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「中国女」「IPM」「ニューヨークの中国女」         /ジャン・リュック・ゴダール


より政治的な映画を撮り始めていたゴダールがアメリカに招かれ撮り始めた「1AM(One American Movie)」は、結局未完に終わり、残されたフィルムを元に編集、完成されたのが、「1PM(One Parallel Movie)」。そして、「中国女」のアメリカでの公開を記念し、映画を学ぶ学生との懇談を記録した「ニューヨークの中国女」が上映されていたので、まず「中国女」改めて観てから、観てきました。1967年に公開され、パリの五月革命を予言したと言われる「中国女」。
 ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」に主演したアンヌ・ヴィアゼムスキーとゴダールが一緒に住み始めたアパートで撮影された作品で夏休みにブルジョアの学生達が、革命ごっこを繰り広げ、最後には間違った人を殺してしまうという真剣に革命を起こそうとする学生を揶揄するような描き方 そして多くのセリフは「毛主席語録」からの引用のようですが、何よりも赤本がが大量に積まれ、時折インサートされるアメリカンコミックなどそのポップな色使いが抜群な映画。
 そして「1PM」では、ブラックパンサー党への取材、ブラックジャズをのアーティストの路上ライブ、ベトナム戦争、ジェファーソン・エアプレインの屋上ライブとアメリカでの革命の息吹きが描かれます。
そしてNYでの学生との対話(奇しくもキング牧師が暗殺された日 そしてその数ヶ月後、オハイオでデモが起こり、数人の学生が犠牲になり、ニール・ヤングの「オハイオ」が生まれる。)を見るとゴダールは革命を信じていたようで、その後、より政治的映画を撮るようになることを考えると「中国女」の茶化し方も60年代らしいポップな新世代への愛情と彼一流の照れ隠しなのかもしれません。また映画史の話に及ぶと、ロシアのエイゼンシュタイン、アメリカのグリフィス、ドイツのムルナウそしてイギリスのチャップリンなど映画を映画足らしめた先達へのリスペクトも印象的。「私の映画は革命的ではない。私は最も普通の映画作家だ。それ以外の部分で思考がとことん異常で。。」ジャン・リュック・ゴダール


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