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オープニング・ナイト/ジョン・カサヴェテス監督(1977)

カサヴェテスの映画の中でも、妻ジーナ・ローランズが前作「こわれゆく女」同様、精神が崩壊し、錯乱していく女性を演ずる映画で、唯一、夫婦役を演ずる作品。
役者さんは、その役に入り込みすぎて、自らの精神にも支障をきたしてしまう方も多いと聞いたことがありますが、この映画でのジーナは、そんな心配をしてしまうほど、迫真の演技です。


この映画は、人気があるものの老いを感じ始めている舞台女優が、老いを自覚する女性を演じる演劇作品の舞台を描いており、この舞台の成功で、老女優のイメージを確立してしまうのではないかと不安と彼女の熱狂的な若い女性ファンの交通事故死を目撃してしまうことにより、酒に溺れ、精神のバランスを崩し、ニューヨークでの初演舞台を前に、失踪してしまう話ですが、ジーナ本人、そして映画での役柄だけでなく、舞台での役柄という三つのパーソナリィが複雑に絡み合います。そして、開演直前に彼女は泥酔しながらも会場に戻り、何とか舞台をこなすわけですが、初日の舞台がはけ、ささやかなシャンパン・パ―ティで、スタッフ、関係者に挨拶される女優は、ジーナ・ローランズという一つのパーソナリティに収束していくように私には見えました。身体を傷つけながらも、愛にストラグルしながら、人生が流れていくというカサヴェテスらしいプライベートな映画でした。

片手にウイスキーのボトルを持ち、金髪を書き上げる姿。自分の不安や泥酔によりついた目の周りの傷を隠すために掛ける大振りのサングラス。ジーナ・ローランズをもう一度記憶に収めたひと時でした。R.I.P.


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