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RAKUGOBIYORI(らくご日和)

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噺家・玉屋柳勢( タマヤ・リュウセイ )のブログ。寄席のこと、自主公演のことに加え、歌舞伎のことや趣味のことまで。
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#歌舞伎

中村鷹之資さんの翔之會で…。(於:浅草公会堂)

歌舞伎役者、中村鷹之資さんの勉強会、翔之會に行って参りました。 池袋の独演会で申し上げたお手伝い、そして101らくごでお話ししました大向うで、です。 大向うはお芝居を引き立てる物ではありますが、大向うが下手ですと…。 これは責任重大だな、ということで一朝師匠に相談しました。 一朝師は二ツ目時分に歌舞伎座で笛を吹いてらした方ですから、良いアドバイスが頂けるのではないかと思いまして…。 アタシ「今度大向うをやることになりまして…」 一朝師「あそうなの。演目は?」 アタシ

二月歌舞伎座~鷹之資さん『船弁慶』

最近、You Tube等で日本舞踊をよく見ます。 繰り返し見てしまうのが、故人では上方舞の吉村雄輝さん。 役者の梅幸さん、富十郎さん、三津五郎さん…。 現役では当代猿之助さんの踊りが好きです。 あぁいいな、と思う人は皆ピタッと綺麗に止まるんです。 観ていて本当に気持ちが良いです。 舞踊という動きの芸術。その基本は、動かないことなのかも、なんてことを近頃思います。 そして、きちんと止まる為には、まずきちんと立つこと。 能の稽古仲間で、長年、合気道をされている方がいら

新春浅草歌舞伎で『吃又』を。

新春浅草歌舞伎・二部を観劇して参りました。 正月恒例の若手公演、3年ぶりの開催です。 お目当ては義太夫狂言の『吃又』。 今は亡き吉右衛門さん演じる又兵衛に感動し、この芝居が大好きになりました。 師匠から「物見せよ(見張れ)」と命じられ、花道の付け際に座り、グッと息を詰めて揚げ幕の向こうを見る。 真っ直ぐな思いが現れたその眼に、一瞬で心が奪われたのを思い出します。 最近では義太夫狂言の出る機会が減り、寂しく思っていましたが…。 今回、又兵衛夫婦を演じる歌昇さんと種之

十月大歌舞伎・第一部を。(『荒川十太夫』)

十月大歌舞伎初日の第一部を観劇。 後半の『荒川十太夫』のことを。 結論から申し上げます。 すっごく良かった! 胸にグッときちゃいました。 これは講談を原作とした新作です。 それも神田松鯉先生が掘り起こされた作品だそうで、 アタシはお弟子さんの伯山さんのCDで聴いたことがあるだけ。 講談としても珍しい部類の作品なのではないでしょうか。 (御一門ではそうでもないのかしら) 今回主演の松緑さんが大の伯山贔屓。 よく芸術協会の寄席にもいらしているそうで、 今回の企画が実

十一月の歌舞伎座から。富十郎さん、三津五郎さんの息子たち。

あれは2004年の歌舞伎座・海老蔵襲名披露興行でのことでした。 途中、團十郎さんが病で倒れて、急遽代演で『勧進帳』の弁慶を勤めたのが三津五郎さん。 何しろ歌舞伎十八番の宗家である市川團十郎の代わりを勤めるんですから、大変なプレッシャーもあったでしょうに、その弁慶の素晴らしいことと言ったら。 アタシは大感激でした。 その後、休憩を挟んで『魚屋宗五郎』。 このタイトルロールの宗五郎を勤めるのは、またも三津五郎さん。 始めは抑えていた、殺された妹への思いが、酒の酔いに任せて

九月大歌舞伎『盛綱陣屋』の座組は…。吉右衛門さんから幸四郎さんへ。

先日、九月大歌舞伎の二部を観劇して参りました。 アタシが歌舞伎を見始めたのは20年前。 当時、若手の花形と言われていたのが、今の幸四郎さん、松緑さん、海老蔵さん、菊之助さん、猿之助さん、勘九郎さん、七之助さん達でした。 その面々が、今では中堅世代として座頭を勤めることが多くなりました。 が、しかし…。 同世代のお客様を掴もう。その為にはウケの良い新作や、分かりやすい、もしくは派手な演目を!という流れのためか、義太夫狂言が取り上げられることが余りに少なかった様に思いま

九月大歌舞伎『東海道四谷怪談』を観劇。心に誓った…。

幕が開くと、第二幕・伊右衛門の浪宅の場面。 仁左衛門さんの民谷伊右衛門は38年ぶりとのことで、当然アタシは初めて。 『桜姫東文章』に続いて仁左・玉コンビで『東海道四谷怪談』ということで、頑張ってチケットを取って歌舞伎座へ行って参りました。 伊右衛門役の仁左衛門さんが、傘張りをしているにも関わらずカッコいい。(傘張りは浪人でお馴染み) アタシも家に帰ったら傘張り始めようかと思ったほど。(注) お梅が惚れてしまい「召使いでもかまいませんから、どうぞお側においてくださいま

歌舞伎『桜姫東文章(下)』。面白さの変化。

4月に続いて『桜姫東文章(下)』を観劇してきました。 4月に上演された(上)は言わば前振りなので、本当に面白いのはこの後半。 なのでチケットが取れて良かった~。 見所としては、お姫様育ちの桜姫が女郎に売られ、姫様言葉と女郎言葉がちゃんぽんになってしまう所がよく挙げられるんですが… アタシとしては、輪廻転生を拒んだ桜姫が、生まれ育った吉田の家から逃れられずに、愛した釣鐘権助(吉田家の仇)とその間に出来た子供を殺してしまう所に面白さを感じました。 役者の演技なのか、こちら側

歌舞伎『桜姫東文章(上)』。伝説の『桜姫』、ついに。仁左玉コンビ。

歌舞伎座が期待に満ちたこの空気感。 幕が開いて5分も経たずに主役の二人が出てくるので盛り上る客席。舞台に魅了され、楽しんでいるいっぱいの女性たち。 いつ以来だろう。 歌舞伎を観るようになって20年。仁左玉『桜姫』となればウキウキです♪ 『桜姫東文章』は30年以上前に、仁左衛門さん(当時片岡孝夫さん)と玉三郎さんの孝玉コンビで大絶賛だった舞台。 アタシは入門前の2004年7月に玉三郎さんの桜姫を観劇。その時の相手役は若手の役者さんということもあり、玉三郎オンステージとい

富十郎さん一世一代『船弁慶』後。雲助師匠と武智歌舞伎塾。

学生時代、それまでポップな歌舞伎を中心に観ていたアタシが度肝を抜かれたのが、故・中村富十郎さん一世一代の『船弁慶』。 それまでは、当時よくマスコミで取り上げられていた先代勘九郎さんのコクーン歌舞伎・平成中村座・納涼歌舞伎などを中心に見ていました。 ある日、人間国宝が、得意な演目のやり納めをするらしい、そう新聞で読んだアタシは、軽い気持ちで『船弁慶』を観に行きました。 舞踊なので、よく意味はわからないものの「何だかスゴいものを見た!」と感激し、幕見席で何度も通ってしまいまし