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140文字の連読小説③


番組のオープニングで、長谷川さんが読み上げる自作の小説。毎回140文字という制限の中、今年度から連読を続けてきていますが、そのストーリーもどうやら佳境に入ってきているようです。

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これまでに1話から10話、11話から20話までをそれぞれnoteの記事でも掲載してきました。​


今回は21話から30話までを掲載していきます。

【21話】

玄関のドアを開けて、勢いよく外の世界へと飛び出す。ミチコは半ば諦めたように、僕に手を掴まれながら一緒についてくる。見慣れた風景が目の前に広がり、いつもと変わらない街の様に見えるが、ただ違和感を覚える。人が誰もいないのだ。僕は構わずに、ミチコの手を引いたまま、目的地へと向かった。


【22話】

街を抜けて、さらに僕らは進んだ。辺りには何もない。何もないというのは野原だったり荒野という訳ではない、何も無いのだ。例えるなら、星の見えない夜空が、頭上ではなく目の前の空間に広がっている感覚だ。僕は構わず進む。少しづつ、タワーが近づいてくる。一本の針の様な無機質なそれが…


【23話】

ふと、針の先端が光ったように見えた。「痛い…!」と聞こえた、次の瞬間、力強くミチコを掴んでいる手が振り払われた。思わずミチコの方を振り返ると、ミチコは立ち止まり恐怖と憤りに満ちた表情を浮かべている。どうした?ミチコに歩み寄ろうとすると、ミチコは後退りする。「誰なの、あなた…」


【24話】

「え…?誰って…どうしたのミチコ?」「来ないで下さい!」彼女はスマホを取り出し、どこかに電話をかけた。「あ、助けて…変な人に連れて行かれそう…うん、わかった」ミチコが後退りしながら、僕から遠ざかっていく「そっちに行くね」ミチコが背を向ける「コウイチ…」最後にそう聞こえた気がした。


【25話】

何がなんだか分からぬまま、取り敢えずミチコは僕の元を去った。虚脱感に襲われながらも、足はタワーへと向かって行った。勝手に足だけが、機械的に動いている様な感覚だった。気がつくと、タワーの入り口と思われる無機質な扉の前に着いていた。間近で見ると細い円錐形でつるりとして光沢がある。


【26話】

昔のテレビ画面の砂嵐みたいな模様の奇妙な建物が、無感情に僕を見下ろす。見上げると先端はかなり高く感じられた。視線を戻す。扉には取手が無いがわずかな凹凸で扉である事を認識させた。警戒しながらも、手で触れてみる。すると手品の様に一瞬で扉が消え、そこに穴が空いた様に入り口が姿を現した。


【27話】

突然の事に呆気に取られながら、僕はタワーの中に一歩踏み出した。内部は殺風景だった。僕の心の中の様に、灰色で砂嵐の世界が細く狭いはずのタワーの中に広がっていた。何故か僕は不思議と戸惑う事無く、歩みを進めた。しばらく歩くと階段が現れた。灰色の階段は一段上がるごとに、次の段が現れた。


【28話】

何段、階段を登ったのだろうか。僕の足は疲れもしらずに、ひたすら上を目指した。色々な事を考えた、ミチコと過ごした日々、そして突然の別離。憤りも感じたが、それらの事柄は全て初めから決められていた様にも感じられた。何故なら、僕は全てを、あっけなく受け入れて進み続けているからだ。


【29話】

気がつくと、階段は消えて広い部屋に着いた。どこまでも広い空間で壁らしきものも無く、さらに天井も見えない。しかし屋上でもない。空も見えない。しばらく辺りを見回していると、目の前の空間に突如として映像が映し出された。しばし無機質な砂嵐映像が続いた後、画面が切り替わり、見知らぬ人が映る。


【30話】

「あなたを待っていました」「待ってた?」「はい」「何故です?」「説明しましょう。端的に言ってあなたはサンプルなのです」「え?サンプル…」「はい、あなたは寂しい人間のパートナーになるためのAI」「僕が?」「はい」「…で、僕はどうなるんですか?」「端的に言って」「…はい」「あなたは」


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