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【映画上映とリレートーク 明石政紀氏を送る会】

昨日はドイツ文化会館、ゲーテインスティテュートで開催された【映画上映とリレートーク 明石政紀氏を送る会】
明石さんはベルリン在住の文筆家、翻訳家で、ドイツ現代史(ナチスドイツ以降)における特にサブカルチャーの音楽と映画を日本に紹介されたパイオニアで、RWファスビンザー監督の【不安は魂を食いつくす】の上映に続いて、上智大学外国語学部ドイツ語学科時代に参加していたドイツ語劇の仲間、音楽、映画、出版など各分野でゆかりの深い方々がエピソードを話すトークショーで明石さんの業績を語り合いながら、送るというイベントでした。
代表的な著作の一つ【第三帝国と音楽】では、第三帝国=ナチスドイツ時代に「退廃音楽」として、迫害されたジャズ、ブルース、現代音楽そしてユダヤ人作曲家、社会主義者の作品を通して、音楽(家)と政治を解き明かし、
【ドイツのロック音楽―またはカン、ファウスト、クラフトワーク】では、クラウト・ロック(クラウト=ドイツでよく食べられている「キャベツの漬け物」と名付け、当初英国から軽蔑され、その後のニュー・ウエーブ、ポスト・パンクに多大な影響を与え、賞賛されることになるジャーマン・ロック成り立ちの背景の解説や音楽雑誌「Fool’s Mate」 への寄稿や「イースタン・ワークス」での前衛的音楽のディストリビュート、そして何よりも「Wave」そしてそのレーベルでの「ノイエ・ドイチェ・ベレ=ジャーマン・ニュー・ウェ-ブ」やレジデンツ、パスカル・コムラード、トット・テーラーなどカテゴライズされにくい先鋭的アーティストの紹介に尽力、
そして【映画は頭を解放する】やインタビュー集【ファスビンダー、ファスビンダーを語る】の翻訳での、ヴェンダース、ヘルツウォークと並びニュー・ジャーマン・シネマの旗手と呼ばれたファスビンダーの紹介など、その領域のことを知ろうとすると必ず彼がいました。
昨日は、まさに彼のホーム・グランドと言えるドイツ文化センターでご遺族の方も参加され、アカペラでの歌唱と献花で彼を送る記憶に残る集いでした。
なぜドイツのロックがあれほど異形の音楽になったのか そして、ファスビンダーの映画の凄さを僕らに教えてくれた明石さん。ありがとうございます。安らかにお眠りください。
著書
『第三帝国と音楽』(水声社、1995年)
『ドイツのロック音楽、またはカン、ファウスト、クラフトワーク』(水声社、1997年/新装版2003年)
『ポップ・ミュージックとしてのベートーヴェン』(勁草書房、2002年)
『フリッツ・ラング、または伯林・聖林』(アルファベータ、2002年)
『キューブリック映画の音楽的世界』(アルファベータ、2007年)
『ベルリン音楽異聞』(みすず書房、2010年)
訳書
パスカル・ビュッシー『クラフトワーク、「マン・マシーン」とミュージック』(水声社、1994年)
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『映画は頭を解放する』(勁草書房、1998年)
ヴォルフガング・フリューア『クラフトワーク、ロボット時代』(シンコー・ミュージック、2001年)
マイケル・H・ケイター『第三帝国と音楽家たち、歪められた音楽』(アルファベータ、2003年)
ダグラス・サーク/ジョン・ハリデイ『サーク・オン・サーク』(INFASパブリケーションズ、2006年)
エーファ・ヴァイスヴァイラー『オットー・クレンペラー、あるユダヤ系ドイツ人の音楽家人生』(みすず書房、2011年)
クリスティアン・ボーングレーバー編『ベルリン・デザイン・ハンドブックはデザインの本ではない』(ベアリン出版、2013年)
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『ファスビンダー、ファスビンダーを語る』第1巻(boid、2013年)
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『ファスビンダー、ファスビンダーを語る』第2・3巻合本(boid、2015年)

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