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ガールズバンドクライ ヒナについての考察

ガルクラは終わってしまったが、13話を見てからずっと疑問に思うことがあり、ガルクラ全13話を改めて見返しました。
13話を見て疑問や違和感を覚えたのが、以下の3つです。

  1. ヒナもダイダスが好きだったことを思い出した仁菜

  2. ラチッタデッラでのヒナのセリフ

  3. 仁菜が、ヒナもダイダスの歌が好きだったことを思い出した時のヒナの表情

それぞれ単体だと、なんのこっちゃってなるかもしれませんが、3つを連動させるとある疑問が出てくるのです。


仁菜とヒナ

1.私だけの歌じゃない

ライブが始まる前のMCで、
「桃香さんの歌があったから私は強くなれたし、そんな話をよくヒナと…」
と、屋上で「空の箱」を聴く仁菜とヒナのカット。
OPも13話だけこのカットに差し替えられてました。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ13話

仁菜『ヒナも好きだった。ダイダスの歌が…。私だけの歌じゃない、ちゃんと届いてたんだ』

この場面の演出、OPのカットの差し替えも、桃香の歌が通用する=桃香の歌が私(仁菜)以外の人にも届くが、仁菜がヒナもダイダスの歌が好きだったことを思い出したことで、すでにちゃんと届いていたことに気付く演出は、本当に素晴らしかったです。

ここで1つ目の疑問なんですが、この場面の仁菜を見て、忘れてたというより記憶障害じゃないのか?と思ったのが最初のキッカケでした。
実際、12話までの仁菜は、桃香の歌と「空の箱」に対して、私だけが好きで私だけが聴いてきたみたいな感じになってたと思います。
ヒナのことも、都合の悪いことは抹消、もしくは改ざんしてるかの如く、仁菜の記憶が捻じ曲がっている印象でした。


これに10話で姉に話した内容が思い出されます。

仁菜「あの時の私は、自分を殺そうとしてた」

いじめを止めさせる=正しいことをしたはずなのに、親友も父親も、誰も味方をしてくれない。
そんな孤独の中で折れそうになっていた…いや、すでに折れてしまっていたのかもしれない。
ひょっとして仁菜はPTSDになってたんじゃ?・・・というのは飛躍しすぎかもしれませんが、1~2話までの仁菜は、視聴者からは狂犬呼ばわりされるほど、周りすべてに攻撃的でした。
あの時の仁菜は、精神的にはどん底だったとは言え、同じ人格かと疑いたくもなります。
まあ、強い心的外傷から自己防衛本能が働いて、別人格が現れるとか、記憶の欠落とか、フィクションではよく聞く話ですし、仁菜もそれに近い状態だったんじゃないかと思った訳です。

例えば5話、ダイダスのライブを観に行った際、「お前が歌うな」と言った仁菜の、ヒナへの敵意は相当なものでした。
あれは記憶が捻じ曲がったとかじゃないと、忘れてたでは説明が付かないと思います。
逆を言えば、そうしないと自分を保てなかったとも考えられます。


2.ヒナのセリフの違和感

1つ目の疑問と仁菜の状態を理解してもらった上で、ラチッタデッラでの仁菜とヒナの会話を見ていきましょう。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ13話

ヒナ「ただ誤解しているだろうなと思って…」
仁菜「何を?」
ヒナ「あのさ、わざとダイダスのボーカルに収まった訳じゃないから。言ってたでしょ、オーディション受けたって。あ、そっか…それってもう絶交した後だ。仁菜、学校来なくなっちゃったし…」

ヒナは、なぜ仁菜が誤解してると思ったんでしょうか?

ヒナもダイダスの歌が好きだった訳だし、そのダイダスのボーカルオーディションがあるなら、受けるのは何もおかしなことじゃないはずです。
いくら絶交したとしても、仁菜がヒナもダイダスが好きだったことを覚えていれば、誤解もくそもないはずです。
つまり、ヒナの「誤解している~」というセリフは、仁菜が記憶障害を起こしていることを知っていないと出てこないセリフだと思うんです。


そうなると、次はヒナがどこで仁菜の状態を知ったか?という疑問が出てきます。
二人の会話から時系列をまとめると、

いじめを止めようとしたことで、今度は仁菜が標的にされる

病院に運ばれるようなケガ(額のケガ)を負う

Bパートの冒頭シーンにより絶交

仁菜が学校に来なくなる

ヒナがダイダスのオーディションを受ける

だいたいこんな感じでしょうか。
ヒナが上京した仁菜と邂逅したのは8話が最初で、会話に至っては13話で初です。絶交してから会話らしい会話があったとは思えません。
では、一体ヒナはいつ、どこで、仁菜の記憶がおかしくなっている、自分もダイダスの歌が好きだったことが、仁菜の記憶から欠落していることを知ったんでしょうか?


もう一つ気になるのが、「言ってたでしょ。オーディション受けたって」のセリフ。
その後に「それってもう絶交した後だ。仁菜、学校来なくなっちゃったし…」と言ってますが、絶交した後にダイダスのオーディションを受けたということだと思ってます。
じゃあ、「言ってたでしょ。オーディション受けたって」のセリフですが、ヒナは誰に話したと言うんでしょうか?


3.ヒナの表情の意味は?

©東映アニメーション ガールズバンドクライ13話

仁菜『ヒナも好きだった。ダイダスの歌が…。私だけの歌じゃない、ちゃんと届いてたんだ』

仁菜がヒナもダイダスの歌が好きだったことを思い出した時の、この時のヒナの表情はすごく印象的でした。
全てを承知で、あえて悪役に徹してた敵役が、主人公の成長に満足して退場していく時の表情に似ているというか、通ずるというか…。

ここのヒナの表情は、人によって意見が別れるかもしれませんが、少なくとも私には仁菜がヒナのことを思い出したことで、昔の、本来の仁菜が帰ってきた。それをずっと待っていたかのような、そんな表情に見えました。
この表情とラチッタデッラでのセリフの違和感を合わせると、仁菜の記憶の異変にヒナは気付いていたと思えます。


4.仁菜の言動への疑問

仁菜が、記憶の一部が欠落および改ざんされている記憶障害だったと仮定して、全13話の仁菜の言動を見ると、1~2話の言動であれ?っと疑問に思うことがいくつかあります。
1つは1話、カラオケの場面での仁菜のセリフ、もう1つは2話で桃香に、いじめのキッカケについて聞かれた時に返した仁菜のセリフです。

仁菜「なんか一番行き詰った時に聴いて、今の自分の気持ちをそのまま歌ってるって…負けちゃダメだって」

ガールズバンドクライ 第1話

仁菜「知りませんよ。なんか気に入らなかったんじゃないんですか」

ガールズバンドクライ 第2話 

第1話の「一番行き詰った時」というセリフから、私は仁菜がいじめで一番苦しんだ時に、負けちゃダメだと背中を押してくれたと解釈してたのですが、13話を見る限りどうも違うようです。
「空の箱に背中を押された」というセリフは、作中で何回も仁菜が言っていましたが、おそらくそれまでの仁菜は、いじめを見てそれが間違っていると思っても、それを止めさせるという正しい選択をとる勇気がなかった。
しかし「空の箱」に背中を押され、正しい選択をする勇気が持てたということではないでしょうか。

公式サイトの仁菜のプロフィールも、途中から過去形と言うか、昔の仁菜について言っているような気がします。

やや引っ込み思案の普通の女の子。小中高と目立たない存在で、成績もごく普通。特に大きな夢もなく、空気を読んで、みんなに合わせて生きてきた。

公式サイトキャラクタープロフィールより引用

このプロフィールも当初、狂犬仁菜と一致しないとか、空気を読んでみんなに合わせる?いやいや、空気ぶっ壊して、正論ぶちかまして噛みつくの間違いだろみたいな、ひどいことを言われてたりもしました。
ただこれだと、一番行き詰った時というのは、仁菜自身がいじめで苦しんだ時ではなく、いじめられてる子を助けられなかった時ということになります。
それはそれで疑問が残るというかスッキリしないですね。


ヒナもダイダスの歌が好きだった。
2人で「空の箱」を聴いているカットからも、仁菜がいじめられるよりも前から、2人はダイダスの歌を、「空の箱」を聴いていたことになります。
そうなると仁菜が背中を押された瞬間というのは、13話の回想シーンにあった、いじめられてた子を助けに行こうとする、あの場面の方がより適切に感じます。

ただこの場合、新たに1つの疑問も出てきます。
それは10話、実家で姉に胸の内を打ち明けた場面ですが、ここでも「空の箱」が背中を押してくれたと言っています。

仁菜「あの曲は、押してくれたの・・・私の背中を・・・。
我慢しろ。それが頭のいい人間だって言われて、無駄なんだ、我慢するしかないんだって思っていた、私の背中を押してくれた。
間違ってないんだったら我慢なんかするなって、先のことなんか考えるなって、思いっきり跳べって・・・」

©東映アニメーション ガールズバンドクライ10話

この場面、仁菜が反省文を書かされていることから、我慢しろと言ってきたのは、父宗男だと思っていました。
ですが、これは制作側のミスリードで、13話冒頭の回想シーンを見ると、ヒナのことも含まれていると思います。


また13話では、いじめられてた子を助けたため、今度は仁菜がいじめのターゲットにされたことが明らかになりました。
これは何も隠すようなことじゃないし、むしろ誇っていいことだと思うのですが、2話でいじめのキッカケについて聞かれた時、なんで知らないと答えたんでしょうか?

この時の仁菜の心情を考えると、間違ったことはしてないはずなのに、周りが止めたり、味方をしてくれなかった。その上助けた子までいじめに加担し、主犯格に謝るよう仁菜に言ってきたことによって、正しいことをしたはずなのに無意味だったのか、自分が正しかったのか分からなくなり、自信を喪失していた。
自分は間違っていないと自信を持って言えなかったということではないかと思います。

物語の冒頭での仁菜の言動と、終盤、色々明らかになった事実を比べると、どうも釈然としない部分や、上手く繋がらない部分があるのですが、大筋としては、今回考察した「背中を押された」はクラスメイトをいじめから助けた時だと思います。


5.ダイダスの歌と仁菜とヒナ

ダイダスの歌を聴いて、仁菜は変われたということでしょう。
ヒナが言っていた通り、昔から正義感は強かったんでしょうが、あと一歩を踏み出す勇気が持てなかった。それが、「空の箱」に背中を押されて、自分を貫く強さを持つことができた。

一方、ヒナは仁菜の正反対の対象として描かれています。
今までは自分と同じで、周りに合わせて生きてきた仁菜が、ダイダスの歌によって変わった。自分を貫く強さを持つようになった。
それを同じダイダスの歌を聴いてきたヒナは、仁菜に対して憧れと同時に嫉妬や劣等感といった感情を抱きました。
それがBパート冒頭、絶交するキッカケとなったシーンです。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ13話

ヒナ「あんさ、仁菜と話している時、いつも感じとった。正義のトゲ出して、繊細振りかざして、みんなを傷付けて…なんか自分が悪者に見えてくる」


ヒナはヒナでおそらく、仁菜へのいじめがエスカレートする中、何もできない自分に歯痒さを感じ、苛立っていたんじゃないでしょうか。
そして仁菜は、多分、夏休み明けを機に不登校になる訳ですが、絶交したとはいえ、不登校になればさすがに心配になりますよね。
今までも学校でバレないように、こっそり一言二言話しかけてました。それならバレないように、仁菜の家に様子を見に行くことぐらい訳ないと思うんですが、その時に仁菜の様子がおかしいことに気付いたのかもしれません。

仮に仁菜が記憶障害に陥ってたとして、その異変に気付けるのは、母親か姉かヒナの3人しかいないと思うんですよね。


6.ヒナがダイダスのオーディションを受けた理由

ここまで13話を見た時の疑問や違和感、改めて全話を見返した上での疑問を長々と書いてきましたが、これら全部を合わせると1つの疑問が湧いてきます。
それは、ヒナがダイダスのオーディションを受けた理由です。

ヒナもダイダスを好きだった訳だから、桃香が抜けたボーカルの座を巡ってオーディションが催されるなら、そりゃ受けるでしょというのも解るのですが、ヒナがダイダスや桃香に対して、どういう思いを抱いていたファンなのかに寄るのかなとも思います。

  1. オーディションに合格すれば、好きだったダイダスのボーカルに自分がなれる。

  2. ダイダスは好きだったけど、自分が桃香の代わりなんて無理無理。

基本的には、この2つのどちらかだと思うのですが、個人的には後者じゃないかと思っています。
ヒナはこれまでにもオーディションを受けて、良いところまで行ってたようですが、前者のようなタイプなら、これまでにどこかのオーディションに合格してそうだと思ったのと、何となくですが、ヒナも桃香の厄介ファン3号のような気がするんですよね。
いや、むしろその設定で、桃香と仲良くする仁菜に嫉妬心をメラメラと燃やすヒナを、スピンオフか二次創作で描いて欲しいです。


©東映アニメーション ガールズバンドクライ11話

また11話では桃香が、ダイダスにアイドルが入って企画先行型のバンドになり下がったと、世間の評価を説明してましたが、そもそもダイダスのオーディションでは、アイドルバンドとして売り出すために、ボーカルにアイドルを求めてたのか、それとも単にルックスの良いギターボーカルを求めてたのか、その辺りは描かれていないので分かりません。
ヒナも5話の時点ではギターを持っていなかったので、おそらくギターは弾けなかっただろうし、これまでに受けてたオーディションも、アイドルか歌手のオーディションだと思われます。

ダイダス側(事務所)が、ボーカルにアイドルを求めてたのなら、ヒナは打って付けの人物だったかもしれませんが、単にルックスの良いギターボーカルを求めてたんだとしたら、ヒナは異質の人物です。
ただ、ギターの弾けないアイドルを入れれば、どうしても音の厚みという点では薄くなるし、そうなるともう1人ギターかキーボードのメンバーを増やすか、サポートを入れる必要性があると思うと、求められていたのはルックスの良いギターボーカルなんじゃないかと思うのです。

仮にギターが弾けることが前提のオーディションだったとして、ヒナのアイドルらしいルックスは申し分なかったとしても、ギターが弾けないことはマイナスです。
その中、ボーカルの座を勝ち取るには、何らかのストーリーがあったと考えられます。


できれば、このダイダス側、そしてヒナの視点に立ったサイドストーリーは、アニメじゃなくても漫画でもいいので、何かしらの形で世に出してもらえたらとも思います。

ここからは完全に個人的な妄想&二次創作です。

夏休み明け、仁菜が不登校になり家まで様子を見に行くヒナ。
そこで仁菜が記憶障害に陥っていることに気付きます。
偶然にも、夏に桃香が脱退したことで、ダイダスのオーディションが開かれることを知ったヒナは、自分がダイダスのボーカルとして歌うことで、仁菜の記憶を取り戻したいと思った。
何度も聴いた「空の箱」を自分が歌うことで、それこそ屋上で2人でイヤホンを分かち合って聴いていたカットのように、大好きで2人で一緒に聴いてた、あの頃を思い出してほしいとオーディションを受けた。
楽器の弾けないヒナが、オーディションを受けた理由を問われた際、この辺の事情と意気込みを話したのかもしれません。
そして8話と13話で、訳知り顔でヒナの方を見たり、聞いたりしてきたので、ナナだけはオーディション会場にいたか、後から事情を聞いて知ってそうな気がします。


と、ここまで妄想も含めて語ってきましたが、ヒナについては尺の関係もあって、十分に描ききれなかったんじゃないかと思ってます。
最初の方に挙げた疑問に思うことも多く、謎が残ったままという感じですね。
それでも最後の表情を見ると、いくら計算高く、損得勘定で動く性格であっても、決してそれだけじゃないと思わせる表情でした。
だからこそ、今回の妄想のような結論に至りました。


余談

1.トゲトゲが叩かれる理由

ヒナについての考察には関係のない話なんで、こちらに書きますが、トゲトゲがネットで叩かれてた理由なんて1つしかないですよね。

・勝てもしないのに喧嘩売ってきたバンド
・こいつらのイキっている感じが最高に嫌
・負け犬はとっとと消えろ

多分、これを書いたのは現ダイダスのファンでしょう。
叩かれてる理由は1つで、11話の川崎BAYCAMPのフェスで、トゲトゲは「空の箱」を演奏しています。
これは公式よりアニメでは描かれなかった、11話、BAYCAMPのセットリストがSpotifyで公開されてます。

ステージが違うとはいえ、同じフェス会場で、しかもダイダスの出番のすぐ後に、トゲトゲも「空の箱」を演奏すれば、軋轢を生むのは仕方ないと思います。
ダイダスのファンからしたら、桃香はダイダスを脱退した人間で、「空の箱」はダイダスの曲な訳ですから、それを演奏すれば、喧嘩売ってると受け取られても仕方ないですね。

Spotifyでセトリを見ると、新川崎(仮)の時も、5話のセルビアンナイトでのライブで「空の箱」を演奏してるし、13話のCLUB CITTA'でのライブでも「空の箱」を演奏しています。
公式がそこまで考えてセトリを公開してるかは分かりませんが、意図的だとしたら驚きです。

あと、このver.の空の箱は1話ver.の空の箱で、トゲトゲの空の箱ではないと思ってます。
理由は、ドラムがすばるらしくないんですよ。アニメで見てきたすばるの手癖が感じられず、革ジャン男の顔しか思い浮かばないんですよね。


2.今後の更新予定

とりあえずガルクラの考察記事は、これを最後にして、あとは2回ぐらいに分けて聖地巡礼の記事を上げようかなと思っています。
さすがに北海道旭川と九州熊本は行けてないのですが、メインの舞台である川崎と東京、7話の舞台となった長野県諏訪市には聖地巡礼してきたので、それを記事にします。

その後は今期のアニメについて書ければいいのですが、まだ今期のアニメはほとんど観れてないんですよね。
何かおすすめの面白い作品があれば、コメント欄にて教えてください。


3.YouTube動画


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