[噺家] 玉屋柳勢 ( タマヤ・リユウセイ )
噺家・玉屋柳勢( タマヤ・リュウセイ )が落語の「演目」毎に、稽古の裏話やエピソード、解説を。
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2005年、ありがたいことに師匠、柳亭市馬に弟子入りすることが出来ました。 アタシの前にも入門を頼みに来た人が何人もいたそうですが、弟子に取った人はいませんでした。 アタシが一番弟子です。 師匠もまだ43歳、あまり仕事がなかった時期でしたので、ずっと一緒にいましたし、様々なことを教わりました。 お稽古に関して言われたのは「出来るだけネタ元に行きなさい」ということでした。 A師匠が面白くした噺は、ちゃんとA師匠に教えてもらいなさいと。 当たり前の様ですが、案外みんな
今回は最近よく掛けている『強情灸』を。 二ツ目の半ばくらいによく掛けていました。 真打ちになってからは、二ツ目なら良くても真打ちでこの『強情灸』ではちょっとなぁ、と自分の中で及第点は出せず、お蔵入りに。 それを今年に入って引っ張り出してみたところ、もう少し磨いていこう、という気になり、ここの所掛けています。 噺の稽古は五街道雲助師匠につけて頂き、その際に「これは江戸ッ子弁の稽古の噺」と教わりました。 江戸弁でも、江戸言葉でもなく『江戸ッ子弁』という言い方で。 おそ
まずは、お越し下さったお客さま、池袋演芸場の皆さま、ご出演下さった師匠方、先生方、前座さん、弟弟子、協会事務局の皆さまに心より御礼申し上げます。 また、楽屋へお気遣い下さいました皆さま、本当にありがとうございました。 お客様からは、「寄席としての醍醐味を味わえた」「流れが素晴らしかった」など、多くのお褒めの言葉を頂きました。顔付けして下さった河村さん(池袋演芸場支配人)のおかげです。 さて、 改めまして、 2月下席、池袋演芸場昼席のトリ、 無事勤めることが出来… ま
この度、 2月下席、池袋演芸場昼席でトリを勤めさせて頂くことになりました。 アタクシにとってはこれ以上ないくらい有難い顔付け。 お知らせ出来て本当に嬉しいです。 昨年の暮れに協会から連絡があり、トリが決まったことを師匠・市馬に報告しました。 「良かったなぁ。見てくれる人は、ちゃんと見てくれてるんだな。(2月下席は)元々休みの予定だったけど・・・出るからな!」 と喜んでもらえたようで。 地味ながらもコツコツやっていることを師匠はわかってくれていたんだなぁ、と嬉しく胸がい
紙切りの林家正楽師匠がお亡くなりになりました。 初席でご挨拶したばかりでしたし…信じられません。 アタシの二ツ目時分の名前『市楽』は正楽師匠から頂きました。 二ツ目昇進が決まって楽屋で「名前どうしようかね?」なんて話しをしていたら、正楽師が「キミに『いちらく』をあげるよ」 正楽師が以前名乗っていらした『一楽』を紙切りでなく噺家のアタシに?と驚いていると、 「市馬さんの弟子なんだから、『いち』は市馬さんの『市』ね」 これで『柳亭市楽』に決まりましたから、アタシにとって
「後輩からお稽古を頼まれるということは名誉なことなんだよ。そのネタはあなたが1番です、とプロに認められたんだから」 以前、ある師匠がそう仰っていたことがありました。 「例え前座だってプロなんだから」と。 そう言えば亡くなった喜多八師匠にお稽古をお願いした時の第一声は「ありがとう!」でした。 噺家にとって、後輩にお稽古をお願いされるのは嬉しいことなのです。 頼まれてもいないのに自分から「おい、稽古つけてやるよ」と言って廻っている人もいるくらい…(迷惑なので良い子のみん
歌舞伎役者、中村鷹之資さんの勉強会、翔之會に行って参りました。 池袋の独演会で申し上げたお手伝い、そして101らくごでお話ししました大向うで、です。 大向うはお芝居を引き立てる物ではありますが、大向うが下手ですと…。 これは責任重大だな、ということで一朝師匠に相談しました。 一朝師は二ツ目時分に歌舞伎座で笛を吹いてらした方ですから、良いアドバイスが頂けるのではないかと思いまして…。 アタシ「今度大向うをやることになりまして…」 一朝師「あそうなの。演目は?」 アタシ
九月上席は鈴本演芸場の交互の出番で 6日やかん 7日善光寺由来 8日つる 9日松竹梅 10日七段目 を勉強させて頂きました。 寄席は日々様々なお客様、何が起こるかわかりません。 実は9日にちょっとしたハプニング?がありました。 なんと馬風師匠が出番直前にトイレに行きたくなってしまったのです! どうも帯を締めたらお腹を刺激してしまったそうで…。 いや、我々は可笑しくて仕方がなかったのですが、馬風師ご本人は大変です。 馬風師「どうしよう…。キレる…キレる…」 前座
はじめに…『粟餅』は「う〇こ」のネタで、『にせ金』は「キン〇マ」を連呼する噺…です。 「雲助師匠が人間国宝に」 そのニュースを聞いたアタシは飛び上がって喜びました。 雲助師はうちの協会でお稽古をつけてもらったことが無い人なんているかしら、というくらい皆がお世話になっている師匠です。(注1) 師匠はその芝居中にお稽古を付けて下さることもあり、寄席の初日には雲助師匠にお稽古をお願いする二ツ目が大体何人かいて、先輩「お稽古頼みに来たの?誰?」アタシ「雲助師匠に。上げのお稽古
三遊亭金八師匠に教わりました。 書生っぽい芸人が多いと言われる落語協会では、芸人らしい軽やかな雰囲気をまとっている金八師は稀有な存在です。 師匠特有の気の利いたくすぐりがまぶしてある…そんな師匠の地噺が好きです。 特に『たがや』はくすぐりの入れ方が難しいと言われています。 小朝師匠が仰っていた「三大難しい地噺」(※1)の1つです。 たけ平兄さんによると、くすぐりを入れることにより噺のリズムが崩れてしまい、グズグズになりやすい噺なのだそうです。 地噺でグズグズになる
アタシは権太楼師匠に教えて頂きました。 『代書屋』は、実際に代書屋をされていたという先代米團治師匠の拵えた新作落語。 東京では芸術協会の先代小南師匠の型を、喜多八師匠が習って落語協会へ。 そこから雲助師匠や権太楼師匠に広がっていったネタです。 アタシがお稽古をつけて頂いたのは国立演芸場。 ちょうど喜多八師も出番でいらしてました。 権太楼師が喜多八師に「この子に『代書屋』を教えるから」と、わざわざ許可を取って下さり、そのまま地下の稽古場へ。 『代書屋』は権太楼師の十
最近、You Tube等で日本舞踊をよく見ます。 繰り返し見てしまうのが、故人では上方舞の吉村雄輝さん。 役者の梅幸さん、富十郎さん、三津五郎さん…。 現役では当代猿之助さんの踊りが好きです。 あぁいいな、と思う人は皆ピタッと綺麗に止まるんです。 観ていて本当に気持ちが良いです。 舞踊という動きの芸術。その基本は、動かないことなのかも、なんてことを近頃思います。 そして、きちんと止まる為には、まずきちんと立つこと。 能の稽古仲間で、長年、合気道をされている方がいら
新春浅草歌舞伎・二部を観劇して参りました。 正月恒例の若手公演、3年ぶりの開催です。 お目当ては義太夫狂言の『吃又』。 今は亡き吉右衛門さん演じる又兵衛に感動し、この芝居が大好きになりました。 師匠から「物見せよ(見張れ)」と命じられ、花道の付け際に座り、グッと息を詰めて揚げ幕の向こうを見る。 真っ直ぐな思いが現れたその眼に、一瞬で心が奪われたのを思い出します。 最近では義太夫狂言の出る機会が減り、寂しく思っていましたが…。 今回、又兵衛夫婦を演じる歌昇さんと種之
みなさま、2022年も残すところあと数時間となりました。 今年のランキングを発表いたします。 以下じぶえもん新聞第2号(2022年12月28日)より。 「毎年恒例の最も掛けたネタランキングが柳勢より発表された。 昨年は『源平盛衰記』、トリネタ偏では『阿武松』が1位となった。 今年は真打三年目。寄席の若手真打の出番が多く、時間調整ができ、十五分程度でできるネタが圧倒的に増えた。 寄席の若手真打の浅い出番には「会場を温める」「時間を調整する」など基本的な役割が要求される。
二つ目なりたての頃に志ん橋師匠に教えて頂きました。 元々はあまり興味のあるネタではなかったのですが、志ん橋師匠が落語研究会で掛けていらした古い映像を見て感激し、お稽古をお願いしました。 落語的な、マヌケな若い衆をいきいきと描写されていて、とても面白かったんです。 志ん橋師匠の教えはとても丁寧。10時か11時だったかに始まるお稽古は、いつも15時くらいまで掛かるのです。 人によっては、夕方まで終わらないこともあるそうで、その丁寧さに頭が下がります。 いま、『看板のピン
真打ちになって2年半。 寄席では、主に前座さんと二つ目さんの次の出番、真打ちの最初の出番を頂いております。 俗に『浅い出番』と言われますが、これで中々大事な出番なのです。 寄席は毎日様々なお客様がいらっしゃいます。 ご常連の方、初めてのお客様、観光やバスツアーでいらした方・・・などなど。 トリが変わればお客様の層が変わるのは当然ですが、同じトリでも10日間毎日違います。 陽気な日、重たい日、新作がよくウケる日、まくらはよく笑って頂けても落語本編ではウケない日。 同