見出し画像

【税金Q&A】翌期1年分の家賃の前払

<質問>当期末に翌期分の家賃を年払いすれば、その全額が損金算入されると聞きましたが?


<答え>

 法人税法の「短期前払費用の損金算入」の特例を受けることにより、翌期1年分の費用を先取りして当期の損金に計上することが可能です。


◆ 節税になるのか?

 短期前払費用の損金算入は、翌期の費用を先取り計上することによる期末の駆け込み的な節税策といえます。想定以上に業績が良好であった場合に、当期の課税所得を圧縮する効果はあります。
 ただし、この特例は前払いすることで資金が流出しますし、原則として、翌期以後も継続して前払をしなければならないので資金繰りに与える影響を考慮する必要があります。

 内容を見ておきましょう!


◆ 制度のあらまし

 前払費用とは、一定の契約に基づき継続して役務の提供を受けるために支出した費用のうち期末までに提供を受けていない役務に対応するものです。 期間損益を正しく計算するためには、翌期の費用にかかる支払いは、すべて前払費用として資産に計上すべきです。

 しかし、企業会計において、重要性の乏しい前払費用については資産計上を要求していません。
 法人税においても、発生主義による費用認識を原則としつつ、契約に基づき支払日から1年以内に役務の提供を受ける「短期前払費用」については、継続適用を条件として、その支払日の属する事業年度において損金算入することを認めています。

 これにより、当期末に翌期1年分の家賃を前払いした場合、その全額が、当期の損金に算入されます。

 また、法人税において短期前払費用につき支出時損金算入の適用を受けている場合は、消費税においても支出時の課税仕入として仕入税額控除の計算対象となります。


◆ 対象となる費用、ならない費用

 短期前払費用の損金算入の適用を受けられる費用は、ご質問の地代家賃のほかに、保険料、工業所有権の使用料、借入金の利子などです。
 前払給料、前払旅費、前払顧問料、前払いのコマーシャル料などは単なる前払金なので、短期前払費用の損金算入の適用対象とはなりません。

 地代や保険料については、原則として、賃貸借契約書における支払期日が年1回払いであり、翌期末以後も1年間分を前払いする必要があります。
「前期は儲かったので1年分の家賃を前払いしたが、当期は赤字なので前払はやめておこう」といった所得調整はだめですよ、というわけです。


 短期前払費用の損金算入は、支払日から1年以内に役務提供を受けるものにつき継続して損金算入できるという特例です。
 そのため、3年分の保険料を前払いし、そのうち1年分を損金の額に算入することは認められません。
 この他、役務提供の終了する日が1年を超えているケースでも損金算入の特例は適用されません。たとえば3月決算法人が、当期末に翌期5月分から翌々期4月分の家賃を前払いする場合には、役務提供の終了日が支払日から1年を超えているため特例は適用されません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?