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【百線一抄】024■川面にうかぶ心の錦ー錦川鉄道

国鉄時代に計画された路線の中で、途中の駅まで建設が進んだもの
の、時代の移り変わりや財政難などで、惜しくも建設が中止となっ
た路線が各地に点在している。人が少ない山間部を越えて幹線と結
び、大都市間を結ぶ通過列車が通過するような路線ならば、利用者
は開通前から見込めるが、そうでない路線は見限られてしまった。

抜け道となる路線としての可能性があったからこそ、戦後から着工
された例として国鉄岩日線を挙げる。山陽本線の岩国から分岐して
もとはこちらが山陽本線だったという歴史を持つ岩徳線を2駅進む
と川西駅という小さな駅に着く。ここから少し進んでさらに北へ入
りこみ、錦川の右岸に沿って線路が伸びていく。左岸は国道が張り
合うように並行しているが、線路の方はところどころでさらに内陸
へ入りこんで距離を縮めている。開業時期が新しいこともあって、
随所にトンネルを設けることで地形の割に走りやすい路線だった。

ただ、岩日線も現在の終点となる錦町より奥の需要が見込めず、や
むなく計画凍結となってしまった。一部区間では路盤やトンネルの
建設が進んでいたものの、それも止まってしまった。人口の少ない
山あいをなぞる路線ゆえとは言えども、好転しない厳しい状況のま
まで廃止対象となり、第三セクター錦川鉄道への転換が決まった。

もとより地元での利用者意識が高めの路線であったことと、凍結で
未成線となっていた施設群を観光エリアにテコ入れする取り組みも
地道に進めてきたことが、一定の観光客の誘致に繋がっている。道
の駅までのアクセスや沿線のバス路線の再編などとも連携し、地域
にとって重要な交通インフラとしての役割も担っている。トンネル
施設については、「とことこトレイン」というゴムタイヤ遊覧車が
季節限定で運行され、これも知る人ぞ知る観光拠点となっている。

川西駅から1駅進むと新幹線をくぐる。清流新岩国という接続駅は
御庄と名乗っていた時期が長かった。国鉄時代は乗り換え案内にも
載っていなかったという不遇もあった。南河内を出たあたりから、
窓の外に錦川が見えてくる。20分ほど走ると新しい駅が見えるの
に停まらない。清流みはらし駅という臨時駅で、特定列車だけが停
まるというユニークな駅だ。川縁にホームだけがあって、道がどこ
にもないので、歩きでは近づけない。旅の達人よ、ぜひご覧じろ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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