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夜の水族館と潮の香りのシングル・モルト・ウイスキー体験

 一通のブルーの招待状が届き、シングル・モルト・ウイスキー「タリスカー」のイベントへ。

 北朝鮮のロケットが撃ち放たれた2012年12月12日(水)の夜、東京スカイツリーの麓に位置する「すみだ水族館」が、「TALISKER BLUE OCEAN LOUNGE」として開放された。通常、水族館の営業時間は21時まで。その後、イベント用の化粧を施し、21時30分からタリスカーの碧い水族館として再オープン。

 館内全体が、スカイ島の荒々しい海をイメージしたブルーで彩られ、招待客もブルーの装いがお約束。導入部でタリスカーのハイボールを手渡ししてくれる美女のドレスもブルー。正面に備えられた「水のきらめき 自然水景」の水槽内にはタリスカーのボトルが陳列され、「MADE BY THE SEE」のキャッチを具現化している。

 六階の水槽群を通り抜け、奥の階段から五階へ降りると、ペンギン・プールの手前にDJブース、入口で配布された音声ガイド・シーバーにDJのナビゲーションが飛び込んで来る。DJブースのゲストは、「ジャック・マイヨールを超えた唯一の日本人」プロ・フリーダイバー篠宮龍三氏。人間として、生身のまま115メートルの潜水を達成している世界でたった5人の中のひとりだ。

 そんな彼の海についての語りに耳を傾けながら、「みずといのちのたわむれ」のコーナーの、すでに眠らんとしているペンギンたちの前でグラスを傾ける。普段体験できない夜の水族館に気分が高揚し、そのフロアにて同時にスコッチを嗜むことができるなど、心躍るとはこのこと。

 タリスカーは英国スコットランドのヘブリディーズ諸島最大の島、「霧の島」と呼ばれるスカイ島に残る唯一の蒸留所にて作られている。スカイ島は、多くの人がいまだゲール語を話し、安息日を遵守するスコットランド自由教会に属する。蒸留所は、島の西海岸ロッホ・ハーポートに位置し、創業は1830年。口に含むとスモーキーかつ力強い潮の香味が残り、荒々しい海を想起させる力強いテイストが特徴だ。

 会場では、五階と六階にそれぞれカウンターが設けられ、タリスカーの10年、18年、ディステラーズ・エディション、25年、30年を味わうことができた。タリスカーを普段呑んでいる者からすると、圧巻はやはり30年。まず、ストレートで。こうした癖のあるモルトの好きな方には、燻製のようなスモーキーさを持つ香りは陶酔に値する。この後、同じ30年をオン・ザ・ロックスのダブルで試してみたものの、特徴的なスモーキーさは、やはりストレートで味わうに限る。

 エントランスでもらったハイボールのグラスは、そのまま持ち帰り可能。お代わりをもらった直後、1時間半足らずの夜の水族館は閉館時間を迎えてしまったため、グラスを抱えたまま厳冬の寒空に出る。しばし、頭上の東京スカイツリーを仰ぎ見ながら、タリスカー30年を飲み干す。悪くはない…。

「すみだ水族館」と潮の香りのシングル・モルト・ウイスキー体験…世間が「ミサイル危機」に揺れた1日、身勝手ながら、そんな素敵な一夜を過ごしていた。

※Yahoo!ニュース個人にて、2012年12月13日 8時35分 掲載 

削除済の記事をアーカイブから救出した原稿。掲載時に添付した写真も探し当てた際は、掲載したい。

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