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小説

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2022年9月の記事一覧

4949(ショートショート)

嫌になったの? 言葉にすら昇華されない、内なる想い。何もかも無くなったマンションの一室。秋。実り。かぼちゃ。さつま芋。ほくほく。紅葉。どんな紅葉を観ても単純には楽しめない。 知っているから。 この後、無惨に散ってドス黒くなるまで踏み付けられるって。 恋愛だってそう。 単純に楽しめてたのっていつくらいまで? もしかしたら初めて付き合ったあの人の時だけだったかもしれない。 知ってしまったから。 原因がどうとか、振ったのがどっちとか、性格が合わなかったとかって関係な

      余白

まだ家具も家電も届いていない引越し先で、独りで夜を過ごしてはいけない。奴が来る。奴が現れた所に暗闇は無い。窓も床も血痕も全て白に染まっている。奴の前では全て無駄。どれだけ悲鳴を上げようが、包丁で幾度突き刺そうが、奴には届かない。誰にも響かない。逃げ場は無い。できることは一つ。奴と対峙したならば、自らの死を覚悟する。それだけは可能。それ以外は不可能。これだけ私が注意喚起しているのに、ほら、またあそこ。カーテンも付けずに眠りに堕ちようとしている若い娘がいるぞ。そこには、必ず、奴が

モンブランの皿(ショートショート)

歯ブラシ。焦げ付いたカレーを鍋から削ぎ落とすかのように力任せに磨くからさ。ほら、案の定、ぼろぼろだよ。 ひよこ。つぶらな瞳が私と似ているね、って盛り上がって、2000円もかけて手に入れたのに。ディズニーのぬいぐるみの横に並べてみたらさ、可愛さの格差に愕然として。 マスタード。特製ポテトサラダを作る時にだけ使うからさ、いつも使い切る前に賞味期限が切れちゃって。10月だから大丈夫だって一安心したのに、よく見たら去年の10月。冷蔵庫の中だけ時間が早く過ぎてる説、立証されたんじゃ