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【百線一抄】027■西方のいずみをつなぐ橙の道ー肥薩おれんじ鉄道

身軽なディーゼルカーが架線の下をトコトコ走る、ユニークなロー
カル線が九州にある。八代と川内を結ぶ肥薩おれんじ鉄道だ。九州
の第三セクター路線としては新参の類で、九州新幹線の部分開業で
博多口よりも先に鹿児島側ができたことによって誕生した。川内か
ら南と八代から北は鹿児島本線のままで残り、現在に至っている。

湾岸をなぞるように鹿児島をめざす鹿児島本線は、主要幹線として
九州西側の輸送を長らく担ってきた。東京から急行列車でひた走っ
て30時間、ブルートレインでまる1日かけて西鹿児島へ至る旅は
長旅の代表格だった。平成の代に入り段階的に設備改良や速度向上
が図られたものの、博多ー西鹿児島間3時間半が精一杯。政府によ
る整備新幹線の推進を受けて、時短効果の大きい南部の建設を進め
る方向で計画が練られた。後に北部の方も追って工事が始まった。

今までにない形態での整備新幹線開業は、他地域の後進に対して力
強いメッセージを放った。在来線との接続の在り方に工夫を凝らし
短い時間で乗り継ぎできるようにしたり、並行在来線部分での需要
が少ないことを受けて、高価な電車を保有せずに気動車で旅客輸送
は対応できる。電化施設は貨物輸送のみで活用する方針もそうだ。

1社で県境をまたいで運営する営業形態は九州独特のもので、いく
つもの会社が県境ごとに介在する北陸地方や東北地方とは異なる。
見た目ではほぼ半分ずつで熊本県と鹿児島県を走る路線となるが、
拠点となる出水で数本の乗継があるものも合わせると、終日で八代
と川内を乗り通すことができるダイヤになっている。貨物列車の設
定もそれなりにあり、昼夜問わず線内を通り抜けていく。土休日は
快速列車も走り、多様な需要に対応しているようすが垣間見える。

この路線に乗車したときの見どころは、何といっても車窓の西側に
拡がる東シナ海であろう。あちこちの区間で一気に拡がる海原は、
新幹線ではあまり楽しめない絶景だ。それを特別な空間で楽しめる
観光列車「おれんじ食堂」は食事と旅を味わう特別列車の先駆であ
る。列車の運行時間帯によって用意される食材や趣向も様々で、ぶ
らり旅のハイライトシーンに組み入れるのもいいだろう。暮れなず
む海辺を眺めながらのディナーは、格別なひとときになるはずだ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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