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2018.11.17 モンテディオ山形 vs 大分トリニータ @NDソフトスタジアム山形 〜最低の自業自得と、最高の他力本願〜

新幹線の乗換駅、大宮駅のエキナカで、モーニングのお得価格でカニチャーハンを食べる事になったのは、決して意図した訳ではありません。新幹線に乗り遅れただけです。9時出発のゆっくりとした予定に、完全に油断してしまいました。今日が一年の総決算、大分トリニータがJ1に昇格するかどうかの大一番に赴くというには、あまりにも不注意、あまりにもお粗末。

それでも、本来はスタジアムグルメを堪能しようと、充分に試合前の時間を取っておいたおかげで、1本後の後続に乗っても、試合開始には問題なくスタジアムに到着できる筈でした。しかし、そんな不届き者に、天の神様もお怒りになるのも無理はありません。1時間遅れで到着した天童駅は、まさかの通り雨。本当に今年は試合観戦が雨に泣かされ通しです。しかも、タクシーが駅前に一台も見当たらない。試合開催と関係するのかしないのか、駅前常駐のタクシーが全て出払っているらしく、戻ってくる気配もありません。どうしようと駅前をウロウロしている間にも、時間はどんどん過ぎて行きます。

歩くしかない!そう決心したときには、試合開始まで50分を切っていました。天童駅からNDスタまではグーグル先生がおっしゃるには40分強。ギリギリです。雨がまだ残る中を、可能な限り、早く、早く。

こちらが証拠写真。時計の示す時間に御注目。

分かりやすい道にも助けられ、試合開始の10分前にNDスタに到着。J2でも屈指のスタジアムグルメが並ぶ屋台を泣く泣く素通りして、アウエー側自由席へ。この日は山形スタグルの名物マスコット、ペッカくんの、販売手伝いからの卒業というショッキングなニュースも届いておりました。

800人以上が駆けつけたと言うサポーターが、気合を入れて選手を迎え入れます。

この試合が始まる時点で、1位松本との勝ち点差は1、3位町田と同勝ち点、4位横浜FCとは勝ち点差3という大激戦。勝てば文句無しに昇格決定ですが、引き分け、敗けの場合は、他チームの勝敗によっては、今年からはJ1チームも絡んだ、苦闘必死のプレーオフに回されてしまいます。

今年はいまいち波に乗り切れず、昇格争いにほとんど絡まずに中位に沈んだ山形ですが、天皇杯ではJ1連覇を成し遂げた川崎を、完璧なセットプレーとカウンターで撃破。東北ダービーとなるベガルタ仙台との準決勝を間近に控え、モチベーションは高く保っています。

試合開始直前、気合を入れる円陣から、ダッシュ!

試合開始直後から、山形は大分の守備陣に猛然とハイプレスを仕掛けてきます。セットプレーで痛い星を落とすことが続いている大分、プレスに負けて自軍深くで相手にボールを渡すわけには行きません。横方法にパスを巡らして相手を振り回し、サイドに起点を作って、相手のプレスを掻い潜ろうと試みます。

しかし、序盤の大分の攻撃はなかなか思うように行きません。ハイプレスを抜けられても帰陣が早い、鍛え上げられた山形の守備の完成度の高さに加え、この日の天候に、大分は適応していない印象がありました。試合開始直前まで降った雨が影響したのか、序盤には足を滑らせる選手が散見。加えてピッチレベルでは気にならないが上空ではかなり強く吹いている不規則な風が、相手ライン裏を狙う長めのキックの精度を、大きく狂わせます。

それでも、先制したのは大分でした。右サイドをワンツーで絡めて突破、前線の選手が一斉にゴール前に流れ込むと、最後に決めたのは逆サイドを駆け上がった星選手。アウエー千葉戦での3点目を彷彿とさせる、リーグ終盤に編成された布陣の、得意の攻撃パターンが見事に決まりました。

先制された山形ですが、動じることなくハイプレスを続行。ボールを奪うなり得意のカウンターを決めたいのですが、そこは大分が、中盤のパスの出所に強烈なプレスを加え、FW陣に対してはしっかりとマーク。3バックの部分までボールを下げさせて、山形を本来の形ではない遅攻へと押し込みます。ボールを取り戻すと大分は3バックとキーパーでのパス回しからチャンスを伺う、均衡した展開で前半は推移して行きます。

ハーフタイムのディーオくん。なぜか大分サポと大きなそぶりで会話を楽しむ様子も。他会場の途中経過も場内アナウンスされ、大分のみならず、山形のサポーターもどこか落ち着かない空気が漂います。

落ち着かないのは、気温のせいもあったでしょうか。日が傾いてスタンドが陰った途端に、忍び寄ってきた冷たい空気は、関東ではまだまだ感じることがないものでした。ジッとしていると膝が笑い出してしまうほどの冷気です。私は後半、ずっと立ち上がったまま、体を揺らして手拍子応援を続けておりました。おおよそ自分のキャラじゃありませんが、そうでもしないと耐えきれない。

後半直後の大分の攻勢を切り抜けた山形は、ポゼッション率を上げてより積極的に攻撃に出ます。前半同様にそれを受け流し、追加点を狙う大分ですが、次第に守備陣と攻撃陣の距離が離れだして、カウンターの頻度は下がり、山形がポゼッションする位置が次第に高まって、ペナルティエリア付近で、危険なシーンを作られるようになります。

大分は交代で古手川、川西と、中盤の選手を続けて投入。中盤でボールをキープできる選手を加えることで、ポゼッションの回復と、相手を自軍ゴールから遠ざけようと試みます。これは一定の効果をもたらし、終盤に相手に疲労の気配が見える共に大分の攻撃の場面も戻ってきて、試合が安定し始めたように見えました。

そしてロスタイムを迎えようとする頃には、大分サポーターのボルテージは最高潮に達し、積極的に応援に参加しない層の人たちも手拍子に声援に加わり、目の前に迎えた栄光の瞬間を待ち構えていました。

しかし、その空気を一変させる、山形の同点ゴール。守備を固めたゴール前の大分守備陣の前でなんとか掻い潜ろうとするパスと、弾かれそうになる場面で押し返す為のミドルシュート。後半に幾度も繰り返しされたものと大差なく、その全てを跳ね除けていた筈の攻撃が、その時だけは大分の守備陣を潜り抜け、ゴールへと突き刺さりました。

あれほど盛り上がっていた大分の応援のボルテージは急激に落ち込みます。周囲の多くの人がスマホを手に持ち、他会場の経過を見ようと必死になります。大分ベンチはFWの林を投入。その交代の意味が、《交代時間を浪費しようが、ここで攻撃をし、勝ち越さなくてはいけない》だとしたら…。悪い想像に囚われた直後、試合終了の笛が鳴りました。

隣に座っていたお子さん連れのお母さんが、「大丈夫ですよね?昇格しますよね?」と聞いてきました。「他会場は引き分けているんです、このままだと大丈夫な筈なんです」

自分もスマホで確認しようとしますが、一斉に皆が確認しているためにローディングができません。大分の選手、サポーターの必死な思いを察して、山形のサポータも押し黙り、最終節の挨拶の準備も止まっています。

一部のサポータから歓声が上がりました。決まったのか?周囲のサポーターがざわついて、その直後、ベンチ近くに集まっていた選手からも叫び声が上がりました。

町田ーV東京が引き分けのまま試合終了。この瞬間、大分のJ1昇格が決定しました!

昇格決定の瞬間です。

全く実感がありませんでした。これだけ激しいJ2の一年間、最後に勝つことをせずに昇格できるとは思っていませんでした。少しでも実感を得ようと、大声をあげ、ガッツポーズをしても、それでも実感がありません。

サポーターに元にやってくる選手たち。

最後に貫禄たっぷりにニータンがやってきました。

盛り上がる選手、サポーターの皆さん。

思えば実感の乏しさは、寒さにやられていたせいかもしれません。この後、スタジアムを後に、宿の部屋にたどり着いた後は、しばらく身動きが取れませんでした。なんとか回復しても夕食のお店を探す気力も乏しく、20年前のセンスのファミレスで、20年前のレベルの定食を食べるという、食の宝庫、山形ではあまりにも勿体無い行動をとるのが精一杯という有様でした。本当にこの日1日を旅行として捉えるならば、稀に見る大失敗。やることなすこと全てダメ、というより他はありません。それも全て、自分の不注意と準備不足が原因という体たらくです。

それでも、望むべきものはやってきました。一年間、いやそれ以上に長い間、努力に次ぐ努力を重ねてきた人たちに相応しい結末です。実感の乏しさの正体は、情けない自分と、大分トリニータを取り巻く多くの人たちとの、落差ゆえなのかもしれません。

片野坂監督の胴上げです。

長く続く大分の歓喜の間、山形のスタッフとサポーターの人たちはずっと見守るように待っていてくださいました。冷たい風の吹くなか、アウエーチームの喜ぶ様子をずっと待つというのは辛い部分もあったに違いなく、本当に感謝するしかありません。

サポータに向けて挨拶をする片野坂監督。そのガラガラの声にサポーターは沸き立ち、「飴舐めますかー?」という声が飛びました。

さあ来年はJ1です。大分の攻撃サッカーがどれほど通用するのか、現在の実力では難しいかもしれない。そもそも現在の戦力を維持できるかどうかもわからない。しかし、片野坂監督の作る、大分のサポーターが応援するチームを見たい。その思いは高まるばかりです。大いなる期待を持って、そして我が身の迂闊さを深く深く反省しつつ、来年の開幕を迎えたいと思います。

最後に社長が挨拶をされて行きました。

翌日の山形観光編へと続く。

更新は不定期ですので、気長に待っていただけると幸いです。Jリーグのサポーターの方はどこのチームでも大歓迎。煽り合いではなくゆるいノリで楽しめたらいいなと思っています。