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【3分解説】景気サイクルのつかみ方④(欧州・中国)

・前回の日本に引き続き、欧州・中国の景気サイクルのつかみ方についてご説明します。


欧州

考え方
・欧州の経済規模は、ドイツ・フランスで半分を占めていますし、米国のように海外経済に内需で影響を与える国はありませんので、ドイツ・フランス両国の景気動向を確認すれば十分と言えます。
・特に、経済規模が最大のドイツの景気サイクルの把握が重要です。ドイツ・フランスともに日本同様、輸出が経済のドライバーです(ドイツは工業製品中心、フランスは農業のウェイトも大きい)。
※欧州市場の特徴として社会民主主義的な国が多く、労働市場は硬直的(クビを切りにくい)なため、企業は雇用に慎重になるスタンスになりがちで、失業率が高くなり、特にスキルのない若者中心に高くなる傾向にあります(ドイツは例外的に失業率が低い。2000年代初頭にシュレーダー政権により企業の解雇規制の緩和、派遣や低賃金労働を認める労働市場改革が成功し企業の競争力が向上したことで、逆に雇用も安定)。
・消費の主体である若年層の所得環境が不安定なので、米国のように内需が経済のドライバーにはなりづらいといえます。
・また、各国政府による経済への関与が大きい特徴があり、その分財政負担も大きくなりがちなので、2009年のギリシャ危機、2013年のキプロス危機のように、経済基盤の弱い国を震源とする経済危機が起こる可能性にも注意が必要です。(というのも景気浮揚のためには金融政策と財政政策がありますが、金融政策は欧州中央銀行に一任されており、各国政府には財政政策しか手立てがないからです)

・ですので、日本同様、景気サイクルを把握するうえでは、輸出が増えているかどうか、あるいは輸出が生産活動につながっているかどうか、と言う点の確認が重要になります。

Ifo景況指数
・ドイツの統計で重要な統計は、ドイツ企業の景況感を示すIfo 景況指数になります。
・ドイツのシンクタンクであるIfo経済研究所が、約9000社のドイツ企業に対して行うアンケート調査で、景気の現況と半年先の先行きを指数化したものです。
・この指数は景気サイクルと一致する鉱工業生産指数に先行する特徴があり、製造業が経済のドライバーであるドイツの景気サイクルを判断するうえで有効な指標といえます。
・対象月分が毎月下旬に公表されます。
※Ifo経済研究所

中国

考え方
・世界経済2位の経済規模まで成長した中国の景気サイクルが世界経済に与える影響は大きいです。
・とはいっても、経済のドライバーは米国のように内需ではなく対外輸出であり、世界経済の動向、すなわち米国の景気サイクルに大きく左右されます。

・特徴としては、様々な製品、そして製品を作るために必要な原料・部材(中間財)の生産拠点となっていますので、世界経済の景気サイクルに先行して企業の生産活動が増える傾向にあります。
・ですので、中国の景気サイクルを掴むためには、生産活動を把握できる経済統計が重要になります。

統計

財新製造業PMI
・中国の中小製造業400社の購買担当者に景況感をアンケート調査し、指数化したものです。
・中国メディアである財新伝媒社がスポンサーとなり、世界大手の金融情報会社であるIHSマークイットが実施しています。
・中国の経済統計の中でも、信頼度が高いものとして市場からの注目も高い指標です。
・景気サイクルと一致する傾向にあり、見方としては、前月比の増減のほか、景気拡大と減速の境目である50とどれだけ乖離しているか、を確認する必要があります。
・各月分が翌月第一営業日に公表されるため、速報性が高く、世界景気の動向をいち早く掴むことができます。

・続いて、今までご説明した景気サイクルの見方をふまえて、具体的にサイクルに投資する方法をご説明します。


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