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小説

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#物語

私は人間よ。

初子は猛烈な腹痛に襲われてトイレに駆け込んだ。 激痛で額からは汗が噴き出てくる。意識も朦朧としている。そんな中、最後の力を振り絞って力んだら、ドボンって音がして何かが便器に落ちた。 何かと思って恐る恐る振り返ったら、ゴルフボールが沈んでいた。 初子はギョッとしたが、とある考えが浮かんだ。 「今度のゴルフコンペで後輩にこのボール使わせたら面白いわよね」 いたずらっ子のような笑みを浮かべながら、そのボールを便器から取り出した。 ゴルフ当日、初子はピヨピヨ鳴るアラームに

おじおじさぎ

もうイケメンには懲り懲りよ。次の彼に最も求めるのは癒し。私を癒してくれる存在はどこ。 そう思いながら、マッチングアプリに出てくる男の人を次々と左に左にスワイプしていく。 こんな心情の時に限って、イケメンばかりが登場してくる。イケメンでなければこのアプリに登録させてくれないのではないかと錯覚してしまう程に。 でも錯覚はあくまでも錯覚であって、真理ではない。 20人左にスワイプした時、待望の光景が表示され、画面に目が釘付けになった。 画面に映し出された人物は、これまでの

サルの恩返し-日本昔話風-

昔むかしあるところに、お爺さんとお婆さんが暮らしていました。 お爺さんは働きもせず、昼間っから酒ばかり呑んでいる町一番の怠け者。 そんな怠け者なお爺さんに命令され、今日もお婆さんは樽に入った酒を汲みに行きます。 ■■ その日、ちょうど樽の酒が底をついてしまいました。 お婆さんは、これを機にこの樽を壊してしまおうと思いました。 この樽が無ければ酒を保存しておけず、お爺さんも一度に大量のお酒を飲むことができなくなるからです。 でも心優しいお婆さんには、樽を壊すことな