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シャンタル・アケルマン映画祭 2024

英国映画協会が世界各国の研究者・批評家からの回答をもとに10年ごとに集計している「オールタイムベスト100選」で、2022年末に『ジャンヌ・ディエルマン』が第1位に選出されてから日本でも注目されているシャンタル・アケルマン映画祭という事で、東京日仏学院に行って来ました。一昨年から数えるとアルケマンの映画祭は3回目でかれこれ13作品を観ましたが、今日はドキュメンタリー三部作である「東から」「南」「向こう側から」の三作の連続上映。「東から」はソ連崩壊後、旧共産諸国(ウクライナ、ポーランド、東ドイツ)の生活、「南」はアルケマンがアメリカで映画を撮ろうとしていた時、遭遇した白人至上主義社による黒人の殺害事件、「向こう側から」は、9:11以降 アメリカ人が外部からの侵入に過敏に不安を抱く時期のメキシコからの不法移民の話を取り上げています。
最近 ドキュメンタリーが凄く魅力的に感じていますが、それは作り物ではないリアルを描いているというわけではありません。
ドキュメンタリーといえども、作家や制作者の視点による編集されたもので、決して現実そのままでは無いわけで、それより通常の映画のように資金集めのためのシナリオの準備や出資者などステークホルダーの意向などより、作家が自由になれるからこそ斬新になり得るドキュメンタリーに興味を持ったといえます。特に今回はアルケマンに長年寄り添った編集者(モンタージュ)クレール・アルテドンさんが来日し、トークショーで話してくれ、アケルマンが善悪の二元論では描けない人間の複雑さを描くためにアートがあるとし、決して結論を提示せず、かつどちら側の意見が正しいかを提示するような描き方を避けるために、敷地に侵入した不法入国者を撃つと話すアメリカ人のシーンでショパンを流し中和したりと制作時何を考えていたのかなど とことん考え、最後に感覚で判断するという制作の現場の話が聞けて大変楽しかったです。


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