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2024.8月1日~7日 一週間日記

●8月1日 どうでしょう講談に向けての稽古
 失敗続きの人生だけれどいくつか成功した、と言い切れることがあって。その一つが7月30日撮影旅行から帰ってきたその日に酔っぱらいながらもきっちり8月3日用の台本を書きあげていたことが挙げられるだろう。これがだいぶんと効いて、この日も稽古に使うことができたのだった。
 作業机の上に台本を置き、声に出して読み上げながら一文一文を検討していく稽古を進める。
途中、出かけて昼飯を食べる。好印象の飲食店がひしめく武蔵新城。
行こうと思った中華屋があったので、そこにしようか。と思ったが店の前まで来ると満席。何とはなしに中華の口が残置さるる。
近くのチェーンのラーメン店に入る。
が、これが失策。まったくもって熟さない店であり、己の選択を深く後悔する。
向いにある変なカレー屋に行ってみればよかったのだ。変なカレー屋。
といっても古くからある洋食屋風のカレー店だ。その古さが敷居の高さになっている。
店の前の写真つきメニューを見るとカレーの上のトッピングに凝りがあるようなタイプの店。
豆ぐちゃぐちゃスパイス色付きご飯ちょびっとしかないやんけどないなっとんど意識高い下北沢或いは阿佐ヶ谷カレー、って感じではない。
うちはカレーにハンバーグとチーズが乗っているんですよ、いいでしょう?みたいな感じの。
今になって考えると入ればよかったと切に思う。
己の中華口、そして中華口への未練を恥じるほかない。次はあのカレー屋だ。まってろ。

●8月2日 この日も稽古
 一人で60から90分の時間を埋めるというのは難儀なことである。稽古をしつつ、まくらも考えつつ、時間を過ごす。
が、ついつい『おかしな奴』という映画を観てしまう。
渥美清主演のコメディ映画。爆笑王と謳われた落語家・三笑亭歌笑を渥美が演じている。歌笑は大変に顔が悪い、ということで売り出した人だ。
実際の歌笑は頬骨がはっていてる愉快な風貌に斜視が加わった面相で、それをお客に指さして笑われるところから始まって、詠嘆調である種気障くさい「純情詩集」なる文芸の味がする漫談で一世を風靡した。
そういう人が戦中戦後と活躍していく。
渥美清の演技がとにかくものすごく、新聞記者にすごむ場面なんてのは僕が観た渥美清の中ではベスト演技かも。
翌日の本番にはずみがついた。よきことである。

●8月3日 目黒での水曜どうでしょう講談
 
 昼からの公演だったので、少し早めに目黒に到着する。朝ごはんを食べていなかったので目黒駅最寄りのはなまるうどんに入る。
なんとこのはなまるうどんがわかめが食べ放題。
「そうと知っていたら、冷ぶっかけなんて頼んでいなかった」
とわかめうどん愛好者の玉山。
それでも別皿にわかめをよそい、相当の量を食べたわけだが。チェーンといえど、各店舗ごとにこういうオプションがついていたりするのだから奥が深い。

 会場入りして準備を整えて本番となる。この日の演目は怪談スペシャル、と銘打って新作が二本で『水曜どうでしょう講談~怪奇現象~』と『水曜どうでしょう講談~洞窟探検と変な夢~』の二席。
一本目。怪奇現象はちょっと看過できないミスが一か所。悔しい。
二本目。『洞窟探検と変な夢』はなかなか良い出来だったと覆う、照明を使った演出ができたのもよかった。
 終演後、誘っていただいてお客さんの打ち上げに合流。20人くらいで集まっている。すごいな!
勧められるままに飲んでいると大変に酔っぱらって記憶がほとんどない。
帰宅途中にはもう頭痛が始まっていて、ねぐらに戻るときにヘパリーゼなどを摂取し二日酔いに備える。

●8月4日 シラスお稽古配信
 反二日酔い活動が生んだ非二日酔いの朝。
シラス視聴者のY君を迎えてのシラスの稽古配信。
Y君に関してはもう視聴者の枠を超え、前日の講談会にも手伝いに来てくれて、なぜか飲み会にも参加をし、その筋肉を飲み会参加者に触られまくる、という様子になってきている。
こっちは誰からも指一本ふられれやしねえ。講談はウケてるというのに。
まあいいんだけど。

くそっ、筋肉めッ。


 ともかくY君、玉木青が配信スタジオ兼我がねぐらにやってくるのでねぐらをスタジオモードにして出迎える。
稽古はまあ悪くない感じだったと思う。なんだか僕の調子は結構悪かったんだけどなんとかなった、という印象。

終わってから横山清正もやってきて、しばらく玉木青と機材の実験などを行い、最終的には横山玉木Ý君の3人で飯を食いに行くのを見送る。
僕も誘ってもらったのだが、まったく腹が減っていない。
なので勇気をもって
「俺は腹が減っていないから行かない」
と言ってみたのだった。
これは成長であろう。腹が減っていないときにはものは食べたくない。そしてそのわがままを言えるということの成長よ。
結局しばらくしてからオクラをゆでで食べて眠る。

●8月5日 映画『うんこと死体の復権』、お笑いライブ『ネタコメVol.3』
 
 ポレポレ東中野へ映画を観に行く。『うんこと死体の復権』というドキュメンタリー映画。大好きな選挙映画を何本も作っているネツゲンという会社の映画なので観に行く。
これがうんこと死体と、それにたかる虫たちの話なんだけれど大変に面白く愉快であった。
映像の「においはしない」という特性が生かされ切った作品だった。
映像は見えるけれど、においはしない。映像作品とはそういうメディアであったという不思議な気づき。
変な人がたくさん出てきて面白いわけだが、途中に出てくる筑波大の先生が良かった。野糞の専門家が、野糞をしまくっている自分の山でうんこの分解がすごく早くなっている。菌が活性化してきている。といいだして、連れてこられたのがその筑波大学の先生。
先生としては「なんでこんなところに私がこなければならないんだ」と思っていても仕方がないところだし、若干そういう感じも見うけられるのだけれど、土をルーペで見た瞬間にテンションが急変して…から始まる一連のシーンはちょっと笑える。が、理系学者の純真、発見への興奮には静かな感動があった。多幸感ちうやつだと思う。
 
 映画が終わって作業をする。師匠から言われたチラシ作りなど。
門外漢なのでわからぬし、誤字王脱字王誤情報王の三冠王の僕としては決して向いている仕事ではないのだけれど、やれることはやる。
それからさっき観た『うんこと死体の復権』の感想講談を書く。いいのが書ける。
あとはnoteにアップするエッセイも書く。これは大変調子が悪く、苦闘となる。
 
 20時から四谷でお笑いライブ『ネタコメ』のVol .3を観る。にぼしいわし、どくさいスイッチ企画、さすらいラビー、ぱーてぃーちゃん、サスペンダーズの5組。
それぞれが漫才やコントを披露して。しずるの村上さんが登場してコメントを加え、アップデートしていくような内容。
そしておそらく賞レース向けのものをもってきているので、ガチ感が強い。
ここでアップデートの案が出されて、いつかテレビで見るときにそのアップデートが実際なされていた時にこのイベントの自分の中での価値はぐん、とまた上がるのだろうと思う。面白いライブだった。

 終わってから新宿へ行ってゴールデン街で酒を飲む。「へえお笑い好きなんですかあ」という話が客、バーテン氏、僕の間で始まって最初はスタミナパンなどで様子を見ていたのだが、ユビッジャ・ポポポーの話に行ってから一同安心。にぼしいわし、あくびぼうや、ハクション中西、風穴あけるズが東京に来て嬉しい話。最後にはトルクレンチガールズの力学氏が養成所に入ったらしい、といううわさ話に驚く、などしていたのだった。
久しぶりのゴールデン街だったが、なかなかやはりよいものである。

●8月6日 休み
 前日に引き続き休む。まったくの休みであった。
ちょねちょねと台本の手直しなどを行ったものの、本当に微々たるものである。
前日の酒が楽しかったのでふらふらと新宿に出てきてしまう。

 某講談師に勧められた某店で晩飯を食う。新宿にある酒も饗する店としては相当に値段が安い。+50点。
定食のおかずのみ、というような酒肴の注文のしかたができる大変良い店。+30点。
また揚げ物が適度にジャンクでなかなかに美味であり、特にコロッケなんかは粉っぽいいもがぎゅうぎゅうに衣の中に詰まっているタイプでソースの浸潤がスムーズにいかない。芋部を食らっては新しくソースをたらす、そしてまた芋部を食うというコロッケ。決して洗練はされていないがしみじみとしたおいしさがあり、大変に感動をする。+80点。
ここまで相当の高得点。
泡盛ロックで杯を重ねながら上機嫌に飲む。その時である。
ふ、とカウンター上部、キッチンとの仕切りの部分、小皿なんかが積み重なっている
あの場所、に目をやると、黒い魂の虫、がゆっくりと歩いているではないか。
飲食店では忌み嫌われるその虫。見た瞬間にぞっとして椅子をがた、と言わせてしまう。-10000点。
すると僕の様子の変化に気が付いたかキッチンの内側で作業をしていた店員が僕の動揺を鋭敏に感じとり、僕の動揺の根源である黒い魂の虫の存在に気付いたかと思うと一瞬であった。
手に持った布巾をバッと黒い魂の虫に投げつける。
投網の要領で黒い魂の虫をとらえたかと思うとキッチン内側に投網化布巾を引き取って、あとは何事もなかったように仕事を始めたのである。
その手さばきの鮮やかさは並大抵のものではなく、ほれぼれする種類のものであった。+10000点。
さらに言えば。あそこで動揺を示してしまうわけにはいかないし、客である僕に「すいませんね」と言ってしまうと、ある程度の割引も考えなければならない。他の客の動揺もさそう。
こちらもなかったことにするからお前もなかったことにしろ、という言外の脅迫。
布巾の熟練からも相当の武術の手練れに違いない。こちらから声を上げようものならば次はこちらに鎖鎌の分銅などが飛んでくるやもしれぬ。
黙るほかなし。
まあ薄利多売を旨としていることに疑いのないこの廉価な店を守るためにはやむをえない政治的技術である。とも思う。+2000点。

しかしまて、布巾投網に驚いた黒い魂の虫も彼なりに手練れで、布巾から逃れてこちらへ飛んできたことを考えると恐ろしい。そんなことになったら俺は大変なトラウマを負う。その危険への恐怖。-5000点。
てか、食事をする店に黒い魂の虫はダメだろ、そしてそんなものの処理に見事な手さばきを見せるほどの熟練をするというのは一体どういう店なんだ。-20000点。
今まで食べてきたものだっておいしかったが、しかし、うーん。そういう衛生観念の店となると…。-30000点。
合計-67840点。
大変に厳しい夕餉となった。黒い魂の虫め。おれはお前が憎いし、お前を嫌悪せざるをえないおれの感性、差別心が憎い。
しかし真実それはおれの中にあってしまうのだ。
 
 仕切り直しにゴールデン街に行って酒を飲む。この日は選挙の話とお笑いの話をする。初対面でそういう話ができるのはありがたい。
何回会ったってそういう話なんてできないんだ、と思ってきたのだが、初対面でもできる人とはできる。
東京における大木こだまひびき師匠の需要がオリエンタリズムであった、という話ができて僕は満足。
結句終電を逃しに逃し、朝までサウナでごまかして帰宅をする。

●8月7日 シラス配信
 朝からシラスの配信をする。『うんこと死体の復権』の感想講談。前日サウナでは眠れなかったのでなんだかふわふわとした頭で講談を。なるほど、眠っていなくても割と講談はできるもんだ。と思うくらいの出来ではあった。終わった後に眠る。3時間ほど眠って古典講談を稽古する。
夜はネットフリックス『シャイロックの子供たち』を一気見する。出世レースから完全に零れ落ちた中年銀行員が、支店内を疑心暗鬼の渦に叩きこんだ「100万円紛失事件」の犯人を捜すために奔走する。という話。
セットとか照明とかがあんまり好きじゃなかったけど、主演の井ノ原快彦の顔の何を考えているかわからない、酷薄にも見える感じ。を最大限生かしてうまく作られていたように思う。
この日はなかなか眠ることができず、結句4時まで起きていたっけ。

静かに昼夜逆転の足音が近づいてきている。

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