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うつりゆく子どもの興味に翻弄される私。

みなさんは子どもの頃、何に熱中していましたか?

私は覚えていません。

小さい頃から本を読むのは好きでしたが、たとえば「絶対〇〇の本じゃなきゃダメ!」のような、極端なハマり方はなかったように思います。

そのため、自分の子どもが何かに「極端なハマり方」をしているのを見ると、とても驚きます。

我が子が最初に好きになったものは、子どもが好きになるものランキングで数十年間トップを独走しているであろう「電車」でした。

子どもが物心ついた頃はコロナ禍でおでかけに連れて行けず、近所の踏切で電車を眺めるのが定番の暇つぶしでした。

最初は電車が通るだけで喜んでいましたが、次第に電車の絵本を読みたがり、プラレールなどの電車のおもちゃを欲しがり、更にそこから電車のTシャツ、電車のズボン、電車の靴下、電車のレインコート、電車のお皿、電車のコップ、電車のリュック・・・

「電車」という文字で私の脳内がゲシュタルト崩壊しそうなくらい、子どもの電車熱は高まっていったのでした。

そのうち子どもの愛読書は電車の「図鑑」や「路線図」になり、週末になると数百ページもあるこの2冊をリュックに背負い、神奈川県〜東京都近辺の電車に一日中乗り続ける旅をしていました。

電車旅の相棒たち

子どもにとっては電車に乗ることが目的なので、「目的地」はありません。
せっかく観光地のある駅に立ち寄っても、ご当地グルメを楽しむなんてことは一切なく、A鉄道からB鉄道に、さらにC鉄道に乗り換え・・・という感じで、電車と電車をつないで移動するだけなのです。

我が子が一つのことにのめり込む姿を見ていると、自分の小さい頃とあまりに違うので、ある日私は

「この子、もしかして、ギフテッドかもしれない」

と思いました。

そしてスマホで「ギフテッド 教育方法」と検索しながら、「凡人の私にギフテッドの子どもを育てられるかしら・・・いやいや、子どもの才能を伸ばすのは親である私の責務!」と謎の使命感に燃えていました。

しかし、その使命感は一瞬にして消え去りました。

週末に電車の一両目に乗ると、私の子どもと全く同じ格好をしたお子さんが必ずいるからです。

そこにいるお子さんは、95%の割合(ナミキ調べ)で電車がプリントされた服を着て、電車に関する本を持ち、リュックにはどこかでゲットしたマニアックな電車のピンバッジがついていて、先頭車両の窓にへばりつきながら「しゅっぱーつ!しんこーう!」と呟いています。

そして必ずその横には、疲れ果てて能面のような顔をしている親御さんがいます。

「あ、全然うちの子だけじゃない・・・」と思うとともに、その親御さんにも「いろいろお疲れ様です」という念を送ります。

ただ、このように圧倒的な熱量で何かにハマる子どもと時間を過ごすと、自然と私もその物事に興味が湧いてきます。

「XX電鉄の1000系がかっこいい」と言われれば、かつての私なら「電車なんてみんな同じでしょ」と答えていたはずですが、いまは「あーあの車両ね!かっこいいよね。ちなみにお母さんは600系も好きだよ」という会話ができるようになりました。

とある電鉄のとある系統の車両は5両目だけが革シートの特別ボックス席になっていることを知ってからは、その系統の電車が来るたび、子どもと5両目まで爆走するようになりました。

レア車両を見つけると、その姿を一眼レフで連写する本物の鉄道好きの方の端っこで、私もスマホをパシャパシャやるようになりました。

かつて、電車は私にとって「ただの移動手段」でしたが、知識が増えるとその分愛着も湧き、自分の世界が広がるように感じて楽しくなりました。

そんなある日のこと。

「今日ね、お母さんがお仕事で東京に行ったとき、XX電車乗ったんだよ!」と自慢げに言うと、子どもは

「え、XX電車?ふーん。お母さんって子どもっぽい趣味なんだね」

と言われました。

え?????

いつの間にか子どもの興味は保育園の絵本コーナーで見つけた「深海生物」に変わっていたようで、どうやら子どもは「電車好きを卒業したオレはかっこいいおにいさんだぜ」的な自意識になっていたのです。

私としては、もうショックですよ。

友人からミキハウス(自分で絶対買わない高級子ども服)のお下がりをいただいても「電車のイラストじゃないからやだ!」と全く着ず、代わりにAmazonセールで1,320円で買った、ぺらっぺらの電車プリントTシャツしか着なかったじゃん・・・。

「こんなにハマったのに、今さら興味がなくなるなんてもったいなくない?」と、趣味に対してまで機会損失の考え方をしてしまう私はほんとにつまらない大人だな・・・と思いましたが、そんな私をよそに深海生物にハマる子どもと一緒に過ごすうち、私もその魅力を知るようになります。

そして、子どもの興味関心は深海生物から、深海生物を探査する船である「潜水調査船」に。

子どもが寝ても覚めても潜水調査船のことばかり話すので、世界中の潜水調査船のレプリカがある博物館を訪れたり、深海生物専門の水族館に行ったり、挙げ句の果てには日本が誇る潜水調査船「しんかい6500」の特集が組まれた十年以上前の「プロジェクトX」のDVDを買ったりしました。

子どもそっちのけで、「何度も打ちのめされながらも諦めない男たち」に号泣

そして子どもに負けず劣らず潜水調査船にはまった私は、海洋研究開発機構が行う、年に一度の「JAMSTEC横須賀本部 施設一般公開イベント」に応募し、すごい倍率と言われる抽選を勝ち抜き、本物のしんかい6500を見られるイベントチケットを手に入れたのです。

深海ロマンに取り憑かれた人たちでごった返していました

図鑑やDVDで何度も見たしんかい6500が、目の前にある。

私の頭の中では「プロジェクトエーックス・・・!」が何度もこだまし、困難に打ちのめされながらも決して諦めなかった男たちの想いが田口トモロヲの声でフラッシュバック。
言わずもがな、バックミュージックは中島みゆき。

私は勝手に胸がいっぱいになり、惚れ惚れしながらしんかい6500を見ていました。

が、なぜか隣にいる子どもの反応が、全般的に薄い。

薄々感じてはいましたが、当選してから当日までの間に、子どもの趣味は潜水調査船を調べる中で知った「クルーズ船」に移っていたのです。

なぜ!!!!!

あんなに「しんかい6500」のことばかり話していたのに、いつの間にか会話のほとんどが「タイタニック」に。

タイタニックといっても、もちろんローズとジャックの悲しき恋に興味があるわけではありません。

タイタニックがなぜ沈没したかを調べたかったようで、子どもはYoutubeで映画「タイタニック」の沈没シーンを繰り返し視聴していました。
隣で常に沈没する船を見させられた私は、船が怖くて仕方なくなりました。

でもこの数ヶ月後、しっかりと私もクルーズ船の魅力に取り憑かれ、クルーズ船をお見送りするという新たな趣味が生まれました。

その後も子どもの趣味は半年〜1年ごとに変遷を続けており、私はその度に、子どもから数ヶ月遅れてハマります。

この時差が、どうしても埋められない。

最後に、子どもの最近の興味関心についてお伝えしたいと思います。

子どもの寝かしつけの際、絵本を読むご家庭は多いと思います。

私も小さい頃は寝る前に両親から絵本を読んでもらった記憶がありますし、その絵本は今でも大切な思い出となっています。

当時私が読んでもらっていたのは「三びきのやぎのがらがらどん」や「ぐりとぐら」などで、おおむね「むかしむかし」から始まり、「めでたしめでたし」で終わる、心あたたまる本ばかりです。

しかし、現在私が子どもに頼まれ読み聞かせをしているのは、「危険生物図鑑の解説」です。

ただただ危険生物の名前とその特徴、生息地域、保有している毒、毒によりどんな痛みがあるかという説明を音読し続けるんです。

なかなかハードな写真が多いため、私はいつも薄目で読み上げています

コブラは神経毒でクサリヘビは出血毒だとか、ハブクラゲに刺されたらお酢をかけると刺胞の発射が抑えられるとか、水族館でショーをしていたシャチがトレーナーを水の中にひきずり込んで殺したとか、「これって寝かしつけに最悪では・・・」と思う内容ばかりです。

実際、グンタイアリが何百万匹も連なっている写真を見た夜は、大量のグンタイアリに家ごと襲われるという悪夢中の悪夢を見ました。

それでも、世界中には本当にいろいろな生き物がいるな、不思議な特徴を持っているなと、少しずつ危険生物に興味が出てきました。

が、子どもの危険生物への興味終了のカウントダウンは、着々と近づいているはずです。

この興味の時差は、永遠に埋まりそうにありません。

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