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2024.6月観た映画、読んだ本、行ったイベント

1 観た映画

『正義の行方』 
渋谷ユーロスペースにて。ドキュメンタリー。飯塚事件の話。検察が犯人と決めた男を犯人とするために各種不都合に目をつぶったりしていたら後に引けなくなった話。疑わしきは容疑者の利益に、という言葉を思い出さずにはいられなかった。やっているやっていないは関係がなく、確たる証拠を集められなかったら罪に問われない、ということを考える。それでいいと思っていたが、それならば証拠さえあれば実際にやっていない人が罰されることも、やったけれども完璧に証拠を隠したものが罰されないのも許さなければならない。それでいいのだろうか。それでもいい、仕方がない、と皆が思ったほうが恐らく社会は安定するのだが、それを思うためには、検察への信頼が大変重要で。その検査への信頼は大きく揺らぐ映画だったように思う。とても面白かった。

『チャレンジャーズ』 
 神戸の映画館にて。テニス映画。男子ダブルスの名コンビの間に入った女子スーパープレイヤー・ゼンデイヤをめぐる愛憎劇と見せかけて、男同士の友情と愛情のはざまに興奮するゼンデイヤが無自覚にその肢体で以て男同士の気持ちを高めていく話。とても面白かった。ゼンデイヤが綺麗すぎる。終盤、不倫がばれる瞬間は叫び声が出そうになった。テニスの打球音とEDMの相性が抜群。ハリウッド映画はやっぱり面白い、って感じ。全然興味ない映画をここまで面白く観させるのはすごいことだ。

『鉄砲玉の美学』
 シネ・ヌーヴォにて。今までなんとなく見てこなかった映画。中島貞夫監督作品では『狂った野獣』『沖縄やくざ戦争』が好きだが、この映画はすごかった。タイトルバックと頭脳警察のテーマ、かっこよすぎて痺れる。かっこ悪いやくざを演じる渡瀬恒彦の、滑稽で悲しい死への直滑降。笑えて悲しいジャパニーズニューシネマ。小池朝雄のただならぬ迫力もグッドであった。

『誘拐』
 配信にて。渡哲也と永瀬正敏のバディもの。二人で劇場型身代金誘拐犯を追いかけていると思いきや実は渡哲也が犯人グループのリーダーで、という展開に。まずまず面白いんだけれど、前半新宿を金を持って疾走する場面に比べて後半落ち着いてしまうのが惜しい。
公害の話になって落ちていくのはなかなか良かった。奥村公延が良い。

『うる星やつら2~ビューティフルドリーマー~』
配信にて。久しぶりに観たらやっぱり面白い。中学時代に深夜テレビをつけてたら始まって、無茶苦茶引き込まれたのを憶えている。声優が良すぎる。藤岡琢也、鷲尾真知子、千葉繁は出色の良さ。このころのアニメの声の感じがたいそう好きだ。今はちょっと文脈が積み重なりすぎていて良さがわからぬことが多い。

2 読んだ本

『夜と霧』
 フランクル著。収容所の話。詳しくは当該記事で。
https://note.com/tamada_gyokuzan/n/nbd9b418a3a9c
俺は俺の苦しみを俺独自で苦しまなければならない。

『孤独まんが』
 オムニバス。なんとなく手に取って購入した漫画。他士官、嫌われる勇気と一緒に買ったっけ。なんかあんまり好みでは無かった。ハン角斉氏の漫画が大変良いが既読の漫画ではあった。単行本が家にある。ハン角斉氏、本当に素晴らしい。横山清正に貸したい漫画である。奴は相当の漫画読みであるからな。

『最後の隠密』
 小松左京。歴史ものの短編。歴史ものといってもかなりファンタジー。真田の抜け穴を探す私小説風ファンタジーが好きだった。小松左京の大阪ふうのユーモアが爆裂出ていて楽しかった。『日本沈没』や『首都消失』より『日本アパッチ族』とかこの本みたいな大阪感あるやつのほうが小松左京は好き。

『本能寺の変の変』
 黒鉄ヒロシ。これはあんまりおもしろくなかった。読んだだけ。いや、眺めただけか。

『嫌われる勇気』
 古賀史健著。こんなんも読んでいるのである。原因と結果の呪縛から解き放たれることができる本だとは思うが、そんなことはもうわかっていて、そこから飛び立つことができないのである。とは思っていたが、それでもやはり売れている本というのはすごいもので、読後は無敵感が出てきたが、今になってみると内容は殆ど憶えていないな。他人は変えられない、というような当たり前のことが書いてあった気もするが、そんな当たり前のことだけ書いてあってヒットをするとは思えない。一体何が書いてあったんだっけか、大阪に本を置いてきてしまった。戻ったらちょっと確認してみよう。

『羆嵐』
 吉村昭著。これは今月一番面白かった。三毛別の羆害の本。鬼銀がかっこよすぎる。文字でこんだけ緊張感あるサスペンスが書けるというのはすごいことだし、熊の害は怪談として講談に打ち直せる気がするな。夏に向けて「羆怪談」いいかもしれない。雪の話だし。やってみるか。

『職業としての政治』
 ウェーバー著。講演の記録ということで読みやすいかと思ったけれどそんなことは全然ない。すごく薄い本なのに足掛け一週間くらいかかったものだからもう読む端から忘れてしまって。解説書などを呼んで、もう一度読む必要がある。重要な書のような気もするんだ。

『指示通りができない人たち』
 榎本博明著。指示通りにできない人間として読んだら、指示通りできない人間を部下に持つ人達が、指示通りできない部下についての相談をし、それに著者が答える、見たいな本だった。なんというか、若い者に困る上司たちの世紀を優しく慰撫するような手つきに心底ぞっとした。気持ち悪い本だった。電車の広告で出ていて笑えるかな、と思って買ったけれど不愉快なだけの本であった。悔しい。銭失いであった。

3 行ったイベント

『漫ドリル』
 6月5日、高円寺ジュンジョ―。漫才ライブ。にぼしいわし目当て。
前にナルゲキで観たセンチネルというコンビと、素敵じゃないかというコンビが滅法面白かった。センチネルは寄席的に言うとフラがすごい。観ていて本当に幸福。漫才が終わってほしくない。素敵じゃないかは演技がすごく上手で、その演技の質感が演目の中で変化しつつも地続きで、最後に一瞬のずれが生まれてそこが涙が出るくらい面白かった。すごい。他の漫才も観てみたい。

『漫才師の空論』
 6月19日、下北ドーン。漫才ライブ。にぼしいわし目当て。面白いライブを沢山作っているライブマンという大変個人的に信頼している会社?団体?主催者?のライブ。この日も大変にメンバーが魅力的で面白いライブだった。ド桜の村田さんは黒澤映画の三船敏郎みたいなスター性があるので一生目を向けてしまう。

4 そのほか


『虎に翼』は相変わらず面白い。もしかしたら僕がフェミニズムの文脈の物語で泣けるのは妻が美人だから、という理由だからかもしれない、と気づき戦慄する。『アンチヒーロー』も観終わる。まずます面白いドラマであったが、特別という感じでもなかった。シラスの為に観た『古畑任三郎~しゃべりすぎた男』は最高。関西弁の色気。三谷幸喜のギャグ力の充実。西村雅彦の最高の演技。『映像の世紀 バタフライエフェクト』は安保闘争のやつ『アナザーストーリーズ』のコザ暴動の話が良かった。畠山理仁さんの都知事選候補者討論会の司会、余人をもって代えがたい鬼神のごとき働きであったと思う。政見放送は見れば見るほど元気がなくなる。

映画本、本が8冊、イベント2回。
総じて映画館で観た映画が素晴らしかった。本は『羆嵐』が最高。
センチネルという漫才師は追いかけていこうと思う。『職業としての政治』はきっちり理解したい。おススメの入門書があったら教えて欲しいが、あの薄さである。あの本自体が入門書なのではないか。知性の拙劣さを恥じる。

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