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小説

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2021年9月の記事一覧

熊ちゃんでオセロしちゃた。

今夜は満月。大仲良しの白熊と黒熊は隣同士横並びで月を眺めていました。 東の方角から、この辺りでは見かけない黒熊が現れました。大きなリュックを背負って杖をついています。どうやら旅熊のようです。 白熊と黒熊は、旅熊に向かって「旅熊さん、一緒にお月見どうですか」と尋ねました。旅熊は熊なつっこい笑顔で「ありがとう」と言い、白熊の隣に座りました。 三匹で月を見上げました。夜に昼が浮かんでいるようでした。 ふと黒熊が月から目を離して白熊を見ました。目がぱちくりしました。そこには白

私は人間よ。

初子は猛烈な腹痛に襲われてトイレに駆け込んだ。 激痛で額からは汗が噴き出てくる。意識も朦朧としている。そんな中、最後の力を振り絞って力んだら、ドボンって音がして何かが便器に落ちた。 何かと思って恐る恐る振り返ったら、ゴルフボールが沈んでいた。 初子はギョッとしたが、とある考えが浮かんだ。 「今度のゴルフコンペで後輩にこのボール使わせたら面白いわよね」 いたずらっ子のような笑みを浮かべながら、そのボールを便器から取り出した。 ゴルフ当日、初子はピヨピヨ鳴るアラームに

おじおじさぎ

もうイケメンには懲り懲りよ。次の彼に最も求めるのは癒し。私を癒してくれる存在はどこ。 そう思いながら、マッチングアプリに出てくる男の人を次々と左に左にスワイプしていく。 こんな心情の時に限って、イケメンばかりが登場してくる。イケメンでなければこのアプリに登録させてくれないのではないかと錯覚してしまう程に。 でも錯覚はあくまでも錯覚であって、真理ではない。 20人左にスワイプした時、待望の光景が表示され、画面に目が釘付けになった。 画面に映し出された人物は、これまでの

助けた亀、託す。

◇はじめに この小説は30分程の長さです。そしてこの小説は丸武群さんに紹介して頂いた、フェルマーの最終定理という本の影響を大きく受けています。それだけではなく皆が紹介してくれた本から得たものが少なからず反映されています。読むことも書くことも1人でするものですが、1人では決して書けなかった作品であることだけは事実です。またしても僕は多くの人から大きな恩を頂いたのです。その恩をこの小説を通じて少しだけでもお返しできたら幸いです。 『助けた亀、託す。』サンタクロースが子供達に無