春風町33番地測量計画頓挫中(ぺんぎんぱんつの紙 33枚目はweb)田丸まひる
moderate
さくら色のマスクが風に舞い上がる暮らしのなかに足りないなにか
でもそれはちゃうんちゃうんと言えなくて小道に指がかじかんでいる
浴槽にもたれてライブ配信を観る日がくると思わなかった
ぼんやりと燃えるこころの灯火の推しメンカラーの歯ブラシを買う
つよつよになるしかなくて灰色のマスクを抜け殻みたいに外す
一緒には怒ってくれんひとばかり怒ったほうがええとか言うて
好きなひと増えればそれに伴って嫌いなひとも増える五月雨
春には2歳を迎えようしている子は、気づいたらいつも片手にお気に入りの赤い車(たぶんフィアットではない)を握りしめている。走り回る時も、絵本をめくっている時も、本当はやめさせた方がいいのかもしれないけれど、食事の時も片手に車、片手にスプーンといった具合に。保育園でも何らかのおもちゃ、出かけた先でもちょうどいいサイズのボールなんかを握りしめているので、そうやって握っている感覚で、安心感を得ているのだと思う。はじめての世界に立ち向かうには、無敵のアイテムが必要だ。
とかっこよく言ってみたいところだけど、ちょっと待ってほしい。きみが握りしめて、「ブッブー」と言いながら床を走らせているそれは、わたしのパソコンのマウスです。右手に赤い車、左手に白いマウス。少し油断してデスクに置いたままにすると、目を離した隙に持っていかれる。やめてくれ。それは仕事道具だし、今日は楽しみにしているあの子のライブ配信もあるんだ。