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551があるときーも、ないときーも

「ないっ!  ない、なーい。どこにもない。」

朝から、小6の長男の探しものの声が騒がしく響き渡る。
どうやら靴袋が行方不明になっているようだ。

我が家では、度々ものが行方不明になる。
やれ、ジーパンがないだの、靴下が1足ないだの、消しゴムや櫛もしょっちゅうどこかを彷徨っている…。

いつも口うるさく
「使ったらなおす。」
「物に住所を決めたら絶対に永遠になくさへんから。」
もうかれこれ、500万回は軽く言ってる。

それでも誰かが何かを探す光景が今日も繰り広げられている。

朝は皆が忙しい。登校の時間が差し迫る中、めぼしい箇所を一緒に探してみても見つからない。
「昨日のうちに用意してへんからや。今ごろ探してもあかんわ。違う袋なんでもいいからもってき!」

こちとらも仕事の前に全家事を終えなくてはいけない。時間と猛烈に戦っている時にもう袋なんか知らんわ!の心境。

そもそも、今日なぜ靴袋がいるのかというと、中学校の見学会なるものがあるからなのだ。

その中学に通うことになる界隈に住む現在6年生たちが訪問する日なのだ。
校舎に入る時に靴をいれるのに持参しなくてはいけないのが探している靴袋。

慌てるわたしと息子を横目に、その中学に通っている2年生の長女から、
「紙袋でいいやん」の一声。

わかったと息子が紙袋コーナーからノールックで光の速さで取り出してきたのが551の紙袋。

思わず娘が
「もっとマシな袋なんぼもあんのに、なんで551やねん!」
「大阪人丸出しの6年生がらうちの弟ってばれたら恥ずいやん。」

袋を交換するわすがな時間も許されてないほどもう余裕のない息子は
「話しかけへんから」
と言い残し、551の袋を小脇に抱え風のように玄関を通り抜けて走り去って行った。

そして、今日の夕食後の会話。
「中学の見学どうやった?」
「お姉ちゃんに会ったか?」

551ボーイが弟とバレるわけには行かない娘は音楽室に身を隠しどうにかやり過ごすこしたそうだ。

が、その隠れてる姿をしっかり見届けていた弟。

「音楽室にいたやろ!見たで!」

バレてるやん。娘はまったく気が付いていなかった。

ほんであんた、551で浮いてなかった?
他の小学校からも何校か見学がバッティングしているので、姉だけでなく他校からの子どもの視線も母としては少し気になる所。

それが、先生がその袋はあかんからって、違う袋渡された…。

551やっぱりあかんのかーい。
と思いながらも、
なんとか、娘の面目も、息子のステータスも先生からのアシストで保つことができたようだ。

そんな母と娘の心配をよそに、息子は今日違う学校の子ともう友達なったで!
なんてコミュ力爆発の発言をするもんだからびっくり。
学校単位の見学会のどのタイミングで友達なんねんさ。

なんか目があって、手を振ってきたから、手を振り返した。
そした近づいてきて、名前は?と聞かれたから答えたら、今日遊ぼーや!というナンパ師もびっくりの展開になり、その少年と公園でほんとに遊んだのだ。

友達ってそんなにすぐ出来るもんやったかな?友達の作り方なんて今まで意識した事がなかったのでちょっと考え込む。

友達になろや!なんて言わずに気づいたらいつも傍にいたのが友達。

目と目があって手を振りって友達なんてパターンもあるのが令和の子どもなのか。それとも我が子だけのスキルなのか…。

今は昔より出会いも多様になり、その間口は格段に広がっている。

子どもの世界に置いては、まだそこまでかもしれないけど、この先の子どもの取り巻く世界を想像すると幸せであってほしいといつも思いが込み上げる。
親の元から、少しずつ遠くに歩き出して友達と沢山の時間や感情を共有して、人生を豊かにしてほしい願う。

なにはともあれ、
息子よ。
友達ができてよかったね。

娘よ。
551の弟がバレなくてよかったね。

母は君たちが楽しい子ども時代を謳歌すること願っているよ。

551がある時も、ない時も。


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