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【百線一抄】012■物語は夜に紡がれるーIGRいわて銀河鉄道

IGRいわて銀河鉄道。会社名の頭に付く略号も、会社名にそのま
ま付いたように見えるが、実は「G」にはギャラクシーの頭文字が
使われているところに奥ゆかしさが垣間見える。平成に入り東北新
幹線が北進するとともに並行在来線となった東北本線を引き継ぎ、
全線を走り抜ける貨物列車とともに銀と青帯の電車が走り始めた。

下り電車に乗って北を目指す。好摩までは時々JRの気動車の列車
も戦列に加わる時間帯がある。大館に向かう花輪線で、別の会社に
乗り入れるかたちになっているが、分割前から変化はない。この区
間は人口も比較的多く、朝夕は両線合わせてかなりの高い頻度で利
用者を運ぶ。好摩以北は本数が減り、県境手前の金田一温泉までで
引き返す列車が多勢を占める。県境を越えた先の目時が境界駅で、
地元の人のほかには用がない場所だ。運転士や車掌の交代もない。

普通列車ばかりとなった現在と異なり、新幹線が八戸までだった時
期は夜行列車も複数走っていた。上野と北海道とを結ぶ「北斗星」
と「カシオペア」が通過することで運賃と料金等が入るとともに、
地元以外の人々に対し鉄道会社の存在を知らせることができる、重
要な役割をも果たしていた。目時以北の青い森鉄道も同様である。

惜しくもこれらの列車は過去のものとなったが、数多くの貨物列車
とともに、稀に全線を通り抜けていく特別な列車もある。なかなか
目にすることは少ないが、ひとたび走ったら注目度が抜群に高いあ
の列車である。クルーズトレイン「四季島」だ。時として北海道へ
姿を見せることもある列車なので、必然的に盛岡や八戸などで雄姿
が楽しめる。時期によっては夜中の通過となるのだが、時機が合っ
たらぜひとも一度は現地で見てみたい列車の一つであるといえる。

渋民は石川啄木ゆかりの地、会社名の由来は宮沢賢治と、気がつけ
ば案外と歴史や文化などにも縁がある地域を走る路線であることを
示す路線だ。金田一温泉や、奥中山高原など温泉も沿線にあり、も
とより通り抜けるだけとするにはもったいない。北東北エリアの風
土を楽しむのであれば、鉄道路線の中では比較的組み込みやすい一
面も持ち合わせている。周辺の観光地と組み合わせ、ツウな旅を嗜
むのもよい。まだまだ知られざる魅力が隠されている路線なのだ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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