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エリックを探して(Looking For Eric)/ケン・ローチ(Ken Loach)(2009)

サッカー界のレジェンドの一人、エリック・カントナが直接、ケン・ローチに持ち込んだ企画からこの映画が始まったとか。
エリック・カントナと言えば、フランス出身で若くして頭角を表すも、その”悪童“ぶりから、フランスでは居場所を無くし、イギリスのプレミア・リーグで流れてきて、その後、サーの称号をもらうことになるアレックス・ファーガソンの元マンチャスター・ユナイテッドの黄金時代を築くとともに、外国人に関わらずキングとして今なおスタジアムでは、サポーターが彼の歌を歌うという。
フランスで人気の高いケン・ローチ、イギリスでレジェンドになったエリック・カントナだからこそ生まれた作品だと言えます。
そして、映画の舞台は今回も炭鉱の町で、産業革命で栄えたものの、いまでは、平均の倍の失業率と言われるマンチェスターで、主人公は、学生時代にダンスパーティーで知り合った女性と結ばれるも父親のプレッシャーから、パニック症候群になり、失踪してしまった過去を持ち、いまだ添えを引きずる郵便局員の初老の男性。
そんな彼の気持ちを紛らわしてくれるのが、郵便局の同僚とパブでマンチェスターユナイテッドの試合を観ることで、彼のヒーローはエリック・カントナなわけですが、なんと彼の前にカントナが現れ、サッカーで学んだことを格言として、アドバイスし、主人公が友人たち(サッカーのサポーターのように一緒にやれ強くなれる)の助けを仮り、トラブルを乗り越えて再生していく話で、いつものケン・ローチの重苦しく希望がない話とは、少し毛色が違うロマンテックコメディ―。
マンチェスター・ユナイテッド栄光の背番号[7]の系譜として、60年代に活躍し、サーの称号を与えられたボビー・チャールトン や70年代、「5人目のビートルズ」と呼ばれた史上初のスタープレイヤー ジョージ・ベストの写真が80年代のエリック・カントナの写真とともに、部屋に飾ってありや当時売り出し中のデビット・ベッカムも映像の中で出てきます。
でも役者はすべてマンチェスター出身で、階級により、身なりも訛りも違い、複雑な家庭環境や社会問題も散りばめられています。
主人公の来ているマンチェスター・ユナイテッドのユニフォームの胸にはSHARPのロゴ。当時は、ピカデリー・サーカスにも大きな看板がありました。たった15年前の話ですが、日本の国力低下を感じました。


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