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【3分解説】景気サイクルのつかみ方③(日本)

・前回の米国に引き続き、日本の景気サイクルのつかみ方についてご説明します。

考え方
・前回、米国は個人消費で自律的に景気回復する国とご説明しましたが、日本は個人消費よりも輸出が景気回復の牽引役となります。

・ですので、景気サイクルを把握するうえでは、輸出が増えているかどうか、あるいは輸出が大企業をはじめとする生産活動につながっているかどうか、と言う点の確認が重要になります。

統計
・日本の統計で重要な統計は、①日銀短観、②輸出数量、③鉱工業生産指数、④日本景気ウォッチャー調査になります。
日銀短観
・速報性が高く、景気との連動性が高いことから、日本の統計の中でマーケットが最も重視する統計です。
・日本銀行が四半期毎(3、6、9、12月)に、日本中の企業に対してアンケート調査(業況など)を実施し、指数化された数値が3、6、9月は翌月第一営業日、12月は同月下旬に公表されます。
・公表数値の中で重要なものは、大企業製造業・非製造業の業況判断DIです。それぞれ足元の状況を示す最近DIと、3か月後の状況を示す先行きDIが公表されます。
・見方としては、最近DIがゼロを上回るかどうかが景気拡大・後退の境目となっているほか、トレンドとして上方・下降のどちらに向いているか把握することも重要です。
・また、前回公表の先行きDIと比較して、最近DIがどうか、という点もポイントです。前回の先行きDIを最近DIを上回っていれば、景気は回復局面入りに転換していることを示すことが多いですし、逆に先行きDIが最近DIを下回っていれば、景気は後退局面入りしていることが多いです。

※日本銀行

輸出数量

・財務省が公表する貿易統計の1項目で、市場の注目は高くないですが、輸出が経済の牽引役である日本にとっては重要な経済指標です。
・例えば、輸出金額ベースの場合、円安が進むと額面は増えて見えますが、販売数量が増えるわけではないので景気にプラスとは言えません。
・例えば、ドル円が1ドル100円のとき、1個1ドルのチーズケーキを輸出すると100円の売上になりますが、ドル円が1ドル150円に円安に進むと、1個1ドルのチーズケーキの売上は150円に増えます。
・金額ベースでは輸出額は100円から150円に拡大しますが、輸出するチーズケーキは1個だけで代わりはありません。
・ですので、数量ベースで輸出を把握することが重要になります。
・翌月下旬頃には公表され、時系列データは以下で確認できます。

※財務省

https://www.customs.go.jp/toukei

鉱工業生産指数
・鉱工業生産指数が重要な統計であることは、以下でご説明しました。
○【3分解説】景気サイクルのつかみ方①(GDP、鉱工業生産指数、物価指数)
・製造業の経済に占めるウェイトが大きい日本においては特に重要ですので、日本の同指数について追加でご説明いたします。
・日本の鉱工業生産指数は翌月末に公表されますが、当月の見込み指数、翌月の予測指数が公表されます。
・例えば、1月分は2月末に公表され、2月分の見込み指数と、3月分の予測指数が公表されます。
・これらで算出されるのが、実現率と予測修正率です。
・実現率は、実績値を前月の予測指数で割ったものです。上述の例で言えば、2月末に公表された1月の実績値を1月末に公表された1月分の見込み指数で割って伸び率にしたものです。
・予測修正率は、見込み指数を前月の予測指数でわったものです。上述の例で言えば、2月末に公表された2月の見込み指数を、1月末に公表された2月の予測指数で割って伸び率にしたものです。
・この実現率と予測修正率がプラスであると景気は改善、マイナスであると景気は悪化しているとみなすことができます。

※経済産業省

日本景気ウォッチャー調査

・上記の指標で確認した輸出や企業の生産活動が、個人消費にまで波及しているか確認するための指標です。
・内閣府が2000年から実施している比較的新しい統計ですが、景気の転換期を示す特徴があることからマーケットからは重視されています。
・別名で「街角景気」とも呼ばれており、全国から家計・企業・雇用の動向を敏感に把握できる職種の2050人を対象にアンケート調査が実施され、現状判断DIと3ヶ月先の景気を示す先行き判断DIとして指数化されます。
・見方としては、50を上回れば景気は良くなっていると判断されます。
・対象月分が翌月上旬には公表されます。

※内閣府

長くなりましたので、欧州の景気サイクルのつかみ方については以下でご説明いたします。


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