ」
「そうね。それに、このまま落ちても、地面に激突するとは限らない。だって下は雲で覆われて見えないのだから、ね」
 こうして私達は、豊かな草原から転落をはじめる。
 段々と記憶が遠のいて、私は現実へと落ちていく。
 幾層もの雲間を抜けて、汚くて、ごちゃごちゃした、鳥かごの見えない、地面のある世界が見えてくる。その場所には彼女はいない。

 無機質なスマホのアラームが、今日も私を叩き起こす。

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