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管理部のことを知らない事業のマネージャーが会社の成長を止める

以前、「サービスのことがわかっている管理部って何?」というブログで、事業部の動きを理解することで管理部の立場から事業成長へ貢献できるということを書きました。今回は「事業部が管理部を知る」という方向で書いていこうと思います。タイトルは控えめに「会社の成長を止める」と書きましたが、事業部が管理部の仕事を知らないことで、事業部で良かれと思ってやっていたことが、会社倒産につながったりします。

■管理部ってどんな部門があるの?

新卒社員だけではなく、管理部との関わりが少ない職種の人ほど、管理部にどんな部門があり、何をやっているのかを知られていないことは少なくないので、簡単にご紹介したいと思います。

・経理部
お金の入出金の管理をしています。顧客からの入金管理や給与の支払いなども経理部が行っています。

・財務部
経理部と似ていますが、入金されたお金や現金以外の資産の管理、そして、資金調達などを行い、会社のお金を費用対効果高く使えるように管理をしています。会社によっては、財務部がない会社もあります。

・法務部
主に契約書の作成や契約書の内容の確認をしています。顧客や取引先などとトラブルが発生したとき、損害賠償請求など会社同士の契約で不利にならないように、会社を守っています。

・労務部
社員の給与計算や社会保険・労働保険の手続きを行っています。給与や健康保険など社員の生活に密接に関わり守っています。また、会社が労働基準法などを遵守できるようにしています。

・人事部
社員の採用や教育研修を行っています。また、社員が働きやすい会社作りなどもしています。

・総務部
人事部がソフト面の働く環境を作っているのに対して、総務部は働くための物理的な環境づくりをしています。具体的には備品の受発注管理や電話機の管理などをしています。総務部の人材によって、会社の雰囲気やカルチャーを作るとも言われています。


今回は、経理・財務・法務・労務・人事・総務の分類で列挙をしましたが、会社によっては前述の部署名と異なっていたり、会社の規模に応じて、2部署がマージされていることもあります。
また、スタートアップだと、1部門1名も配置することができないため、最初は税理士・弁護士・社労士などの外部の専門家と顧問契約をすることはよくあります。

■管理部の仕事を知らない人が起こした過去の悲劇

管理部の業務は専門性も高いこともあり、どんな仕事をしているのか?業務フローはどんな流れなのか?など、分かりづらく理解してもらいづらい傾向にあります。管理部の業務への理解がされていなかったり、業務連携がされなかったりした結果、トラブルに繋がります。いろんな会社で聞いた悲劇をご紹介します。

●身近な悲劇
・内定取り消しができない・・・
「内定」と口頭でも言ってしまうと、内定を取り消しできません。内定取り消しは解雇権濫用法理が適用され、労働契約法16条に引っかかってしまうからです。
ある会社で面接中に「内定」って言ってしまう社長がおり、採用担当の間でも「アンコトローラブルでハラハラする・・・」と囁かれていました。ある面接でも、面接中に社長が「内定!」と言ってしまったのですが、配属先の現場では並行して行われていた社長面接前の面接でより優秀な人に出会っていました。そのため、配属先からは先に最終面接進んでいたその人材を不合格にしたいという意向が上がってきたのですが、内定を取り消せない事態になってしまったそうです。

・知らない間に新入社員が入社
採用担当のいない会社で、配属先部署が独自で採用を行っており、ある方を採用することになりました。しかし、採用する人を労務担当に連携をせず、入社の案内をした結果、労務担当が知らない間に2〜3人が入社をすることに・・・。配属部署が労務への連携を怠っていたため、入社したにも関わらず、業務用のPCが準備されていないという事態に・・・。労務担当と情報システム担当がその日に予定していた仕事を後回しにして、アカウント作成やPCの準備をしたとのこと。PC機器周りは労務担当者と情報システム担当者の頑張りで事なきを得ましたが、健康保険の手続きは社内では完結することができないので、通常よりも遅くなり、その期間病院に行けない事態にもなってしまっていたそうです。

・適当に締結した契約書によって損害賠償額が・・・
お客様に自社のサービスを導入してもらうにあたって、契約書を締結していたそうですが、一部契約書では、法務を通さずに締結した契約書があったそうです。(大体、営業担当の引き出しに眠っていることが多いのですが・・・。)そのような経緯で締結したお客様に対して、損害を与えてしまい、損害賠償の請求を受けてしまうことに。しかし、法務のチェックが入っていなかったため、契約書の条項で損害賠償の上限を設定されておらず、損害賠償の全額を請求されることとなりました。その時は、会社が保険に入っていたため、倒産という事態にはならなかったそうです。


身近な例をご紹介したので、「あれ・・・?私もやっちゃっているかも・・・。けど、そんな悲劇に出会ったことないなぁ・・・」と思われているかもしれませんが、それはその会社の管理部の方が優秀で、トラブルに繋がる事態も裏側ではファインプレーをしてトラブルにならないようにしているからです。

●よく耳にする「黒字倒産」
黒字倒産とは、ウェキペディアの言葉を借りると、損益計算書上では黒字の状態であるにもかかわらず、資金繰りの関係で法人などが倒産してしまうことです。

例えば、現金が100万円残っている中で、Aという顧客に150万円の商品を販売しました。その時、営業担当は入金が納品をした月の翌月末の契約をしてしまいます。しかし、製品の原価は120万円で現金100万円では足りません。こういった状態が黒字倒産です。

ここで関わってくる部署が経理と法務です。営業担当が契約書締結のときに、法務担当に契約書確認の依頼を投げていれば、契約内容のリスクに気がついていたかもしれません。もしかしたら、社内の仕入れ管理で経理に数字の連携をしていたら、気がついていたかもしれません。(案外、仕入れ管理の仕組みがあっても、「まいっか!」と管理表への入力を怠ったりすることはよくあります。)営業担当がそれぞれの部署のことを知らず連携をしなかったことにより、よかれと思って売り上げも倒産という悲劇を引き起こしてしまいます。

事業部は会社が伸びるための役割をしていますが、管理部は会社が倒れないように守っています。前回のブログでは、管理部が事業部側の仕事を知らないことで会社の伸びる活動を防いでしまうという事例をご紹介しましたが、その逆で、事業部側が管理部の仕事を知らないことで会社が倒れてしまうのです。


営業部に関わらず、事業部の各部署の役職者、もしくは役職を目指す方には読んでほしい本をご紹介します。

・川井隆史『現場で使える会計知識』明日香出版

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経理領域ピンポイントですが、お金周りは会社の売上の伸びだけではなく、会社の倒産にもつながる重要事項ですので、本書はかなりおすすめです。
本書の特徴は、会計関連のことを書かれているのですが、営業を始めとした現場のマネージャーの視点に立って書かれており、業務に活かせる会計知識が書かれている点です。

もし、余裕がある方で他にも知りたい!という方には、下記の本もおすすめです。

・『図解 わかる 労働基準法』(労務領域)

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労働基準法に違反をしてしまうと、いわゆるブラック企業と言われるだけではなく、罰金が課せられることもあります。しかし、労働基準法を知らないために、知らずしらずブラック企業となってしまっていることもあります。本書は、労働基準法の抑えておきたいところを図なども使ってわかりやすく説明されています。

・『企業法務のための初動対応の実務』(法務領域)

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そもそも法務のお仕事とは?ということから、契約書の書き方・ポイント・ルールなど、法務関連の基本的なことが書かれています。お客様と契約書をやり取りされる方は一度、読んでみるとよりやり取りがしやすくなります。

■本当に管理部ってコストセンター?

「管理部はコストセンターなんだから、事業部の言うこと聞いて!」

自分自身の要求をゴリ推したい事業部の人に、前述のようなことを言われたことがありますwまた、ここまではっきり言う方はレアですが、「管理部は事業部の言うことを何でもやってくれる部署」だったり、「社内だし適当でいいや」などといった態度で接してくる方も何人かいらっしゃいます。

本当にコストセンターなのでしょうか?
おそらく、本当の意味でコストセンターであれば、世の中の会社で管理部門がなくなっていると思います。

元事業部で、管理部の仕事をするようになった人がつぶやいていました。

「事業部は100点を出せば喜ばれるけど、管理部の仕事は100点出しても当たり前って感じだし、120点出さないと喜ばれない」

また、人材紹介の営業担当の方が採用担当になったときに「採用担当って暇だと思ってたけど、めっちゃ忙しい!?」とも言っていました。

管理部の仕事は、一見、水に浮かんでいるだけの見えるけれど、水面下で必死に足を動かしている水鳥のようなものなのかもしれません。
身近な悲劇ということでご紹介した通り、通常の業務だけではなく、小さなうっかりが大きな問題となって管理部に持ち込まれるので、大きな炎にならないように火消し業務をある程度の頻度で行わないといけなかったりもします。
また、私が営業から採用担当になったときに「営業はお客さんを中心に考えるので良かったかもしれないけど、管理部の仕事はいろんなキーマンがいて、その調整が必要になるのが事業部側の仕事とは違うところだよ」と先輩社員に言われたこともありますが、様々なステークホルダーのことを考慮して仕事をすることで手間もかかりますが、仕事のクオリティもあがってきます。

管理部の仕事は、法律などが関わるような専門分野でもあるので理解してもらいところはありますが、事業部とは違った大変さがあるのだと思います。

■みんなハッピーな気持ちになる社内になるといいな・・・

サッカーでいうと、ゴールを決めるストライカーが営業だとすれば、「ボランチ」のポジションのように思われます。
サッカーのことを詳しくない人は、ボランチが何をやっていて、どのように大切なポジションかわからないので、ストライカーのようにわかりやすいポジションに称賛を贈りがちです。(かくいう私も、サッカーのことはわからないので、ストライカーのポジションが一番わかり易いですw)

ですが、サッカーのことをよくわかっている人は、全体を見て、ボランチがどんな風にいい動きをしたのか、称賛を贈ることができます。
また、サッカーチームの中では、お互いの動きを見ながら、連携をしてゴールを決めていき、アシストをした相手には感謝を送り、お互いを尊重し合い、一体感のチームを作っていきます。

サッカーチームに比べて、実際の仕事場はどうでしょうか?

違う部署の仕事だけではなく、同じ部署の人ですが、どんな仕事をしているかわかっていなかったりすることもあります。相手の仕事のことを理解しないあまりに、仕事の依頼の仕方も、サッカーボールをメンバーが誰もいないところにボールを投じるような依頼もあります。身近な悲劇も相手の仕事を知らず、連携ミスが引き起こしているケースが少なくありません。
また、お互いの仕事を知らないと、大変さやそのポジションの大切さを理解できないので、サッカーチームのように相手のことを尊重し合うことができません。

会社をサッカーチームに例えましたが、お互いのことを尊重しあい、また、いいパス回しをして、会社の成長というゴールを決められるいいチームが増えていくといいなぁ・・・と思います。

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