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【百線一抄】030■かなだからのきっぷで時代をつなぐー平成筑豊鉄道

新たなスタートを切るにあたって名前を付ける。それが時流のめぐ
りあわせと絡み合うと、時として絶妙なネーミングが浮かぶことも
あるだろう。第三セクターの平成筑豊鉄道は、まさしく平成の幕開
けとともに立ち上がった会社だ。1989年(平成元年)からJR
の3線を引き継ぎ、地域の足として根付き30年以上が経過した。

突き進んでいった先が行き止まりという線が多い三セク路線だが、
歴史的な経緯によって接続路線が多い恩恵を受け、総ての終端駅で
何かしらの別の路線と乗り換えられる会社は稀有である。本社を置
く金田は伊田線と糸田線の接続駅で、伊田線は田川伊田で田川線と
南側で代行バスの運行が続く日田彦山線と並ぶ。糸田線は進路を変
えて田川後藤寺へ向かい、日田彦山線と後藤寺線に接続する。東へ
進路をとり、行橋に到着するとここで日豊本線に乗り換えできる。

湾岸へ向けて石炭を運ぶ路線として建設された各線は、比較的早期
から民間によって開業した。明治末期の鉄道国有化によって買収さ
れたあとも各地で延伸が続き、何度か路線名を組み替えるという紆
余曲折を経て、炭田の衰退とともに輸送量の減少をたどる。短い距
離の盲腸線はことごとく廃止となり、幹となる路線だけが残った。

空きの大きい駅間をとことん埋めるように、転換当初から新規駅を
数多く設置した。36駅ある現在の駅のうち、半分以上が転換後に
追加されたものとなっており、大半の駅が1~2キロ以内にある。
気になるダイヤについても直方側で1時間あたり2本、それ以外の
場面においても大半の時間帯で1時間に1本ある。平日の朝夕には
間隔を埋めるように増発も行われており、10数両という少ない車
両数ではあるものの、効率的な運用が組まれていることが窺える。

海の方に着目すると、関門海峡沿いの門司港レトロ観光線の存在に
気づく。これも平成筑豊鉄道の路線である。トロッコ列車に乗って
門司港駅隣接の九州鉄道記念館から関門海峡めかりまで、約10分
のスロー旅が楽しめる。勢いよく平成最初にお目見えした鉄道会社
は大正ロマンと昭和の運炭路線、そして令和最初の新たな開業駅と
なる令和コスタ行橋を加えた。駅名を眺めるとシンプルなものや会
社名が追加されている駅もある。地域の表情も見える路線なのだ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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