好きなことを仕事にできなかったが幸せでありたい。

最近SNSで、好きなことを仕事にした方が効率がいい、
みたいなことを見かける。
軌道に乗るまでは大変だけど長続きするし学びが多いとか、
好きなことをするためには嫌いなこともしなければならないけれど
好きなことのためだから頑張れるとか、それっぽいことが書いてある。

私は、好きなことを仕事にすることをあきらめた人間である。
小さな頃から漫画家になりたかった。
とある雑誌で優秀賞をいただき
それから何回か読み切りの作品を掲載してもらったが
新人が雑誌掲載を競うコンペに全く通らなくなり、
ネーム(作品のラフ)を描く気力がなくなってフェードアウトした。
要するに、逃げた。
雑誌に載らないのだから当たり前だけど
膨大な時間と労力をかけても金銭的な見返りと、達成感がなかった。
一日2食トーストとコーヒーという食生活が続く。
髪がボサボサで友達に指摘されるほど身嗜みに割く時間とお金がなかった。
全く凹凸がない顔なのに、げっそりしすぎで平井堅くらい目が落ち窪んでいた。
(平井堅さん、すみません。)
締め切り間近で3時間睡眠が続き、3日振りにシャワーを浴びたら目の前が真っ暗になって意識が飛びかけた。
一人暮らしだったため、孤独死するときはこんな感じなんだーと思いながらも
締め切りの方が大事なので
体を洗うのもほどほどに風呂を出た。

思い出すだに身の毛がよだつ。

担当編集さんに別れを告げた後は、自由だった。
掛け持ちしていた派遣社員の方で少し多めに働くようになり、
コンペに通るためではない好きな漫画や絵を描いた。
描きたくないときは描かずに、他のことをして遊んでいた。
後、物が多すぎることに気がついて断捨離をしたり。
多分正気じゃなかったので
普通の部屋の状態が分からなくなっていたんだと思われる。

ただあれ以来、生きている!と実感する事は格段に少なくなった。
自分でも、常に正気を保てているように思う。
締め切りに追われている日々は、毎日生きているという実感があった。
大袈裟だけど、死に直面していたのでそう感じていたのかもしれない。
本当に何をしている時も漫画のことばかり考えていて
1日があっという間に過ぎた。暇だと思うことが、1秒もなかった。
逆に言えば、飽きたとかサボろうとか
そんなことを考える隙がないくらい夢中になるものがあった、体験できたことは
それはそれで幸せな事だ。

しかし、あの日々に戻りたいかと訊かれれば、NOである。

最近、恋人が好きなことを仕事にしたいと言い出した。
恋人はずいぶん年下で
ちょうど私が漫画を雑誌に載せてもらっていたくらいの年頃。
私は応援している。心から。
私もちょっと触発されて
こうやってnoteをやってみたり、違うテイストの絵を描こうと練習している。

すごく大変かもしれないが、最初から何もしないのはもったいない。
挑戦する事は素晴らしい。
それは本当。
でも、失敗したとき、あきらめた時に、もうダメだってならないでほしい。
言い訳に聞こえるかもしれないけれど、私は今幸せだから。
というか、どういう状況でも幸せでいいのだ。

仕事だけではない。

今の自分でいることが嫌でなければ、
変わりたい人はちょっとでも意識できていれば、
めんどくさいことをしなくていい環境であれば、
幸せだ。


今勤めている、好きでも嫌いでもない仕事でいただいたお給料で買った
ちょっといい豆のコーヒーを啜りながら、
そうありたいと、自分の為に願う。

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