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大荒れの箱根駅伝予選会

いやぁ、びっくりしました。生では見れなくて情報遮断してチェックしたので、何が起こったのか、しばらく理解できませんでした。色々と調べたり分析している人の記事を読んだりして、なんとか頭が整理されてきたので、感想を記そうと思います。

神奈川大学、まさかの予選落ち

まず、一番の衝撃は神奈川大学ですね。神奈川大学は予選会巧者で、しかも去年の本大会で惜しくもシード落ちも しっかり戦えていましたし、何より、箱根予選会より厳しいとされる全日本大学駅伝の関東予選会で出走8人全員が好走してトップ通過! 戦力も充実していて、最も予選落ちの確率が低い大学ではないかと目されていました。それがまさかの予選落ち。いったい何が起こったのでしょう。
まず、今年のエースの一人だった巻田選手がエントリー漏れ。ただ他の有力選手は揃ってエントリーされていたので、問題は少ないと思われていました。しかし、当日さらに今年の大黒柱である山﨑選手が出走リスト漏れ。(これ知らずにチェックしていたので予選落ちが理解できなかったです。)全日本大学駅伝予選の最終組の二人(つまり今年のエース2本柱)が共に外れる、という事態に少なからずチームの動揺があったのかもしれません。
だとしても、これまでもっと危ないと言われていた時も安定した走りで予選会を突破していた神奈川大学、いったい何があったのでしょうか?

箱根予選会の戦いを熟知していた神奈川大は、得意とする「集団走」を駆使して、これまで何度も危機を脱出してきた。だが、今回は「5㎞でバラバラだった。今日は完全に崩れた」と大後監督はうなだれた。

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今回のレースは、序盤、留学生集団が牽制し合って超スローペースとなり、そのため、キロ3分前後の部分は大混雑状態だったようです。そのため同じ大学で固まって走る事ができず、次第に「味方」を見失ってしまい集団走がバラバラになってしまったようです。
チーム状態が悪く、集団走も機能せず遅れる選手が続出、エース不在で「稼ぐ」選手が少なかった事で、こういう波乱が起こった、という事みたいですね。
しかし、予選会って恐ろしいです。ホントに、過酷な戦いになっているんですね。

予選通過校の勝因は?

予選通過校について、1校ずつ簡単にコメントします(長くなる大学もいくつかありますが。)

1位:大東文化大学

さすがにトップは予想外でしたが、事前稿の通り、前評判は高く上位候補には挙がっていました。なので驚きはなかったですね。
留学生のワンジル選手が全体5位の大激走、大きな貯金を作りました。まずこれが大きくて、日本人の主力の大野、久保田選手が63分台前半でしっかりまとめ、下位の選手もお大崩れせずに力を出し切りました(木山選手は、もうちょっと走れそうですが)。
真名子監督は名監督になるかもしれないですね。

2位:明治大学

トップ候補として最も名前が挙がっていた明治大学もしっかり上位で。富田、児玉、両エースは順当に上位で走り貯金を稼ぎました。ただ、それに次ぐ選手たる櫛田選手は序盤で転倒があったそうで上位に行けず。

レースはたびたびアクシデントに見舞われた。2km付近では主力の1人、櫛田佳希(4年) が転倒して遅れをとり、肩や脚に擦り傷を作りながらレースを進めた。

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転倒の影響を様子見ながら慎重にレースを進めた結果だったようです。その証拠に

20キロ以降のラストでは全体トップのタイム。恐らく相当に余裕が残っていたんでしょうね。失速の許されない予選会では慎重になるのはしょうがないでしょう。櫛田選手の力からすれば、アクシデントがなければ1分以上は速く走れたでしょうから、それならトップ通過していたと思われます。
と言っても、明治も万全だったとは言い難い結果だったようで。特に、去年の予選会でチームトップだった加藤選手がチーム9番目と力を出しきれませんでした。シード校と戦うには彼の復調は必須だと思われます。
でも、去年は予選会が完璧でも本戦は奮わず、チームのピークが予選会にきてしまったようでした。それを考えると、予選会で良すぎるのも考えものなので、これからどう本番に調整するか、だと思います。

3位:城西大学

個人的に最もサプライズは城西でした。さすがに3位とは、びっくりしました。いや、櫛部監督の手腕はすごいとは思っていますが。
その原動力は、今年入った留学生のキムタイ選手とルーキー斎藤選手の両1年生。新戦力が二人も大活躍してくれると大きいです。しかし、その貯金を使わずに下位選手の崩れも小さい部類の大学(日体大の次くらい)でした。

4位:早稲田大学

早稲田もまぁ順当でしたが、細かく見ると危なっかしい通過だったようです。
まず、エース井川選手は力を出し切り、佐藤選手が見事な走りでチーム2番手、ほどなく鈴木選手も続き、上位はしっかり走れています。
ただ、下位はかなり崩れていて、10番手は66分台もかかっています。上位で走っていたルーキー山口選手にアクシデントがあったらしく、それが原因なのでしょうがない、との事ですが。あと主力として活躍が期待される菖蒲も全体257位とらしくない走りでした。ラップタイムを見ると最初からかなりゆっくり走っていて、そもそも万全ではなかったのではないかと思われます。こういうのと見ると、本戦に向けて不安の方が大きくなる結果だと思うのですが。
早稲田は中心選手の力量はトップ校と遜色ないくらいあるのですが、層が薄くそれに続く選手の力がぐっと落ちてしまいます。なので主力選手でメンバー外になったり力を出しきれない選手が出ると影響が大きくなるんですよね。

5位:日本体育大学

今回は厳しいと思ったんですよ。大エース藤本選手のエントリー漏れは、全大学中最も影響が大きかったはずです。というのは藤本選手は間違いなく大学トップクラスの実力を持つ選手で、しかも日体大の中では、かなり抜けた存在。その影響力は非常に大きいでしょう。
しかも大エースだけでなく、主力級も数人がエントリ漏れ。台所事情は非常に厳しかったハズです。
しかし、見事な集団走で、その危機を乗り切りました。集団走が最後までちゃんと機能したのは日体大だけだったようです。神奈川大のところで述べたように激混みで固まって走るのが難しいところ、日体大は最初かなり抑えて入り、混雑を上手く避けられたようです。そのままほぼ固まって走り、終盤に、抑えて入った分の力を爆発させます。15キロ以降のタイムでは全体の1位! 素晴らしい戦い方だったと思います。
箱根に向けては、大エース藤本選手の復帰は必須です。ただ、これだけの選手がハーフをちゃんと走れたので、ハーフ距離の選手層には心配がなくなりました。往路を上手く乗り切れれば復路はかなり戦えるのではないでしょうか。

6位:立教大学

一番ニュースとなっているのが立教大学の55年ぶりの復活でしょう。ただ、強化の始まった3年前からはシード校に負けないほどのレベルの選手が入学していましたので、そういう選手が3年分溜まった結果だと言えるように思います。
ここは集団走はせずに個々の力で戦う方針で、正に個の力を付けての正面突破でした。
さすがにまだシード校との実力差はあるように思えますが、走った全員が3年生以下の若いチーム。目標の前倒しで箱根駅伝の大舞台を経験できるのは大きいでしょう。その経験から大学トップレベルの選手が何人育ってくるでしょうか。
(でもチームトップの國安選手は日本人ルーキートップ。大学トップクラスに成長する可能性があるでしょう。)

7位:山梨学院大学

山梨も通過有力と予想されていた大学ではありました。でも、細かく見ると、ここもかなりヤバかった。
大きかったのは新留学生ムトゥク選手の大激走。全体4位と大きな貯金を使います。また北村選手が全体18位と素晴らしい結果、日本人エース木山選手も41位とまとめました。
しかし、下位の選手は大崩れ。通過校では最も崩れた大学でした。66分前後の選手が4人も居て、ムトゥク貯金のおかげでなんとか通過できたという感じでしょう。

8位:専修大学

専修大はなんと言っても木村選手でしょう。日本人トップの大激走。大きく貯金できなかった留学生キサイヤ選手に代わり大きく貯金を作り、チームを救いました。

木村選手、良い選手ですよね。専修ファンからすれば神様みたいな存在じゃないでしょうか。
専修大学は、3人良い選手が居ますので、その3人が揃って良い状態で正月を迎える事ができたなら、前半は見せ場を作る可能性はあると思います。シードは? うーん、さすがにまだ厳しいんじゃないでしょうか。

9位:東海大学

東海大学がこの位置というのはかなり不本意でしょう。しかし、事前稿で指摘していたように、不安がなかった訳ではありません。なので、通って良かったと言うべきでしょう。
エース石原選手の失速は、まだハーフの距離で留学生選手と互角の激走をするまでの走り込みができていない、という事じゃないかと思います。

さすがにかなり長期間走れてなかったし、まだ不安がない訳じゃないでしょうから練習を抑えるように指示しているとの事ですし。でも、そうなると両角監督の見立ての甘さが気になります。
それ以外も、65分台が4人と崩れてしまってるのが危なかったです。入田選手や川上選手といった実績ある選手も失速していて、かなりヤバいです。
やはり、主力級選手が何人もエントリー漏れしていて、チームとして悪い流れになっていたように思います。そういう意味で、エントリー漏れ選手の復帰も含め、大幅な立て直しが必要です。
シード校が最も恐れる戦力を持つのは東海大学でしょう。スーパーエースも居て、山のエースも居て、選手層もある程度厚い。箱根で上に行くために必要な一通りのものが揃っている数少ない大学です。そういう意味でも頑張ってもらいたいなと思います。

10位:国士舘大学

2年連続10位での通過。非常にしぶといですね。
ただ、前評判の高さの割に、個人的には危ないのではと思っていました。
というのは、去年まではヴィンセント選手という高いレベルで安定している大エースが居て、彼が大きな貯金を必ず作ってくれていました。新しい留学生にはそこまでの期待ができる訳ではないので、お得意の集団走をかなり高精度で成立させる必要がありました。
実際のレースでは、集団走が途中で崩れて結構な人数を取りこぼし、下位はかなりヤバい状況でした。しかし、ここも日体大と同様に抑えて入る事で前半は集団層を保ち、7番目の選手までは崩さずに走る事ができました。崩れなかった選手の多さでなんとか神奈川大に競り勝った、といった事のようです。

シード落ち校について他にいくつか

中央学院大学は、ちょっと悪い流れに入ってしまってるようですね。主力級のエントリー漏れも目立っていましたし、エースも失速、集団走も上手くいかず。今回はコースが従来の厳しいコースに戻った事もあり、崩れた大学も多かったのですが、これだけ失敗があるといくら層の厚い中学でも厳しいですね。
それより気になったのは

中央学大もエントリーの段階で主力3人(武川流以名、吉本光希、伊藤秀虎)が外れていた。しかし、昨年も同じような状況で予選会を突破していただけに、川崎勇二監督は「落ちると思ってなかった」と放心状態だった。

箱根駅伝予選会に新しい時代の流れ…神奈川大と中央学大が予選落ち波乱の中で立大が〝サプライズ復帰〟を果たした理由とは?

川崎監督が楽観的すぎるんですよね。中学は通過予想では挙げる大学は多かったのですが、「まさか落ちるとは」と言えるほど余裕があるとは考えられていなかったと思います。私の事前稿でもボーダー校に入っていましたし。そう言う意味では周囲の見立てより楽観的すぎたのでは、と。指揮官の予選落ちへの危機感が薄かったのではないでしょうか。
駿河台は、チーム中堅の小泉、新山、永井選手が軒並み失速すると厳しいです。この辺りの選手はしっかりまとめた上で、どれだけ経験の少ない選手たちを崩れずに走らせられるか、の勝負だった訳で、その前提が崩れるとどうしようもなかったでしょう。元々、層の厚い大学ではなかったですし。主力は4年生が多いので、また一からチームの作り直しになりますね。
あとは筑波。エース岩佐選手を欠きながら、福谷選手が全体15位の好走。毎年必ず上位に誰かしら送り込んでいるのはさすがです。ただ筑波はここ数年、ハーフをしっかり走る選手を10人揃えるという選手層のところで苦戦しています。伝統校の箱根復帰という大事を成し遂げてしまい、チーム内の目的意識にバラツキが出ているのかもしれないですね。弘山監督は大学駅伝界一の名監督だと私は思っているので、頑張ってほしいです。

2023年の箱根はどうなる?

2023年の箱根駅伝の出場校が決まりました。順位予想は、もっと先にやるとして、予選会から本大会がこうなるのでは、と考えられる事を。

2区がさらに高レベルの激戦になる

近年、箱根駅伝の高速化はすごいことになっていますが、特に2区のレベルアップは激しいです。一昔前なら区間賞タイムだった67分台・68分切りが98回は12人になりました。
それで、今回の予選通過校は、高いレベルの留学生が居るチームがさらに増えます。その留学生たちは恐らく2区に投入されるはずです。日本人のスーパーエース達のレベルアップも激しいですし、68分切りランナーがさらに増えそうです。67分切り(今年は4人)も増えそうですね。
そこまでのレベルになってしまうと、そのレベルのエースがいない大学は、2区で大きく遅れをとってしまう事になります。駅伝は流れが重要なので、前半で大きく遅れをとると後続のランナーが力を出しきれなくなりそうですし、挽回が非常に難しくなります。2区で上位争いどころかシード争いからも脱落しかねません。それにどう対策するかが大きな課題となります。
また、それだけレベルが上がってしまうと、2区で差がつきにくくなり、2区の留学生やスーパーエースでリードする戦略が成立しにくくなり、戦略の練り直しが必要となるでしょう。
とにかく、恐ろしい大会になってきていますね。

上位争い、シード争いに加わる大学が早い段階から絞られそう

まず、シード校が非常に強いという事があります。その強いシード校に、一度予選会でピークを作ってしまっている予選会校が互角に戦うのが大変な事である、というのが第一のポイントです。
また、上で書いた2区の件など、早い段階から厳しい篩い落としが起こるサバイバル戦になるので、上位争い、シード争いに加わる事ができる大学が早い段階で絞られてしまうのではないか、と思います。
こう考えるのは、今回の予選会では下位層が崩れてしまった大学が多かったからです。今の箱根は1区間失敗すると脱落する厳しい戦いで、しかも10人ハーフをしっかり走れる選手を揃える必要があります。今回、予選会を勝ち抜いた大学で下位層が崩れた大学は、崩れた原因を分析して本戦までに対策しておく必要があるでしょう。もちろん、1区間失敗すると脱落するというのはシード校も同じです。そう考えると、厳しいサバイバル戦になりそうですね。

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