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【百線一抄】005■遠江の鹿は何思うー天竜浜名湖鉄道

尾張名古屋は城でもつ、という。その名古屋から東に歩を進めて行
くと岡崎、豊橋と城下町の名前が続く。少し進んで県境を越えると
やがて新所原にたどり着く。ここから分岐して内陸の方へと少し大
回りするような感じで東を目指し、天竜川を越えて海側へ寄り掛川
に至る第三セクター路線がある。天竜浜名湖鉄道天竜浜名湖線だ。

もとは国鉄二俣線で、昭和初期における東海道本線のバイパス役を
見込んで建設された路線だった。海岸部を避けて通る経路を確保し
実際に終戦直前、地震や空襲があった際に所期の役割を果たして、
敷設された目的通り活躍している。そんな経緯を持つ路線なので、
短い編成の列車が走る途上に規模の大きな駅や施設が残っている。
割と本数も多い路線ということもあり、寄り道感覚で列車を降りて
景色を楽しみ近辺を散策、また次の列車に乗るというのもありだ。

何はなくとも、ハイライトスポットにはまず浜名湖を挙げておかな
くてはならぬ。新所原を発車して3駅も過ぎると、進行方向右手の
車窓に何度も近く遠くと湖畔をなぞっていく。海岸部を抜けゆく東
海道本線や新幹線ではわずかな時間しか楽しむことができない遠江
の絶景は、ここ天竜浜名湖線だと存分に味わうことができるのだ。

このような味わいを得られる区間は結構長く、知波田駅から西気賀
駅まで30分ほど楽しめる。さらに30分ほど乗ると、路線の二大
拠点とも言える西鹿島、天竜二俣の両駅に到着する。西鹿島駅は多
くの利用客が浜松を目指す遠州鉄道と接続し、天竜二俣駅はホーム
と駅舎、扇形庫に転車台など多数が登録有形文化財となっている。
機会があれば、施設の見学なども対応しているので、時間を取って
存分に歴史ある空間を満喫してみるのもよいのではないだろうか。

あとは沿線で栽培・収穫されている農作物を活かした食材や品物を
気軽にファーマーズショップで買い求めたり、駅舎内にある店舗で
は地産地消を基本としたグルメを楽しむことができる。沿線の複数
箇所でこういった取り組みが行われており、路線の長さもあって、
なかなか1日そこらでは味わい尽くせない楽しさがそこにある。歴
史を辿るもよし、沿線風景を楽しむもよし。乗り降りしての食べ歩
きもよし。全線乗り通して約2時間の路線。とことん乗り歩こう。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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