見出し画像

我が家(築40年賃貸マンション)の管理人さんの仕事に日々感動している話。

今のマンションに住み始めてはや2年。
すっかりこの暮らしに慣れましたが、以前はこのマンションからすぐ近くの戸建てに住んでいました。

その家はかつて親戚が住んでいた空き家で、ドンキもびっくりの驚安価格で数年間住まわせてもらっていました。

2年前にその戸建てが売却されることになったため、私たちは引越し先を探すことになりました。
子どもの保育園の関係もあり、最寄駅はできるだけ変えたくない。

保育園まで歩いて通えて、家族3人で住めるサイズで、河川敷の住人である私たちでもギリギリ払える家賃レベルという条件で探した結果、今のマンションにたどり着きました。

このマンションは築40年。部屋の一部はリノベーションされているものの、その佇まいには隠し切れない昭和の香りが漂っています。

例えば、「畳をフローリングに替えて洋風ですよ!」とアピールしてくるのに、しっかり襖と押し入れは残っているとか。もう少し洋風度合いが欲しい。

不動産仲介会社の方の案内を受けながら、正直ここまでテンションが上がらない内覧は初めてだ・・・と思っていました。

と言っても、他に検討できる物件もないのでさっさと契約を済ませ、戸建て時代にお世話になったご近所さんたちにご挨拶に行きました。

まずはお隣さんに、

「今までありがとうございました。引越し先はあのマンションです」とマンションを指差しながら伝えると、

あら!あのマンションに住むの?
あそこはいつも管理人さんがきちんと掃除されているから安心よ〜!

お隣さんの証言

と言われました。

それは朗報です。
マンション内やその周辺が綺麗なのは喜ばしいことです。

そんなことを思いながら、今度はお向かいにご挨拶に行くと、

あら!あのマンションに住むの?
私、新婚の時にあのマンションに住んでいたのよ。
あそこは代々管理人さんがきちんと掃除されているから安心よ〜!

お向かいさんの証言

え、デジャブ?

こんな短時間に、2回も「あのマンションは管理人さんがいい」なんて言われること、ありますか。

お向かいさんに至っては、「あそこは"代々"管理人さんがしっかりしている」と歴史を感じさせる発言をされたので、当初引越しになんのワクワクもありませんでしたが、少しだけ楽しみになりました。

そして入居してわかりました。

噂の管理人さん、本当にすごかったのです

私にとってマンション管理人のイメージは、「ずーっと座ってるおじいちゃん」という感じでした。

「寝てるのかな?起きてるのかな?」と思いながら、小声で「こんにちは〜」と管理人室を通り過ぎるイメージです。

しかし、引っ越した先の管理人Sさんは、管理人室にほとんどいません。

常に、動いています。

ある日は床をモップで水拭き、またある日はエレベーター内の鏡を拭き上げ、さらに別の日は葉っぱまみれになりながら植え込みの手入れをしていました。

特にSさんの職人技とも言えるのが、「エントランスドアの拭き上げ」です。

住人の指紋が全くなくなるまでピッカピカに磨き上げるので、我が家のエントランスは5つ星高級ホテルのザ・ペニンシュラ東京にも負けていないと思っています。

聞くところによると、Sさんは毎朝5時に起床し、いつも同じカフェでコーヒーを飲みながら新聞を読み、いつも同じ時間の電車に乗り、7時過ぎにマンションに到着するのだとか。ちなみにSさんの始業は8時です。

先日も朝からシューーーーーーという音が家の外で聞こえたので「なんだ?」とドアを開けると、Sさんが各階を回って「蜘蛛がいなくなるスプレー」を隅々まで散布していました。

マンション前の「駐車禁止場所」に置くカラーコーンは、路面のラインにピタッと沿わせます。
万が一誰かがずらしても、翌日には必ずピタッと戻っています。

人の往来が多い場所なので、このコーンが安全を確保してくれています

「整然としていること」はSさんの矜持のようで、それが一番現れているのがエントランスの掲示板です。

A4サイズのお知らせが等間隔で貼られており、固定用のマグネットは各書類ごとに必ず同じ色で統一してあります。

達筆な文字で補足を記載し、使用しないマグネットは色ごとに右下に並んでいます。

毎日帰宅し掲示板を見るたびに、美しいなあ・・・と感動するのです。

そして感動するだけで中身をちゃんと見ないので、「ナミキさん、あの書類の提出まだですか?」とめちゃくちゃフォローされます

自らの名誉のために言うと、締め切りまで随分余裕があっても、お知らせを掲示して数日たつとSさんのフォローアップが入るんです。

Sさんは進捗確認がめちゃくちゃ細かい、厳しい上司でもあります。

定規で図ったような美しい並び

その一方でコミュニケーション能力もずば抜けており、高齢者の住人が多いこのマンションでおじいちゃんおばあちゃんの話し相手になるなど、絶大な信頼を集めています。

夫が知人からいただいた大量の柿を食べきれなくて困っていた時も、Sさんに相談したところ、住人の方に配っていただき綺麗になくなりました。

コミュ力、仲裁力、精密さ、丁寧さ、納期厳守・・・

丸の内の超一流企業で働くビジネスパーソンだって舌を巻くはず!と勝手に誇らしい気持ちになります。

そういえば、年に数回「金曜日が祝日になる日」がありますが、金曜はマンションのゴミの収集日でもあります。

Sさんは通常祝日はお休みですが、ゴミ出しと被る日は、午前中だけ出勤してゴミ出しの監督をしてくれます。

そして翌日には「管理人代休取得のおしらせ」が、掲示板にぴたっと貼り付けられているのです。

かつてご近所さんたちが「このマンションは安心」と言っていたことに、間違いはありませんでした。

それどころか、もう「Sさん無しにはこのマンションは成り立たないのでは」とさえ思うようになりました。

もしSさんが他のマンションに異動されることがあれば、私たちもそのマンションに引っ越したいと本気で思うくらいです。

なお、Sさんの勤務は毎日17時までで、Sさんは17時00分10秒に帰宅されます。

ザ・プロフェッショナル。