負けたって負けじゃない(ショートショート)
春の訪れを待ち望んでいるルリビタキのヒッヒッという鳴声が微かに聴こえてきそうな次縹色の冬空の元、吾郎の心も晴れ晴れと囀っていた。なんたって今日は幼馴染の佐山と、高校卒業以来の遊園地デートだから。
吾郎の人生、負けばかり、続いていた。初めは紙一重で負けた。運動会の徒競走。数十メートル先にピンと貼られたゴールテープ。それを頭一個分の差で破ったのは双子の弟、次郎だった。惜しくも負けたが、悔しさより清々しい気持ちで一杯だった。全力を尽くして負けたからだ。しかも負けた相手が、この世で