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「Tar」 トッド・フィールド監督作品at Stranger映画館

ずっと観たかったベルリンフィルの首席指揮者として活躍した女性指揮者の話「Tar」。
銀座、新宿でもやっているんだけど、今日は、最近、クラウドファンディングで菊川に設立されたミニ・シアターStrangerで観てきました。代表の岡村さんは、ゴダールの「映画史」を穴が空くほど読み、一番読んだ小説家がマルグリット・デュラス、一番聴き込んだレーベルがECMだそうで、全てが”映像的”で、これは間違いありません。
入口がTシャツなども販売しているカフェになっており、奥の客席は49席のみとまさにミニ・サイズで、映写機やスクリーンも地方の廃業した映画館から譲り受けた機材を使っているそうで、席の傾斜もちょうどよく、ゆっくり楽しめました。
そして「Tar」。見る直前まで、実在の女性指揮者の話だと思っていましたが、フィクション。
でも閉鎖的なクラシックの世界で過去に起こったことを思わせるエピソードが多く挿入されています。この映画 どの構図も美しく、何度も「作曲家のIntent(意図)」というセリフが出てくるように、映画の方も、セリフから役者の表情やしぐさまで、とにかくすべてが細部まで練り上げられた素晴らしい映画でした。もちろん男装の麗人のようなケイト・ブランシェットの美しさとドイツ語、アメリカ英語(彼女はオーストラリア人)そしてピアノ演奏までマスターしたという迫真の演技は特別でした。
この話は指揮者としてだけではなく、作曲家としても名声を獲得した彼女が、マーラーの交響曲の中でまだ未録音だった5番をライブ録音するときの話ですが、当初、ヴィスコンティの「ベニスに死す」で「アダージェット」が使われ、イメージがついているので、その曲を使うか躊躇したそうです。サントラのジャケットは、クラウディオ•アバドのマーラーの5番を模したジャケットで、なんとケイト•ブランシェットが指揮した演奏も収録されているそう。
映画内では、老舗クラシックレーベル「ドイッチェ・グラモフォン」の事を業界関係者はDGと呼んでいたので、これからそう呼ぶようにします。

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