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新刊発売! & It's show time! と鬼軍曹に言われた話

明日、2022年2月18日に拙著
『子どもから話したくなる「かぞくかいぎの秘密」〜一生ものの対話力を磨く』が白夜書房さんより刊行されます。

著書を出すのはこれが初めてではないのだけど、
このテーマは結構長く追ってきて、東洋経済オンラインなどで連載も
させてもらっていたから、やっと一冊の本にまとまってとても嬉しいです。

かぞくかいぎを行なっているたくさんのご家庭に
ご登場いただいてるのだけど、
子どもたちの発言がとてもおもしろい。
親御さんたちの聞き方や相槌の打ち方に、ハッとさせられます。
ぜひたくさんの方に読んでもらえたら、幸いです。

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と、本当にうれしありがたく、自信を持ってお届けしたい!
と思っている!のですが・・・。
やっぱりこうして、自分が作ったものを世に出す前は緊張します。

自分の家のことも結構書いているし・・・
どう読まれるんだろう・・・
そもそも面白いのか?!
まったく売れなかったどうしよー!😭 

とか。胃が痛くなるものです。

でもそんなふうに、引きこもって布団に潜って消えたくなるような時、
毎回思い出すシーンがあります。それが、タイトルにある鬼軍曹に声をかけられた時の話です。(以下、めちゃめちゃ長文です。すみません)

*****

鬼軍曹は、1990年代半ばに、アメリカのアーカーンソー州という片田舎の
中でも小さな小さなタウンの、小さな学校に1年間留学していた時にであった、バスケットボールチームのコーチでした。

コーチK。「コーチケー」とみんなに呼ばれていました。

角刈りで、ガタイがデカくて、メガネをかけているんだけど、練習中しょっちゅう怒鳴るから、怒りでメガネが吹っ飛んでいました。

私は英語がほとんど理解できない状態で1人その田舎にたどり着いたものだから、とりあえず日本でやっていたバスケ部に入るかくらいの気持ちでチームに入ったのですが、これがやばかった。

***

毎年州トーナメントで優勝か準優勝の強いチームで(レディー・ブルドッグスというチーム名。怖い)
バスケ”部”というより、なんだろうバスケ”クラス”みたいな感じ?
毎朝7時スタートで9時半までみっちり朝練があり、1時間目の授業はチームに入っていれば免除されるというしくみ。かなりの強豪チームでした。

私は、フリースローも、レイアップでさえ、3回に1回は失敗するへなちょこだったから、3ポイントをサクサク決めてガタイもでかいチームメイトに怯えて暮らしていました。
しかも毎朝シャワールームで、彼女たちがベラベラとおしゃべりしている内容が全くわからず、いつも1人でポツンとしていて、本当に寂しかった。

練習はきついし、ボッチだし、もうバスケなんてやめたいと毎日思いながら、まだ暗いうちからホストマザーの車に乗せられてジムに向かいました。

「戦争に向かう兵隊ってこんな気持ちか」と毎朝思っていました。

実際、練習のキツさのあまり、結構アメリカ人ガールたちも辞めたくなるらしく、何人かは練習を数日休んだたあと、コーチのところに来て
「あのコーチ…実は…」と言うのだけど、それを聞くなり、コーチは
「あ、やめる? OK、Bye!」と言い放つのです。

ひどっ。ちょっとは引き止めたれよ…と思いやっぱこの軍曹は怖い、と思っっていました。

****

誰かがやる気がなかったり、練習がうまく行かなかったりすると、コーチケーは、「ジャイジャイジャイジャイ!(英語が聞き取れなくて何言ってるかわからなかった)と怒り出し、「全員push upだ!」と腕立てを強制するのです。

「お前ら、やる気あんのか!」
「イエッサー!」push up!
「お前ら、もうやめてーんだろ?!」
「ノーサー!!」push up!
「やめたって、いいんだぜ!」
「ノーサー!!」push up!
「今度の試合に勝ちたいんじゃねーのか?!」
「イエッサー!」
「優勝すんだろ? そーだろ?!」
「イエッサー!!」

みたいな感じ。何を言ってるのかはっきりわからないから、
イエッサー!って言えばいいのか、ノーサー!って言えばいいかもわからず、私はただpush up! し続けていました。

何この軍曹……。

辞めたいと思いながらも続けていて、同時にあまりの下手っぷりの私はいつ辞めさせられるかと怯えてもいたのですが、不思議と軍曹は私に除隊を言い渡すことはなかったのです。

そしてある朝、いつものように足を引きずってジムの廊下を歩いていると、コーチの部屋のドアが空いていて、コーチケーが

「Hey, Yaz!!!」

と声をかけてきました。は? ヤーズってなに? 私?

「い、いえっさー?」

「It’s showtime! Babe!」

「は?」

戸惑う私にコーチケーはいつもの南部訛りで捲し立てます。

「今まで、辛い練習によく耐えてきたよな?! 辛かったよな?!でももう辛いのは終わりだ! ここからはゲーム、ゲーム、ゲーム!
 It’s gonna be fun!  All you have to do is  ENJOY!」

などと言うのです。
あ、そういえば、そろそろ試合って言ってたな。そのこと?

アメリカは高校生もスポーツはシーズン制で、バスケシーズンは11月から開始。8月から3ヶ月ほど軍曹の訓練を受け続けた私たちは、ようやく試合シーズンに入ったのでした。
そこから本当に毎晩のように、放課後19時から試合、試合、試合!

学校のジムに相手チームが来る時もあれば、よく映画に出てくる黄色のスクールバスにみんなで乗り込んで遠征に行く時もあればで、チームメイトもみんな、WOOHOO! って感じ。バスで大音量の音楽をかけて盛り上がってます。この時期、学校のジム(って、体育館なんですが)には、大きな観客席が常設され、そこに放課後学校中の生徒や保護者が応援に来てくれます。

初回のゲームの時はわざわざ全プレイヤーが放送で呼び出されて一人一人
コートの中央に出て行って挨拶して拍手喝采てな感じ。

いやー!何これ! 怖っ!

Showtime! っていわれても! 試合とか! ムリやし!
みんなの前に走っていって挨拶とか無理! 何これ!
ムリムリムリ! 絶対出たくない、万年ベンチでえーし!

と思った私で、実際ほとんどをベンチで過ごしたのだけど、
その試合開始の日、「ヤーシューコー・マーチューノー!」(松野泰子って名前でした)と放送されて、とにかく、タッタッタッタッて走って
ぺこりっとおじぎをしてさっさと奥に引っ込もうとしたら、

わーーーーーーーーーー!! YA SU KO!  YA SU KO!

と大喝采を浴びる始末! 何! みんな私の名前知ってたの!
今までずっと無視してたやん!! ((((;゚Д゚)))))))
U.S.A!  かよ!

何がなにかわからないまま試合は始まり、当然私はベンチだったのだけど、何しろレディー・ブルドッグスのみんなはめちゃくちゃ強いので
さっさと得点を40点差くらいにしてくれて。
最後の15分だけ YA SU KO! は試合に出られたのです。

そして最後残り1分を切った時、ゴール前でわざわざ私に回ってきたパス。

まじかー! ムリ! 今まで一回もパスとかくれへんかったやん!と思いながら必死でへなへなとドリブルシュートをしたら、

くるくるーー!とリングにボールが回って、ああもうあかん!ごめん!
と倒れ込んだ私の後ろで、

わーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!! 」

と、大声が。へ? と振り返った途端、チームメイトが駆け寄ってきたのでした。

40点差の中に消えてしまうただの2点だったのに、鬼軍曹も鬼チームメイトもみんな駆け寄ってきてくれた。

何これ? しょ。

SHOWTIMEなの?!!

***

はぁ、長くなりました。まあ、何が言いたいかというと、
あのアメリカ生活で色々学んだことはあったのだけど、
いまだに思い出すのは、あの朝、くらーい廊下で鬼軍曹に話しかけられた時のこと。

SHOWTIMEがきたら、もうあとは楽しむだけなんだ! ってこと。

どんなにへなちょこでも、自信がなくても、下手くそでも、面白くなくても、友達が1人もいないし見方も1人もいないと思っても、

SHOWTIMEは、思い切り楽しむしかないんだ!ってこと。
そして、そうすれば、いろんなことは動いていくんだってこと。

実際、SHOWTIMEが始まって以来、私は学校で無視され続けることはなくなり、(えっと私が試合でゴールを決めたのはその一回だったんですが💦)留学生活を結構満喫できるようになったのです。

だから、そう。あれから、もはや25年ほど経っておりますが、

明日の新刊発売を控え、びびっている私は、
あの時の軍曹の言葉を、ありがたく、懐かしく思い出しているのです。

私は今の私のSHOWTIME!を楽しもう。

今後色々イベントやプロモーションもしていくつもりです!

『子どもから話したくなる「かぞくかいぎの秘密」〜一生ものの対話力を磨く』(玉居子泰子著 白夜書房刊)

よろしくお願いいたします!

WOOHOO!


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