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森の音をききながら山を思い出す

青の中にピンクやオレンジが筋で混じる。きらきらとした夕焼けを久しぶりに見上げた。

雨が上がったのも久しぶりだけれど、空を見あげる気になったのも久しぶりだった。日が沈んでからも空を眺め続ける。

ゆっくりゆっくり。青が増えてくる空。
じっくじっくと、深い色に変わっていく。

じいっと見ている間に、青を過ぎて紺色になり、今は勝色(かついろ.濃い藍色)が雲の隙間からのぞいている。

雲が少しずつ増えてきた。色がのぞく部分が減ってきた。東の雲のむこうで、ぼわんと明るく月が感じられる。

電気が街に出てくるまでは、あの月だけが夜の明るさだった。

思っていたより明るい。
(電気の明るさには足りないけれど)

それでも、月明かりの中だからみえるものがある。夜のおくにある気配を感じ取れる。

街の中に住んでいても、部屋の明かりを消して。じっと、空を見あげていたら、山の中にいた頃みたいに夜の気配がわかるかな。

目を閉じて、ぼんやりと窓の近くで風の匂いを嗅いでみる。山にいたころのように、ほわっと遠くへ意識を拡げる。

そうしたら、人の気配がたくさん押し寄せてきた。この近くではたくさんの人が暮らしている。あいまいに意識を向けただけで、暮らしている人々の気配が色濃くなる。感じるための目盛りを粗く設定しておかないと、目が回る。

街には街のくらし。山には山のくらし。
場所と時間と人たちの量で、暮らしが変わり、人の感覚目盛りも変わる。

山に行ったのは、もう8か月も前になる。これほど長く、山から離れていたのは初めてかもしれない。

遠出をおおっぴらにできるようになるまでは、森の音を配信してくれるForestNotesさんのお世話になっておく。

風が木の間をはしる音。鳥やカエルの鳴き声。流れる水の音……いくつかの森の音をLIVEで聞きながら、行きたい景色を思い出す。

山が恋しい。山の気配たちが恋しい。

山の景色に会うことは、わたしにとっての重要事項だったようだ。自分が思っていたよりもずっと、強く。山の気配を求めている。


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