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アウトドアでもハチの巣撤去の法的義務はあるのでしょうか?

半年ほど前、麻疹の抗体検査のついでに、長年の懸案となっていたハチの抗体検査をしてもらいました。

25年ほど前だと記憶しているのですが、折立~太郎平(テント泊)~黒部五郎岳を経て黒部五郎小舎で休憩をとり、その日の幕営を予定していた三俣山荘へ向かおうと、黒部五郎小舎を出発してすぐの登りに掛かったところ、疲労とザックの荷重もあったのでしょうか(当時は、テントなどはそこそこ軽量化されていたのですが、それでも、今ほど軽量化は進んでなく(なのか無駄なものを持っていいたのか不明ですが)、2~3泊程度のテント泊でもザックは20㎏以上だったと記憶しています。今は、同じくらいの装備で13~14㎏程度でパッキングしていますので随分軽量化が進んだものです。)、バランスを崩して草むらに手をつくような形になりました。
その瞬間、何かに刺されたような激痛が走り、しばらくたつと、少しずつ腫れてきました。
その日は、予定通り三俣山荘にテントを張ったのですが、手の甲の腫れは時間と共に酷くなり、翌朝も腫れは引いていませんでした。
そこから予定を変更して双六から新穂高温泉へ下山し、帰郷したのですが、しばらく腫れが残っていたような記憶があります。ただし、病院へは行きませんでした。

当時はあまり、気にしていなかったのですが、ここ10年くらい、歳と共に気になるようになり、ハチが多いコースは敬遠するようにしていました。
しかし、約4年前の6月末から7月初に、中房温泉~燕岳を経て幕営地として予定していた大天井へと向かっていたところ、次第にアブが増えていきました。特に大天井岳の手前のレリーフがあるコルへ下る手前の稜線あたりでは、手で払っても効果がないほど大量のアブが発生しており、顔を何箇所か刺された(かじられた?)気配がありました。
レリーフへの下りあたりからアブも少なくなり、気を取り直し、予定通り大天荘にテントを張りました。
しかし、その晩、耳に違和感をおぼえたことから、スマホで顔の写真をとって確認したところ、耳と瞼が赤く腫れあがっているのに驚きました。
気が削がれたこともあり、翌朝、予定を変更して、常念岳にも登らず、常念小屋から下山し、帰宅しました。
山から帰った翌朝、事務所近くの病院の皮膚科を受診したところ、医師から、アブよけにはイカリジが効くからといわれました。
早速、薬局でイカリジンの入ったスプレーを購入したのですが、さすがに自粛しなければと思い、1週間は山へ行かず、アブに刺された2週間後に多少の自粛から、近場の中央線沿線の低山の山頂でゆっくりすることとしました。
山頂で休憩中、また、耳に違和感をおぼえ、下山後、駅で電車を待つ間に見てみますと、やはり、耳が腫れていました。
腫れが引かなかったことから、月曜の朝一番で、同じ病院へ行ったところ、同じ医師がギョッとした顔で迎え、薬が効かなかったのかと聞いてきました。顛末を話したところ、あきれた顔をされたのを記憶しています。

このようなこともあり、機会あれば抗体検査をし、エピペンを処方してもらおうと考えていたこともあり、半年前に検査を受けたのです。
幸いなことにハチの抗体はできておらず、安心して山が楽しめそうです。

ところで、近時はキャンプブームで、厳寒期でも家族連れで出掛ける家族もいるようです。
キャンプ場は場所柄、虫も多く生息していますが、キャンプ施設内に自然のハチの巣があった場合、キャンプ場の管理者には、そのハチの巣を撤去する法的義務はあるのでしょうか。
キャンパーがハチに刺された場合、何らかの法的責任を負うことがあるのでしょうか。
このような点が問題となった裁判としては、キャンプ場に設置されていた吊り橋に巣を作っていたハチにキャンパーが刺されたという事故の裁判があります。
この事故では、キャンプ場の管理者が地方公共団体であったこともあり、裁判にまで発展しています。裁判では、吊り橋の管理の瑕疵が認められ、国家賠償法上の損害賠償義務が認定されています。
事務所のホームページにこの裁判に関する下記のブログ記事も掲載しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。

地方公共団体の運営資金の原資は基本的には税金であることから、前例のない/少ない事故に関し、任意で損害賠償に応じるということは中々難しいのだと思います。
前例主義、責任を感じていないといって責められることも多いのですが、国・地方公共団体の法的な根拠のない支出は税金の不正支出へとつながるわけですから、基本的には許されるものではありません。
このこともあり、事故の被害者への損害賠償に関しても、裁判手続きで公的に損害賠償義務を認定してもらい、支払うということになるわけです。
国・あるいは地方公共団体に責任がある事故で、1審敗訴判決で控訴断念、あるいは1審判決後の控訴審での和解が散見されるのは、そのような事情もあるのだと思います(私は、国あるいは地方公共団体等の法律業務に携わったことがないので、あくまで個人的な見解に過ぎませんが・・・)。

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