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クリエイターじゃないことがコンプレックスだった。

自己紹介で自分のことを何と表現するか。

自己紹介を求められたとき、あなたは何と自分をラベリングしますか?
中学生や高校生、大学生など、特定の学校に所属している場合は、〇〇学校何年生の△△です。会社に所属している場合は〇〇社の△△です。でしょうか?

今現在、私は大学院生なので、基本的には大学名で自己紹介をします。
一方で、就職活動や大学以外の文脈でお会いする方々に対して、私は以下のように自称します。
「シンガーとして活動しています。」

Twitterのbio欄にも歌唱研究する大学院生シンガーと記載しています。
つまり、私の現在のアイデンティティは「大学院生であること」と「シンガーであること」です。

どう覚えてもらうか?は実はすごく大事だったりする。

自己紹介として、自分をなんと表現するか?はすごく大事です。
それは、「人にどのように覚えてもらいたいか?」にも繋がっていますし、「自分がどう見られたいか?自分がどうありたいか?」にも繋がっていると思います。
私の場合は、それがYouTuberではなく、歌い手でもなく、リケジョでもなく、シンガーだった。そういうことです。

どのように覚えてもらうか?は、人にどのように接してもらうか?にも密接に関わっていると思います。
例えば、本好きです!と公言していれば、本の話題を振ってもらいやすかったり、他の人からおすすめの本を勧めてもらったり、時にはお仕事に繋がるなんてこともあるかもしれません。

人間が、相手の名前と紐付けて覚えられる情報はせいぜい1つか2つ(実体験)。
その意味でも、「何の人であるか?」を自らタグ付けしていく行為は非常に有効であると言えます。

クリエイターへのコンプレックス

今でこそ、"シンガー"を自称している私ですが、昔、"シンガーソングライター"を名乗っていた時期があります。
もちろん、嘘をついていたわけではありません。
YouTubeを見ていただくとわかるのですが、何曲か作詞作曲を自分自身で行なった楽曲があります。

ただし、私は、「作りたいから作り始めた」人種ではありません。
私が作詞作曲を始めたのは高校1年生の時。
当時通っていたボーカルスクールの先生に、「歌手としての市場価値を上げるなら曲も作れた方がいいよ」と言われたからです。言われた通り、詩を書き、曲を付け、初めて作詞作曲をした「ココア」という楽曲が完成しました。

そこから、同じ先生に、「とりあえず100曲作りなさい」と言われ、チマチマと作詞作曲を続けていました。

しかし、どうしても「曲を作る」という行為が自分の中でしっくり来ませんでした。曲を作るなら社会に問いたいことがなくてはいけない、聴き手に伝えたいことがなくてはいけないと思っていたのですが、私にはそんなにたくさん、「伝えたいこと」がなかったからです。
受験生になり、大学生になるうちに段々と曲作りからは距離を置き、私自身が「曲を作らない私」に慣れていきました。

ただ、「曲を作らない私」「何も書けない私」「伝えたいことがない私」への嫌悪感は消えませんでした。「作る人」が羨ましかったし、「作ろうとしない自分」がすごく嫌いでした。

そうしたコンプレックスなどが混ざった結果、私はかなりの長い時間、曲を書いていないにもかかわらず「シンガーソングライター」とラベルを貼り続けていたし、「歌うことしか出来ない私」を恥ずかしく思っていました。

シンガーだって"作る人"だと思えた

ここ1年くらいで、ありがたいことにたくさんの歌のお仕事を経験させていただきました。Arcaea収録「Last」などの目立った作品から、仮歌などのお仕事まで、全力で歌わせていただいたつもりです。
ありがたいことにたくさんの人から、「この歌のこの部分がいい」であったり、「ここが好き」といったコメントをたくさんいただきました。

たくさんの楽曲を歌わせていただく中で、「この表現は私が歌ったことで生まれた」「私の声で、より楽曲がイキイキしている気がする」と感じる場面が何度もありました(その逆も同じくらい感じているのですが)。

もちろん、0→1を作ることができるクリエイターさんは本当に素晴らしいし、その尊さに敵うものがあるとは思っていません。
しかし、1→10、1→100に貢献する私たちアーティスト(ないしシンガー)も広義の"作る人"なんじゃないだろうか。そう思えたときに、私は自分のことを"シンガーソングライターです"とラベリングすることは止めて、胸を張って「シンガーです。」と言えるようになりました。

これからも歌い続けていきたい

この1年、たくさんの作品に携わらせていただく中で、音楽や歌にはものすごくパワーがあるんだなと改めて感じました。
正直、自分の歌はまだまだで、「もっとこう出来たらいいのに」という部分がたくさんあります。全然満足してません。もっともっとたくさん歌って、たくさん聴いて、勉強して、表現の幅を広げていきたいです。

今後も、誰かに求めていただける限り、そして自分が歌を求め続ける限り、歌い続けていこうと思います。

シンガー 木下珠子

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