迷宮からうまれた「旅する土鍋」
あるとき土鍋をかかえてイタリアの広場に座ってまどろんでいたら、自分がどんどん小さくなって土鍋のなかに入りこんでしまった。かれこれ30年も時がながれた陶歴のなかで、うつわの迷宮にはいりこんだのは2回目だった。
1回目は30年前の学生時代、冷たいろくろ引きのうつわの中で水没しそうに慌てふためいていたが、2回目は妙に肝がすわっていた。
「このまま旅したい」そうそう、みなさんにこれを説明すると驚かれるのだが、うつわを成型するときは、ほとんど内側しか見ない。目をつむれば指でなぞった